第2話

 優秀だが命令違反を繰り返したびたび謹慎処分にあっているSATの隊員、蹴上賢は麻薬の売人、小金井幸太郎の弟が仕切る麻薬工場の襲撃作戦で幸太郎の弟を射殺することには成功するがまたもや命令違反を犯す。

 蹴上は死んだことがあった。横浜中華街で起きたヤクザの抗争に巻き込まれ、流れ弾に当たって死んだのだ。

 蹴上は冥界で水系統の魔術を習得したが、1年に最低でも2人は殺さないと冥界に戻されるという宿命を背負っていた。

 一方、本牧にある幸太郎のアジトにSATは踏み込もうとするが幸太郎が雇った、元アーミーの三条三郎率いる傭兵団によって阻まれ、皆殺しにされてしまう。


 放逐されかけた蹴上は、元マルボウ、酒々井翔馬が設立した復讐組織に配属される。 

 復讐組織の訓練に参加し、蹴上はそこでも元上官である相手の指揮官を倒すなど活躍するが、練習途中に突然、三条率いる傭兵団が襲撃。演習用の装備で碌な応戦もできず、仲間が1人殺害されてしまう。

 幸太郎は弟を殺されたことへの復讐も兼ねて、三条らに蹴上を襲わせたのである。援軍の到着で辛くも生き延びた蹴上は仲間の敵を討つべく、敵のアジト近くの川を氾濫させる。三条のアジトは利根川のすぐ近くにあり、洪水によりクローズドサークル化した。

「クソッ!アジトから出られなくなった!」

 三条は狼狽した。

 蹴上は関宿城を基地化した。

「死んだ瀬戸の為にも絶対に勝たないとな?」

 酒々井が言った。彼は、『仁義なき戦い』で広能を演じた菅原文太に似ていた。

 瀬戸誠也は去年、子供が生まれたばかりだった。

 

 濁流が流れ込むアジトに戦闘員が続々入って来た。三条はあっという間に包囲された。

 捕虜となった三条は処刑される寸前、戦友百瀬健太の決死の反撃で難を逃れた。


 脱出後、2人は整形して群馬の大泉にある自動車工場で期間工として働き始める。深夜勤務は体にこたえた。特に2時頃は死にそうに眠い。エンジン部のクーラント液という白っぽい液をワイパーで払うのだが、変な匂いがする。

 ある日、百瀬が三条を助けるために撃退したチンピラから報復を受け、廃人同然にされてしまう。

 チンピラは夜、イオンモールの近くを歩いてるとバールで襲撃してきた。


 チンピラはもとより、警察の無力さにも怒りを爆発させた三条は自身の手で復讐する事を決意した。


 大泉署の根岸泰文警部はイオンモールでの事件の捜査に執念を燃やし、ついに自動車工場『クレージー』に勤務してる相馬蒼汰の正体が三条三郎であることを突き止める。

「クレージーとはおかしな名前ですね?」

 村崎哲司巡査部長が言った。

 村崎は、『太陽にほえろ!』でボギー刑事を演じた世良公則に似てる。

「狂ったって意味もあるが、最高って意味もあるな?アソコの車はかなり乗り心地がいい」


 ライトアップされた街並みが金山の頂上から見える。キンザンと読んでいたが、正確にはカナヤマだ。

 頂上で対峙する三条と根岸警部。三条が投降しようとしたその時、2人に銃弾の雨が浴びせられる。

 

 これで冥界に戻らなくて済む。蹴上はホッとした表情になった。三条と『太陽にほえろ!』でジプシー刑事を演じた三田村邦彦に似た男を葬った。


 下板橋

 海老原麻友は自宅に侵入してきたフランケンシュタインの仮面を被った男にレイプされるが、男が去った後、彼女は何事も無かったかのようにキーボードを弾きはじめた。

 曲はショパンの『別れの曲』だ。

 レイプの一報を聞いた麻友の友人、栗野みのりから警察へ通報することを勧められたが、麻友は過去のトラウマから警察に不信感を抱いており、被害を相談する気になれない。


 麻友はレイプ犯が自分の知り合いだという確信を強めていった。東武東上線の下板橋駅で列車を待っていると何者かに突き飛ばされた。大事には至らなかったが、麻友は同じ印刷会社に勤務する渡辺智人を疑う。

