アイの証

じゆ

アイの証

昔々、世界というものが未だ創造されるよりもっと前のこと、そこにはとても仲の良い双子がいた。

兄の名は創造(ゲネシス)、弟の名は破壊(ロヴィーナ)。

兄のゲネシスは弟想いで知性と探求心に溢れた研究者気質のものだった。

弟のロヴィーナは兄を尊敬して、好奇心に溢れているが失敗ばかりの出来損ないだった。

ゲネシスはいつも考え事をロヴィーナはそんな兄のことをうれしそうに見ていました。

ロヴィーナが

「兄ちゃん、おなかすいたぁ。」

と言えば、ゲネシスは

「そうか、空腹か。空を満たすもの。口から食べるならおいしい方がいいよな。」

そういってゲネシスは赤い果実を創造しました。それを半自律的に作るためのシステム、生命を作ったのです。そのなかに、植物、動物今の世界の基盤を築いたのです。その生命というものに一層の興味をひかれたゲネシスは生命までを半自律的に作り出す、そのシステムこそが今の世界というものです。それを見たロヴィーナは自分の唯一の特技である「破壊」が自由にできるおもちゃを見つけたのでした。それを見た兄ゲネシスはなぜこんなにも自分と愛すべき弟の行動が異なるのかに目を奪われ、ある実験をしたのです。意志を持った生物を作り、彼らの意のままに生活させるのです。その実験場として使われたのがこの世界なのでした。そして、彼は見守ったのです。彼らの行動を。そして、かれら、動物が必ず、二つ一組のペアになって声明を想像するということに関g気をしたのです。そのことからゲネシスは、もののあわれ、自然や、生命の意義。

そして、儚さや切なさなどという心を学んだのです。そしてある時、たまたま弟のロヴィーナがいつものように破壊をしているシーンを目にしました。これまで何も感じなかったにもかかわらず、

彼は、言いようもない感覚に襲われたのです。悲しみ、怒り、絶望、失望。

様々な折り重なった心の色に惑わされて、ゲネシスはロヴィーナに手を挙げてしまいます。

「兄さん、どうして。どうしてそんなことするの。どうして。ねえ、どうしてなの。」

その時のロヴィーナの心には疑問と怒りと名前のない気持ちでいっぱいになってしまいました。

気づいた時にはもう二人の仲には温かいものがなくなり、赤黒いドロドロとしたものが居座っていました。

二人は互いの能力、「創造」と「破壊」を手に争いが始まったのです。

まさに泥仕合でした。兄ゲネシスはありとあらゆるものを創り、弟ゲネシスはそれらすべてを破壊したのです。

次第に二人は身も心も廃れ果て、次第に争いの炎はしぼんでいきました。

兄ゲネシスは自ら創造したものが破壊される悲しみに、

弟ロヴィーナはいつもワクワクしていた兄の作るものから伝わるぬくもりに

兄は最後のお力を振り絞って、三つの世界が織りなす空間を創り、種族の異なる生命に自我を与得たのです。

兄は自分の見つけたもの分かったこと知りたくなかったものを残そうとしたのです。

そうして力尽きた兄はこれまで争った顔を見て涙を流しました。

「弟、ロヴィーナよ。争いはやめにしよう。なんの力も残っていないが私にはあなたを討つことはできぬ。

 だからせめて、最後くらい静かに眠らせてくれ。」

そういって、ゲネシスはもう開くことのないだろう瞼を閉じたのです。

弟ロヴィーナは、兄ゲネシスがもう目覚めないことを悟って、血が流れるほどに涙を流した。

「兄ちゃん、兄ちゃん、起きてください。もう争ったりしないから。

何でも言うこと聞くから帰ってきてよ。」

ロヴィーナは心地よさげに眠るゲネシスの胴を揺らしながら言う。

それでもゲネシスは眉一つ動かない。その現実を知ったロヴィーナはある決断をするのです。

兄がそうしたように、肉体を捨てようと。しかし、ロヴィーナには「破壊」という能力しかありません。

そうして、彼は思いつたかのように、行動をするのです。

まずは、右足を手に取ってそのまま勢いよく、引っ張ったのです。

ミヂッ ブジュッ バリバリバリ、バキバキバ……

肉と肉がちぎれる音。骨と骨が引きちぎられる音。とめどなくあふれる血汐。

充満する鉄分の臭いに気を留めず。赤く染まった手でもう一方の足を捥ぐ。

悲鳴などは挙げなかった。彼の頭の中には痛みすらなかった。あるのは愛だけ。

たった一人の兄に向けった血汐のように赤く、血汐のように温かい。そんな愛だけ。

次に左腕。右手で腕を強く握り、限界を超えて左に引っ張る。三回目となればもう慣れたのか

血管 肉 骨 が小気味良い音をたてながら左腕が自由になった。

そして、最後に最後の腕を使ってのどの少し左下。

胸骨の上から二本目と三本目の間に静かに左手を進める。

手によって割かれた皮膚からせせらぎのように血が垂れる。

手にまとわりつくような温かさに包まれながらも左手はゆっくり、目的地へ向かう。

そして、一定のリズムを刻むものが指に触れた。そのこぶしほどの塊を掴んでみる。

するとその瞬間、身をよじるような痛みと共に、凄まじい吐き気を催した。

そうして、少しリズムが早くなった心臓をさらに強くつかむ。

がぁぁああああああ

声にならない悲鳴を上げながら、右手を一気に前に出す。

もうろうとする意識の中で、ロヴィーナが見たのは

兄妹の愛を表すものだった。

とめどなくあふれる愛を吐き出している。

そんな恍惚な情景を見ながら、ロヴィーナもあけることのない瞼を閉じたのでした。

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アイの証 じゆ @4ro

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