第29話 女の子

「ねえっ!嘘でしょっ!!」


「こんなのありえねぇ、絶対ズルしてるだろう!!」



 詰め寄る生徒でメダル受付がごった返す。


 その場で唯一安全なのは朝礼台の上、そこに取り残されたようにマイクを握りしめてナギは立ち竦んでいた。


 受付の生徒会役員が慌ててアナウンス用のマイクを取り、詰めかけた皆に説明する。



「メダルは生徒会が当りとして用意したもので間違いありません。絵柄もバーコードもちゃんと確認しました。」



 確認用に拡大プリントしたメダルの柄とバーコードを見せるが生徒たちは納得できないようでヤジや文句を大声で言っている。



「皆さん、王冠授与式をしたいので一人一枚メダルを持ってきて受付をして回収箱に入れて下さい。」


「あーあー、早くから並んで待たされたと思ったらもう終わりかよ。」


「マジでありえないんだけど」


「おらよっ!!これで良いんだろっ!!」



 みんなアナウンスに渋々従っているが、中には暴言を吐くものや、キレて回収箱にメダルを投げつける生徒もいる。


 この最悪な雰囲気にのまれ朝礼台の上でナギが怖がっている。


 俺が側に行って抱きしめて不安を拭い去ってやりたい。


 傍にいてやれない自分がもどかしかった。


 やる気のなくなった2年生からメダルをすべてを回収し終わると、ファンファーレの効果音がなり長めのマントを羽織った新しい王様がゆっくりと朝礼台に登場した。


 マントを引きずって現れた新しい王様は、ピンク色に煌めくふわふわの髪に、大きくクリっとしたいたずらっぽい瞳、そして小さな唇は口紅でも塗ってあるかのように艷やか、とっても可愛い女の子だった。


 真っ赤なマントが彼女を更に美しく見せ、校庭のあちこちからため息が聞こえる。


 ギスギスと嫌悪だった空気は彼女の登場で一変、和やかな雰囲気になった。



「おめでとう。あなたが王様です。」



 ナギは王冠を掲げ、新しい王様の頭上にそっと乗せた。



 王様?ナギ、間違ってる女王だろう?



 訂正させなくちゃとナギの側に駆け寄った。


 マントでよく見えてなかったのだが近くに行ったら新しい王様はズボンを履いていた。




 新しい王様は女の子のような男の子だった。


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