第11話 薄情
佐藤は途中、彼女が来て別行動になり俺と鈴木で校内を散策した。
佐藤の彼女はめちゃくちゃ可愛かった。
そのことで困ったことに……と言うか面倒くさいことになった。
鈴木が悔しさのあまり、
出店に出ているものを片っ端から財布の中身が無くなるまで食べている。
見ているこっちはそれだけでお腹いっぱいだ。
そして当然のことだが、鈴木は気持ち悪くなってダウン……俺は妊婦のように腹が膨れた男を保健室で介抱する羽目になった。
鈴木を預けて出歩いてもいいけど一人ぼっちで、うろついても楽しくない。
顔の傍に洗面器を置き、青い顔をして謝る鈴木に「大丈夫?」と声をかけながら、俺の心は窓の外に向いていた。
修斗は今頃バスケ部でフリースローの模範演技をしてるいのかな。
今日は一度も会えなかったな。
クラウンゲームで修斗が王様になったら何を願うのかな?
そんなことばかり考えていた。
陽も落ちかけてきて、一般客に帰るよう促す放送が流れるころ、保険医の先生に促されて、俺はクラスの片づけに行くことにした。
「鈴木の分は俺が片づけて置くよ。だからゆっくり休んでいなよ。皆には体調不良で寝ているって言っておくから」
「う~ん……ゴメン。みんなに謝っ……うぷっ!」
これ以上、長く会話すると保健室が大変なことになりそうだ。
俺は急いで教室に向かった。
早く片づけないと後夜祭に……
クラウンゲームに間に合わなくなっちゃうからな。
教室に入ると、ワッフル屋だった面影はすっかりなくなって、いつもの教室に戻っていた。
俺を見つけたクラスメイトの女子は咎めるように声をかけられた。
「あ、岩崎君やっと来た。」
「ゴメン、もうほとんど片付いちゃっているね。」
彼女はきょろきょろと俺の後ろを見回して探している。
「鈴木君は? 」
そうか集まってなかったのは俺達二人だけだったんだ。
「鈴木は体調不良で俺が保健室に連れて行ったよ。」
「うわ、ご苦労様。鈴木君、大丈夫なの? 」
みんなが心配しているので体調不良の原因を話したら、爆笑されたり呆れられたりした。
「でもこれでライバルが一人減ったわね。」
「あ、そうか、考えたらそうだね。」
「ラッキー♪」
こわー、みんな薄情だなぁ。
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