第12話 クラウンゲーム
一般客が帰ったあと、クラウンゲームの準備で生徒会役員が校庭内を慌ただしく走り回っている。
当然だが、生徒会役員でも準備をしているのは1年と3年生だけ、2年生はゲーム参加者となるため校庭のフェンスの外で待たされている。
「いつまで待たせるんだろう」
「おかしいな、去年こんなに待たされたっけ」
「いや、待たないですぐに入場していたはずだよ。」
「それにしても遅いよね。」
みんながざわざわ話している。
確かに去年見ていた時は、こんなに時間がかからず校庭の中に入れた。
去年のクラウンゲームはすぐに校庭に入って、朝礼台の前で王様自作の王冠の写真をみんなに見せて、探し出すという方法だったはず……どうしてこんなに時間がかかるんだろう?
生徒会役員達がフェンスの周りに等間隔で配置されると、凛とした美しい女性の声がスピーカーから流れてきた。
「それでは第143回クラウンゲームを始めます。2年生入場!」
待ってましたと言わんばかりに、呼びこまれた2年生は一気に校庭になだれ込んできた。
「危険です。走らないでください。」
何度も生徒会の女性が一生懸命呼びかけるが みんな聞かない。
走りたくなかったけど、走らないと後ろの人に突き飛ばされて転ぶ危険性があるから仕方なく俺も一緒に走る。
間近で王冠の形を確認するために、みんな凄い勢いで朝礼台を目指して走っていく。
前回の王様である生徒会副会長が朝礼台の壇上に上がって待っていた。
生徒会会長の前には机があり、その上に白い布を被せた物が置かれている。
あれ?あの下に王冠の写真があるのかな??
なんかボコボコしているけど……
目線を左下におろすと、朝礼台の下の方では長机の上に音響装置、マイク、ノートパソコンが置かれている。
パソコンには沢山のコードが出ていて色々な機材に繋がっている。
前回とは明らかに違うことがみんなも解り、ざわつき、口々に憶測が飛び交っていた。
校庭のフェンスの外には誰が王様になるのか興味津々の1年と3年のギャラリーがいっぱいだ。
そして今年も王冠を見つけるべく、どこから持って来たのかスコップを持っている男子がちらほら見受けられる。
去年も持って来た人いたけど本当に毎年誰かしら持ってくる人がいるんだな。
俺は驚くのと同時に感心してしまった。
昔、隠し場所に困った王様が校庭に埋めたことがあって、それ以来校庭を掘る人が毎年出ている。
だが、ここ数年 土の中に埋める王様はいなかった。
去年の隠し場所は、とても意外な場所だったけど、果たして副会長は王冠を土の中に埋めるかな?
生徒会副会長がぐるりと取り囲む2年生を見渡してから口を開く。
「みんなが楽しみにしている クラウンゲームを始めようと思う。」
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!! 」
凄く高いテンションで男子生徒達が雄たけびを上げる。
「だが、毎年地中には埋めていないと言っているにも関わらず掘り起こす者が絶えない。」
スコップを持っている者は慌てて後ろに隠して、俺は持っていないぜと とぼけている。
「整地するための経費が嵩み、生徒会予算を圧迫している。その為、クラウンゲームの内容変更を余儀なくされました。」
みんながざわざわしはじめる。
副生徒会長が手を伸ばして、壇上の白い布をはいで中身を見せた。
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