第1話

「大翔、お前進路どうするつもりだ?」

昼休みに教室で友達と弁当を食べていた俺、早見大翔は放送で呼ばれて進路指導室で担任の中村先生に質問をされた。

「就職っすね」と俺は胸を張って言った。

はぁ溜息をつきながら呆れた様子で中村先生はかけていた眼鏡を白く光らせる。

「あのなぁ就職って簡単気に言うけど、中卒で出来る仕事ほとんどないぞ」

「2つ上の本田先輩に一つ上の岩竜さんも湊中卒業して鳶やっとるやないっすか」

湊中の先輩の2人を例としてあげて大翔は言った。

「鳶をカッコええおもとんか。確かに給料はええけど休みそんなにないぞ。それなら高卒で仕事見つけた方がなんぼかましや」

中村先生は俺に諭すように言った。

「俺の頭で行ける高校なんか私立だけしょ。金めちゃかかりますやん。そこまでして高校行きたないっすわ」

俺は素直な気持ちを中村先生に伝えた。

「お前とようつるんどる赤城、菊田、矢沢の3人にも薦めよる高校があるんや。」

中村先生は頭をボリボリかきながら言った。

「千坂工業高校や。一応県立やし、就職するんやったらここ入れ。就職先にええ会社いっぱいあるけん」

千坂工業高校。表向きは県立だがそこは県内随一の底辺高校として有名である。

そりゃ赤城らでも入れるわ。

あ!と中村先生は思い出したかのように言った。

「直樹も千坂工業行くいよったわ」

直樹は俺の幼なじみである。

「なんかの間違いでしょ。あいつ竜川行くんやないんすか?」

竜川とは私立竜川高校のことである。

「俺も竜川や思っとったんやけどな。竜川倒したいらしいねん。それに就職先なら千坂の方がええけんって自分で言いよったわ。ほんまもったいないよな。バドミントンの推薦きとったのに」

推薦蹴るとかあいつアホやな。直樹はバドミントンの大会で県でベスト4の実力者である。

「まぁ親と話してみますわ」

俺は早く話を切り上げたいのでぶっきらぼうに言ってその場を立ち去った。









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