01-07 一件落着

「ふう。ご苦労さま」


 麗子の眼前には、もはや原形を留めていない夫の死体と、その愛人の生首が転がっていた。


「時間外労働させて悪かったわね。ゆっくり休んでちょうだい」


 麗子の従者たちは頭を下げ、殿を立ち去った。


「まったく…… 私が飼ってあげてる身なのに不倫なんて論外よね。でしょ?」


 麗子は豪奢ごうしゃな椅子に腰掛け、ニトたちに語りかける。


「でも好」

「おっしゃる通りです、お嬢様」


 この場には似つかわしくない言葉を発しかけたリクを蹴り飛ばしてアヤが言う。


「あなたと彼、秀光様とのめは私どもは存じあげませんが、秀光様が執心なされていた女性はおそらく」

「そこまで。これからはフランクな口調でいきましょう。……うん、私は"永劫無銘"を買ってる」


 金ヶ屋麗子が言う。


「少数精鋭だとは聞いてたけど、ここまでやるとはねえ」

「……なるほど、納得しました」

「でも皆無事だよねえ? 怒る? 怒って私を殺」


 トン。


 十メートルは離れていたはずのニトの刃が麗子の首筋にかかる。


「は、はは。……これは予想以上」


 麗子が顔面を引きつらせながらしゃべる。


「同盟を結ぼうか。もし私が今死ねば、あんたらは全滅とはいかなくとも誰かは死ぬ。それほどセキュリティは頑丈よ」

「いいよ。キミの言葉には嘘がない」


 ニトが言う。


「最初から最後まで本音だ。好きだよ、そういうの」

「…………」


 麗子は黙る。黙るもまだ眼光鋭く、アヤを見据えていた。


「よし! それじゃあ同盟を結ぼう! 対等な関係で」


 アヤが提案する。


「わかった。対等な関係であんたらと手を結ぶことを約束しよう」


 麗子が応える。アヤが微笑ほほえみながら握手を求め――


「でも好きだからしゃあねぇよな!? ほら、不倫は文化って誰かが言っ」


 ――ようとするさなか、大声を張りあげた人物は即座にニトのによって封じられた。


「申し訳ない」

「…………ぷ」


 仏頂面の女帝が笑った。


<第1話終>

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