エドガーとの会談
1:19 p.m. Dipleir Cafe にて
ドアベルがコロンコロンとなる。
私が視線を向けたのは、エドガーがよく座る窓側の席。
エドガーはそこで、変わらず新聞を読んでいる。
「エドガー、ここの席に座るのはいつまでたっても変わらないな。」
「あぁ、そうだなリオ。それと、会議お疲れ様だった。」
「ありがとう。」
私はエドガーが座っている向かい合わせの席に座った。
エドガーはウエイトレスを見つめている。
やがてエドガーの視線を感じたウエイトレスが注文を受け取りにやってきて、気だるげにエドガーの注文をメモに取りマスターのほうに去って行った。
エドガーは先ほどまで読んでいた新聞をカバンにしまい、次にファイルを二つ取り出した。
「とりあえずこのファイルの中身を見てくれ。」
「あぁ。」
ファイルを片方だけ受け取り、中に挟まっている書類を取り出す。
丁寧にホチキスがされている。
昔からの真面目さは変わることはないな。
するとウエイトレスがそっとコーヒーを置くと一礼し、去ろうとするのをエドガーは止め、会計を頼む。
会計をし、彼はウエイトレスにチップを握らせた。
するとウエイトレスは嬉しそうに歩いて行った。
「それからアリェッタのことなんだが。」
「あぁ、ただもんではないな。」
「わかっていたか、やはりリオには負けるなぁ。」
薄笑いを浮かべるエドガー。
「本題はどうなんだ」
「あぁ、その話なんだが、アリェッタの出身地はそこに書いてある通りリドレーのダズノザと書いてあるのだが、どうも怪しくてな。」
‘‘Birthplace from Das Noza.‘‘
確かに、ここの村は庶民の中でも農民や貧民が集まっている村のはずなんだが。
「たまにダズノザの人間は受けに来るが、腕の良さが格段に違うんだ。あの農業の町からあの精度や運動神経、情報の速さや正確さ等を見て、かなり訓練されているような腕だ。養成所にでも通っていないとできないことまでできている。」
私は書類の学歴の欄を見た。
‘‘小、中学を卒業した後、父に手解きしてもらい、
独学でこの職業について勉強、のち社会経験を積んだ。‘‘
「よほど手解きがよかったのか、独学でよほど的を射たところを学んでいたのか。まぁ答えは独学だが、あの田舎で、しかも情報系の能力をここまで鍛えるのは不可能だ。」
「そうだな。俺がそうだからな。」
自分に対する皮肉を吐き捨てて、書類を伏せてから机の上におき、書類が飛ばないようにボールペンを上から添えてからコーヒーカップを手に取りすすった。
ここのコーヒーの味も変わらずほろ苦いな。
私はその取手付きのカップをソーサーに置いた。
するとエドガーは口を開いて私にこう告げた。
「それで、アリェッタの腕も腕だ。今のところ、アリェッタの能力がどこまで長けているのかをオレたちはまだ知らない。こちらも最善の策をとらなければならない。」
つまり、ラルデアのスパイといいたいのか。
能力が高いと採用率が高いということでここまで鍛え上げ、無難な出身地にしたとみた。
しかし、相手からすると一番消したい相手はこの国の中での一番業績が高い私のはずだが、それはどう考えているのだろうか。
「最悪殺ってもいいんだな。」
「あぁ。」
わざと私の補佐をさせて、彼女を泳がせ反対に情報を引きずり出してから始末するという意味だろう。
私を信頼した上でこの対応というわけか。
まぁ、エドガーが言うことだ、引き受けないわけにはいかないな。
それを見越しての行動だろうが。
「それとエドガー今朝のあれはなんだ。わかりやすい隠し方をして。」
お前のことだから何かあったんだろう?と付け足した。
「すまんな、電話をかけていたらアリェッタが早く出勤してきてな、急遽言い方を変えたんだ。」
「なんだ。そういうことか。ならよかった。」
「あぁ、心配ありがとう。」
それから数分の沈黙が流れた。
その沈黙の間に書類の内容を頭に叩き込む。
もちろんコーヒーを飲みながらだ。
この時間は長年相棒をしてきた私たちにしか作られない時間だろう。
今日はエドガーのおごりだから次は私だな。
エドガーは少し不安げな顔をした。
「アリェッタの腕の良さがそんなに心配か?」
「ははは、あたりだ。人の思考を読むのは相変わらず得意だなぁ。」
「そのぐらいできないと潜入はできないだろう?」
ごもっともだ。と笑いながらうなずく彼。
それからは彼の身内話を自慢のように聞かされたが、正直興味はない。だが彼はその家族の身内話をするときだけは、心の底から楽しそうなのだ。日常から感情を隠している彼でも、その感情が隠しきれないほど。
相方として、聞いてやらないとだろう?
あれから30分ほどたった頃に、エドガーの仕事の都合で帰宅することにした。
家に帰った後は、ひたすら敵国のこと調べあげ、少し気になる情報を見つけた。
しかし、今はその情報の審議は分からない。
心に留めておくだけしている。
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