03-03 心を縛る鎖

「金ヶ屋麗子に応援を頼んだわ」

「だろうね。キミだけじゃ不可能な援護弾数だった。奴のを屠るのに集中してくれて助かった。ありがとう」


 ニトは息を荒げながらアヤたちに礼を述べる。

 アヤは無言で右手を挙げる。金ヶ屋の兵隊は一礼しあるじの元へ立ち去った。


「それにしても、よくこんな化け物を殺せたものね。烏合の衆が百人いても無理」

「ボクはだからね。キミのデータ収集に役立てばいいのだけれど」

「あ。そう言えば私も殺し屋だった」


 二人はどちらからともなく目を合わせ、クスクスと笑う。こういうときは笑うに限るとニトは理解している。こういうときは笑うに限ると互いに理解している。


「わかったでしょ? これが殺人鬼の成れの果て」

「うーん。でもね、私たちもこうなるんじゃないの? 殺しを生業なりわいにしてる連中が全員こうなったら、世界は滅びるんじゃない」

「心を縛る鎖」

「……は?」

「こんなふうになる条件があるんだよ。過去という鎖によって心を縛られていれば、殺し屋は殺人鬼に、殺人鬼は破壊者に堕ちる」

「よくわからないけど、あんたが言うのならそうなのでしょうね。その博学、どこで手に入れたの?」

「知りたい?」

「いや、別に」


 うおおお、という叫び声が聞こえる。

 その叫び声は紛れもなくの声だった。

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