VOL.4
彼がコーヒーを運んできてくれた時、不意にインターフォンが鳴った。
コールボタンを押そうとするのを制して、代わりに俺が出た。
『誰だ?』
『警察のものです。本田さんのお宅ですな?お母さんについて聞きたいことがありまして』
くぐもったような声で一人がマイクに向かって喋りかけてきた。
モニターの向こうに、背広姿の男が二人立っているのが映し出されている。
『私は本田和也君に雇われた探偵だ。代わりに話を聞こう。と、その前にバッジを見せて貰おうか』
モニターの向こうの男は顔を見合わせて、バッジを出した。
確かにバッジを出したが、本物らしくは見えない。第一見慣れた
おまけにその面はどこか日本人離れしているように思えた。
『疑うわけじゃないんだが・・・・日本の
『文句を言わずに直ぐに開けろ!』いらついたような声で、もう一人が
ヤクザな警官というのは良くいるが、警官になってるヤクザというのは、流石の俺でもまだ出会ったことはない。
『今時オイコラ警官がいるとは思わなかった。俺にだって
舌打ちをする音が聞こえ、二人は未練たらしくモニター画面を睨みつけながら、足早にその場を立ち去って行った。
『どうやら君のお母さんは、かなり
『どんな仕事をしていようと、僕にとっては母は母です。』
しっかりした子だ。
ここまで自分の親を信頼し、そして愛している子供なんて、今時そうはいるまい。
『しかし、そうなるとこのマンションにいるのも
担いでいたザックに荷物を詰めて戻って来ると、何かを取り出して俺に見せる。
『僕名義の銀行の預金通帳とキャッシュカードです。残高を確認してみますか?』
『いや、それには及ばん。君は俺の依頼人だ。探偵は依頼人を信頼するもんだよ』
俺の言葉に、彼はにっこりと笑って返した。
俺は携帯を出し、ジョージに連絡した。
”悪いがまた頼む。20分で来てくれ。行先は後でいう。出来ればなるべく目立たない
”おい、旦那、俺はいつからあんたの専属運転手になったんだい?こっちだって暇じゃ・・・・”
”チップは弾む。倍増しだ”
”しゃあねぇなあ”
ため息交じりにジョージが答え、電話を切った。
『これでよし、じゃあブレーカーを全部落としてくれ。当分帰れそうにないからな』
俺がそう言う前に、彼はてきぱきと行動していた。
10分後、マンションの裏手にジョージが車を停めていた。
確かに目立たない車だ。街中を走ってればどこでも見かける、黒の国産車、5ドアのSUVだ。
『いきなり用意しろなんて、無茶をいうもんだぜ』
『これで十分だ』
『で、どこへ?』
『とにかく1時間、都内を走ってくれ、なるべく出鱈目に、走り方は任せる。最終目的地は追って話す』
『かしこまりました。ご主人様』
俺と本田和也を乗せると、ジョージは一気にアクセルを踏んだ。
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