過去2
教室の窓から遠くの山で大きな入道雲が見える、雲の下方から少し灰色になっていた。
(帰る時に夕立になりそうだな…。)
そんな事を考えながら授業の内容をボーッと受け流していた。今の時間は数学で数学は苦手な教科第一位のため全く話が頭に入ってこない。授業が終わるまでまだ時間はある、私は嫌になってノートの隅に落書きをし始めた。可愛い顔をした女の子のイラストを何人か描いていると前から視線を感じた。先生に気づかれたかと思い前を向くと前の席のユズリが私のノートをじーっと見つめていた。私は慌ててノートを両手で隠して落書きが描かれているページをそっとめくろうとした時
「ミサは絵上手だよな…」
ユズリが絵を見て一言呟いた。私なまた驚いた、真面目なユズリのことだから「勉強しろよ」とか「授業中に何してんだ」と言われると想像していた。しかしユズリが発した言葉は想像の斜め上だった。
「え…?何て…?」
驚きすぎてユズリに聞き返してしまった。
「いや、ミサって絵上手だなって…」
気づけばユズリは私のノートを取り上げてイラストをまじまじと見ている。
「このキャラクターってもしかして昨日のアニメの女の子?」
ユズリは目を輝かせて私にイラストのことを聞いてきた。私はこくこくと頷いて返事をした。どうやらユズリは私が描いたキャラクターの女の子が好きなようだ。
「やっぱりミサもあのアニメ見てる?どのキャラクターが好きなの?」
自分の好きなアニメのファンがいることがわかったユズリはさらに興奮している。
「昨日の13話すごくかっこよかったよね!ミサも見てどう思った?」
目を輝かせて聞いてくるユズリを見て私はクスッと笑ってしまった、ユズリにもこんな一面があることを初めて知った。そんな事を伝えたらユズリはちょっと不機嫌になるだろうから私は昨日見たアニメの感想を話した。
いつもつまらない数学の授業が楽しく感じた。
授業終了後、私はユズリにさっきのアニメの話をしようと思って声をかけようとした、がしかしユズリは他の女子たちに呼ばれて次の授業の教材を持ってクラスメイトの女子たちと教室を出ていった。
「まぁ…そっか…。」
私はため息をついてノートに描かれていた落書きのページを破りグシャグシャにしてゴミ箱へ捨てた。ユズリはクラスのムードメーカーと言っても過言ではない。私はユズリの幼なじみだが性格は正反対でユズリは明るい性格、私は暗い性格だった。小学生の頃はあまりの人見知りと暗さから一時期「不思議ちゃん」と悪い意味で呼ばれていた。けどいつまでも同じではなく小学校を卒業する時にはそれなりにクラスメイトと話せるようになっていたり少しは明るくなっていた。
「おいー‥次移動教室なんだから早く教室出ろよー。」
クラスメイトの男子の声でハッと我に帰って急いで机の上の教材をもって教室を慌てて飛び出た。
「はぁ‥ったく、夏原ってノロマだよな。」
教室の扉を閉めながら愚痴を言われた。
愚痴を言われるのはいつものことである、
「ははっ…ごめんごめん。」
苦笑いをしながら男子に謝るが男子は呆れた顔で廊下を歩いて行った。愚痴を言われるのはいつものこと…ずっと自分の心に言い聞かせた。始業のチャイムが鳴るまであと5分、私は別の廊下から次の授業の教室へ向かった…
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