第15話 王様は誰だ?
去年までは王冠を見つけたら、体力自慢の男子生徒達の奪い合いで、体力のない生徒は諦めなくちゃいけないという不公平なシステム。
でも今回の宝くじみたいに誰が当たるか、チェックするその時まで分からないワクワク感が嬉しい。
当たらないとわかっていても夢があるよな。
もし俺が当たったら何をお願いしようかな?
そうしたら絶対……
「修斗の恋人になりたい」
なーんて言っちゃったりなんかして❤きゃー!!
恋人になれたらどんなに幸せだろう❤
一人照れながら、列の最後尾に並ぼうとした時、後ろから声をかけられた。
「ナギ!」
振り向かなくても解る。
この声は大好きな修斗の声!!
修斗は俺の所に駆け寄ってきてくれた。
今日は一度も会えなくて寂しかったとか、俺を探し出してくれて凄く嬉しかったとかいろいろな感情が湧き起こる。
「メダル拾えたか?」
「うん、これにするんだ。」
俺は自分の汚れたメダルを見せると修斗の顔色が変わった。
「あっ!! これ! 俺のとこう………」
「?」
「………いや、可愛いな。」
「だよな。修斗のは?」
見せてもらうと俺のメダルによく似ているが体の色が白ではなく黄色。
「あ、俺のメダルの色違いじゃん。俺達お揃いだな。」
「そうだな。それ大事に持っていけよ。」
「うん。」
修斗は静かに微笑んで俺の手を引いて列の最後尾に連れて行った。
ちょっと修斗、手を繋ぐなんてどうしちゃったんだよ。
わあああ、ドキドキするーーー!
俺は自分の心を悟られないように、修斗とお揃いのメダルをどうやって見つけたか話した。
そうしているうちに、列はどんどん短くなっていき、とうとう俺達の番になった。
生徒会長の「残念でしたぁー❤」を何回聞いただろう?
「2-1 辻 修斗です。」
修斗はそっけなく副会長にメダルを渡した。
副会長は修斗のメダルを見て顔を近づけて何やら話している。
「……で……のか?」
「はい………………ます。」
僅かに二人の会話が聞こえた。
メダルをスキャンするとハズレのブザーが流れた。
「残念だったね。」
生徒会長も今までみたいに大げさに言うのではなく本当に残念そうに言っていた。
修斗はぺこりと頭を下げて俺に場所を譲った。
「2-2 岩崎 渚です。お願いします。」
メダルを渡すと副会長はハッと俺と修斗を見た。
なんでそんなに驚いているのかな?
メダルをスキャンしてもらうと
『ピンポンピンポン❤』
さっきまでの不快なブザーとは異なり軽快なリズムが流れた。
騒がしかった校庭が静まり返り、全てのノイズが止まったようだった。
「アタ~リ~!!」
生徒会長の能天気な声でアタリが告げられた。
後ろに並んでいた誰かの「うわーっ!!!終わったー!」と落胆の声が漏れると校庭のあちこちから残念がる声、1年生と3年生の間から拍手が湧き起こる。
「アタリが出ました。残りの人はゴールに一人1枚メダルを持って来て下さい。回収します。」
副会長が俺の肩に手を置いてニッコリと笑って
「おめでとう。君が王様だ。」
…え…おれ??
俺が王様ぁ??
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