最終話

03-01 終焉の儀式

 威嚇にしてはあまりにも強烈な銃声が鳴り響いた。

 何度も、何度も、何度も。


「お疲れ様。全員ぶっ殺しちゃった?」

「ああ、全員不具にしてやった」


 ニトは考える。リクのは思いのほか順調に進んでいる。が。


「悪党といえど痛みは感じるからね。救急車呼んでおくよ」

「…………」


△▼△▼


 精神のほころびを縫い上げる作業は困難を極めた。専門医すら匙を投げたリクの心の傷はあまりに深く。アヤは早々にお手上げしたが、それでも、それでもニトはアヤやナオを説得し、協力してもらった。

 全部無駄かもしれない。ニトもそれはわかっている。わかっていながらさずを得なかった。なぜなら、リクはニトの、


「ああああああああああああああああ!」


 突如、すさまじい発声が市街に響き渡る。


「あっちだ」

「発狂にしては禍々しすぎるわね」


 ニトとアヤは現場に向かう。

 そこに繰り広げられていた光景は現世の地獄そのものだった。


「ああああああああああああああああ!」


 周囲の建物の壁はことごとく血で染まり、路面には肉片が散らばっていた。よくぞここまでったものだとニトは感心する。

 血の海の真ん中で叫んでいるのは心身を病んだ殺し屋の成れの果て。

 そう。手を施さなかったリクの未来だ。


「アヤ。援護頼む」

「はいよ」


 ニトは死地に飛び込んだ。

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