 智人は反抗的で上司の麻友のことも呼び捨てになる。


 上池袋にある病院に検査入院することになった麻友だったが、夜、病室の外に不審な男がいることに気がつく。

 麻友は撃退スプレーを噴射したが、その男は元カレの岡田健太郎であった。麻友の身の安全を案じてやってきたのである。この騒動の後、麻友は自分に恋慕していた井村がホームから突き落としたことを知るが、その男はレイプ犯ではなかった。


 退院して3日目の夜、彼女の自宅にフランケンシュタインがふたたび侵入してきたが、麻友は揉み合いの末にマスクをはぎ取ることに成功した。レイプ犯は近所に住む黒木剛志だった。これでもなお麻友は警察に通報しようとはしない。


 麻友は白血病に侵され死の恐怖と戦っていた。黒木に襲われたときは複雑な思いだった。『いっそこのまま殺してくれ』とすら思った。少女が放射線で髪の毛が抜けてもがき苦しむ映画のシーンが何度も脳裏に浮かんだ。

 麻友は病気のことを黒木に話した。

「黒木君、ワタシを殺してくれない?生きてることがすごく怖いの」


 ADの成沢理は札幌駅にいた。小田原、そして熊谷のパワハラは凄まじいものだった。

『脱げって言ったら脱ぐのよ!』

 熊谷邦子はとんでもない男好きだった。

『俺の演技が評価されないのはオマエのせいだ!』

 小田原は松田優作に憧れて俳優になったが、脇役ばかりだった。

 

 職務内容は多岐にわたる。通常の番組では3人程度のアシスタントディレクターが置かれる。ディレクターから直接に詳細な指示を受けて動く場合もあるが、それ以外にディレクターの演出意図を読み取って自発的に行動しなければならないことも多い。そのような経験を積むことで、演出について学ぶ時期であると位置づけられている。


 大変ハードな職種であり、特に放送局勤務でないアシスタントディレクターの場合、休日は番組の打ち合わせ・収録の合間の日になるため不規則で、元々薄給の上長時間勤務にもかかわらず残業代が出ないことも珍しくない。労働環境の1つの事例をあげてみると、勤務時間は朝8時から夜中の1時までで、24時間勤務も週1、2回。徹夜で働いた後も家には帰れず、昼まで仮眠を取った後に仕事を再開、仮眠時間は4、5時間程度というものであったという。このような過酷な労働実態から、アシスタントディレクターの在職期間の平均は1年7カ月と極めて短い。


 さらには映像業界は多分に体育会的な体質を持つところでもあるため、時にはいじめやパワーハラスメントが発生することもある。またディレクターへの昇格するまでに通常数年はかかるというのが俗説で、その後は局員の場合はディレクターに留まるかプロデューサー→チーフプロデューサー→制作部長・局長などのルートで昇進、制作会社の場合はプロデューサーに昇格したり別の制作会社に移籍・独立開業するのが一般的。以上のことから、相当の『精神的タフさ』『体力』が資質として何より求められる。

 

 理は小田原たちに社会的に殺された。

 精神安定剤が手放せなくなった。

「こうなったのも全部アイツらのせいだ」

 バーボンを飲みながら窓の外の時計台を眺めた。美しくライトアップされている。氷がカランと音を立てた。

 

 スマホのアラームで目が覚めた。松田優作に射殺される夢を見た。彼の遺作となった『ブラックレイン』を見て理は役者になろうと思ったが、その才覚はなかった。

 素泊まりだったので、コンビニでクロワッサンと野菜ジュース、フランクフルトを買って来て部屋で食べた。

 10時にチェックアウトして、小樽に向かった。運河を歩いた。潮風が心地いい。

 裕次郎記念館に入った。『西部警察』『大都会』どれも面白かった。

 記念館を出て、寿司屋で昼食にした。ウニが格別だった。寿司屋を出ると銃声がした。

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