第4話 初めてのボス討伐とレベルアップ

もう狩りをして何分経つんだろうか……

左上に表示されている時間を見ると、午後の7時30分と記されていた。

まずっ、もう親が帰って来るじゃんか……


ミズは慌てて、ミクに後どれくらいでダンジョンが終わるか聞いてみる。


「ねぇねぇ、このダンジョンって後、どのくらいかかるの?もう1時間以上潜ってるよね」

「このゲームは1ダンジョンがめちゃくちゃ長いからねぇー。でももうボス面だよ」


ミクがそう言うと奥には小さな光が見えていた。

出口かと思いきや魔物の声もする。

ミクの言う通り、ボス面が近くにある事が分かる。

ミズはミクの後ろに隠れながらコソコソと移動する。

基本はミズが先に戦闘を行い、味方の攻撃が当たってもダメージが通らない設定になっているのでミクが魔法攻撃を打ち敵を倒すの、繰り返しである。

ずっと歩いていると小さな光は次第に大きな光となり、魔物のいるエリアに来る。


「ここが魔物の部屋……なんかあそこに魔物いるけどこっち見てるだけで攻撃して来ないよ?」


ミズは物凄い大きな魔物部屋に驚くもその魔物が攻撃して来ないため、そっちの方に驚きが偏っている。

そしてミクはすぐにミズの問に答える。


「ボス面まで来ると最初のうちは扉とかが無くて、目の前に魔物が待ち受けてる感じなんだよね。この門を潜ったらすぐに敵が襲ってくるよ」


ミクのレベル的には全然問題ないし、さっきの攻撃パターンで行けば多分勝てる敵である。

しかも敵はスライムだし

でもなぜかミクがあのスライムを警戒している。

私とミクは恐る恐る門を潜る。

最初に潜ったのはミクであり、潜った瞬間にミクの方にスライムが全速力で向かってくる。

敵のステータスを覗き見すると、意外なステータスだったのである。



スライム《変身者》

レベル60

HP 6000

攻撃力 600

防御力 600

スキル

変身者 合成術 魔物化 錬金術 分解術



はぁぁぁ??

何あの変なスキル、しかもレベル高っ!!!

どういう事?

