罪悪感と夢
気づけば私は元の座席に座っていた。車内は元通りになっていて次の車両も扉越しに見えた。夢を見ていたことに気づいた、今度はハッキリ彼女が夢の中に現れ夢にしてはあまりにも鮮明で残酷だった。私は気分が悪くなりカバンに顔を埋めて終点まで過ごした。
今までこんなにハッキリとした夢を見たのは初めてだった。それはいつも登下校で乗る電車で私は立って乗っていた、けど私以外乗車している客は全くいない。次に停車する駅までまだ距離があると思い座席に移動しようとした時、私から5メートル離れた所に知らない学校の制服を着て立っている女性がいた。
(さっきまでいなかったはず…?)
私の頭の中に疑問が浮かんだ、顔はうつむいていて綺麗な黒髪が横顔を隠しているので見えない。顔を遠くから少し見ようとしたその時線路のカーブによって電車が大きく揺れてつり革なしで立っていた私はバランスを崩して座席についてる手すりに慌てて手をかけた。自分の体勢が安定したのでほっとため息をついた。手すりを離してしっかり立とうと顔を見上げた時、私は目の前にいる女性に驚いた。そこにいた女性はミサだった。
ミサは立っていたときと同じように軽くうつむいていて目を閉じていた。その姿を見た私はミサの顔へ手を伸ばそうとした。何故そんなことをしようとしたのか夢の中でもしっかり覚えている、そこにいた彼女が今にも綺麗で壊れそうだったからだ。髪の毛を手でよけようとした時私の手の甲に一粒の涙が落ちてきた、泣いている…。
「ミサ…?」
彼女の名前をそっと呼んだ時目の前がぐわんとなって見える景色が薄くなった。同時に遠くで私を呼ぶ声が聞こえる…。そこで夢は覚めた。ベッドから体を起こしてボーッとしてるとまた夢と同じ声が聞こえた。横を見ると母親が腕を組んで立っていた。
「ユズリ!何回起こせば気がすむの!7時半だから遅刻するよ!!」
時刻を聞いた私は慌ててベッドから降りて髪の寝癖を直しながら制服に着替えた。着替えている途中Yシャツのボタンを留めながら今日見た夢を考えていた。彼女は泣いていた、その姿は中学生の時と全く同じだった。ただ目を閉じてうつむいて静かに涙を流す。でも何故今更夢の中に現れたのか…。夢を見るとき強く何かを意識するとそれが夢の中に現れると聞いたことがある。けれど私は夢を見る前に彼女を強く意識したわけじゃない。
(じゃあ…何故…?)
深く考えるとフラッシュバックのように中学生の時の出来事が頭に流れてきた。それは教室の真ん中でミサが立たされていて他のクラスメイトはミサを取り囲むように隅にいる。そして私はミサの目の前にいて…その次は、その先は…。
(ダメ…思い出したくない…。)
せっかく整えた髪の毛をぐしゃっとして頭を抱えた、そして心の中で「馬鹿だ」と責めた
「ユズリ!いい加減にしなさい!もう遅刻しても知らないからね?!」
1階から母親が叫んでいる、私は母親の声で我にかえり時間が迫っていることに気づき慌てて制服のブレザーとリュックサックを持って家を飛び出た。自宅の近くのバス停にちょうどバスが来た。
(もし、ミサも似たような夢を見たら私は…どんな風に現れているんだろ…。)
そんな事を想像しながら急いでバスに乗り込んだ…
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