第31話 止まらない -岩崎渚 目線-
ひどいっ!なんだよアレっ!!!
みんなの前で修斗にキスするなんてっ!!
岩崎渚はその場にいられず朝礼台から駆け下りた。
視界は歪んでよく見えず、朝礼台をすぐに降りたところでなにかに躓いて勢いよく転んだ。
もっと酷いのは
王様の命令で修斗と強制的に恋人になったこと!!
修斗はモテるから女の子が命令したらどうしようなんて思ってた。
まさかあんなに可愛い男が修斗のことなんて夢にも思ってなかった。
どうしよう…修斗 とられちゃう。
悲しくて、悔しくて、痛くて、俺は転んだまま起き上がれなかった。
「大丈夫ですか?」
校庭の方に人員を割いていて人影も少ない設営テントのスタッフで俺に気がついてくれたのは
助け起こして俺の服に付いた土を手で叩いてくれている。
姿は見えないが校庭では楽しそうにはしゃいでいる王様の声をマイクが拾って嫌でも耳に入る。
辛くて悔しくて涙をこらえるのに精一杯でお礼を言えないまま無言で逃げた。
思い起こせば緒方遥の態度はおかしかった。
************
「俺が『おめでとう。あなたが王様です』って言うから、頭を下げてね。王冠を乗せるから」
「………あー、はい…」
朝礼台の下で軽く新しい王様と打ち合わせしているんだけど…なんだろう。俺、なにか悪い事したかな?
なんか新しい王様の態度が変な気がする。
他の人には凄く愛想がいいのに俺に対して嫌っているという感じがしてならない。
きっと気のせいだよね。今日はじめて会ったんだし、嫌われてるなんてそんなことないよね。
王様になれなかった参加者の野次で、少し気分が悪いだけだよね。
でも、どうしてだろう………
なんか嫌な予感がする………。
その予感は的中した。
「辻修斗先輩、今日から卒業するまでボクの恋人になって下さい❤」
なんで??
どうしてそんなに堂々とみんなの前で恋人になれなんて命令できるの?
呆然と立ちすくむ俺の横から緒方遥は修斗の胸にひらりと飛び込んでいく。
修斗は待っていたかのように緒方遥を受け止めると背中に腕を回して抱きしめた。
王様の命令は絶対………
みんなが言うことを聞かなくちゃいけない。
俺と修斗は秘密の恋人だから、みんなは修斗がフリーだと思って今も告白する子が後をたたなかった。
きっと、あの子もそのうちの一人。
いつも修斗のそばにいる俺が嫌いだから あんな態度を…
鼻の奥がツンとしてきて目の前の景色がゆらゆらと歪んでくる。
いくら王様の命令でも修斗が俺以外のヤツを抱きしめるなんて嫌だ。
修斗、その子が怪我したら大変だから抱き止めただけだよね。
背中に手が回ったのは偶然だよね。
こらえていた涙が溢れる。
泣いちゃダメだ。
泣いちゃダメだ………でも涙が止まらない。
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