なんであんなレベルの高い敵が居んのよ。


ミズは門を潜らず思考を開花させている。

それを見たミクは、「何やってるの!早く来て!」

と少し怒ったように言うが、私が行ったところで攻撃力500とか2回殴られたら死ぬじゃんか……

結局ミクは近距離系の技を連発させ、敵の体力を半分まで下げる。

だがミクも体力が3割ほど削られており、もしかしたらミクが負けるかもしれない状況になった。



私はどうすればいいの……

戦いたいけど、こんな最弱のレベルじゃ勝てないし

今までロクに戦った事もないのに、勝てるわけないじゃん……

でもせっかく友達が私のために戦ってくれてるのに、ここで逃げるのはやだ。

唯一無二の友達を失うのはやだ

やるんだ、私ならできる。

私は攻略ゲーマーだ。


ミズは覚悟を決め、門を潜るとすぐに今走れる限界のスピードでボス面の周りを走り回る。

このゲームには速度限界がない為、永遠に走れる。

それを活かし、敵を撹乱する。

私の使える技は今は1つもない。

スキルも無ければ武器は初期装備、頼れるのは今、この中で1番強いミクだけ

ならばやる事は一つだけだ。


「ミク!私が撹乱するからミクは今出せる最大魔法であのスライムに攻撃して!」

「でも、あのスライムのターゲットは私よ?どうやってターゲットを変えるつもりなの?」

「そんなの簡単だよ、私があのスライムに飛びかかればいんだよ」


かなり無謀な賭けだがミクを信じてやるしかない。

敵の攻撃を受けていいのは2発だけ、しかも敵の攻撃速度はどれ程のものか分からないし、クリティカルなどの追加ダメージがあればワンチャン一撃で死ぬかもしれない。

でもやるしかない……


「ミク!!今頼れるのは貴方しかいないの!だからお願い!」

「あぁぁぁぁ!どうなっても知らないからね!」

「ありがと!!」


こうして作戦が開始される。

私はスライムに飛びつき、ひたすら動き回る。

この行動に意味があるかないかと言われれば意味は無いかもしれないが、もしスライムに移動中の攻撃不可や移動中の攻撃遅延があるかも知れない。

それらを全て考え、ひたすら動く。

そうしている間にミクは最大火力の魔法を使うために、魔力を貯めている。

魔力は体力を吸う事で発動でき、1HPにつき1魔力である。更に貯めるのにはレベルによってかなり時間が変わるがミクの場合、1000魔力貯めるのには5秒かかるのである。

スライムを倒すためには、残りHP3000程度だから、15秒は待たないと行けない。

私がスライムに飛び込んでから8秒が経過した。

と、その時……



痛った!!!!

くそ……思ったよりは攻撃は遅いけど、攻撃が痛すぎるでしょ。

ってかHPが残り150しかないじゃんか

クリティカル的な設定はあるって事ね……

中々クソ野郎な設定じゃない


そんな事を思いながらひたすら動き回るミズ、あと1回でも攻撃を喰らったら確実に死ぬ。

しかも今までの時間が全て無駄になる。

お願い!間に合って!!


5……

4……

3……

2……



敵の唸り声が聞こえる。

これは今さっき敵が攻撃する時に出した声である。

ミズは負けると思い、目をつぶった。



ここまでか……

また1からって……心折れるよ。


炎災卑惨カタストロフィ!!!!」


諦めて目をつぶっていたミズは思わぬ声を聞き、再び目を開ける。

目を開けたミズが見た景色あまりにもいい空の景色だったのである。

何となくあのレベル60のスライムがここに来たのか予想がついたミズはとりあえずお礼を言おうと立ち上がり、ミクの方へ近づく。

ミクはかなり体がボロボロになっており、座り込んでいた。


「間に合ってよかったーー、真面目にやばかった」

「ミク、ありがとね!本当にありがと!」

「私は強いもん!」


こうして2人の初めての共同作業は終わった。

あのスライムはなんだったのだろう。

予想はつくがあくまで予想であり、その予想はまだミクに話せるほどの確証もないから話すのは辞めておこう。

今はとりあえずボスを倒した事を素直に喜ぼう。

友達と一緒にゲームをして友達と共同作業したのは始めての事だった。

これがマルチ専用ゲームか、中々面白いな。


ダンジョンの外に出ると、前の街とほぼ同じ街の光景であった。

1つ違う所と言えば、今目の前である通知らしき物が来ていた。



貴方はレベルアップが可能です。

レベルアップしますか?


まさかとは思ったがやっぱりそうだったか。

このゲームはクリアするのは難しそうだなぁ。

ダンジョンの終わった後に経験値が貰えるシステムなのか……

お金もちょいと貰えたし、装備でも買おーかな。

ってかレベルってどんだけ上がったんだろ?


ミズはステータス覧を開き、自分のステータスみる。



ミズ

レベル31

HP 3100

攻撃力 310

防御力 310

スキル

現在スキル屋で獲得可能


かなり上がっているステータスに驚くが、あのレベル60のスライムを倒した事を思い返すとこのレベルも当たり前なのかと思い始める。

まぁとりあえず武器とか揃えて、スキルもなんか欲しいなぁー!


「ミクー!!!」

「どしたの?」

「今日は落ちるね。私親が少し厳しいから」

「おっけ!また明日ね!明日は土曜日だから朝から待ってるよ!」

「了解!」


一瞬部活は?と思ったがミクは色々事情があるらしいからそれはそれで聞かない事にしておいた。

明日に期待を膨らませ私はゲームをセーブし、ゲームをやめる。


「お母さん、早くかえってこないかなー!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る