01-06 受け渡し

「六時五分前。うん、さすが運び屋」


 邸内に入ってきたニトたちに、アヤが話しかける。


「証拠品は無事?」

「リクが失敗したことあったかな」

「俺は失敗しない」

「ああ…… その袋ね」


 アヤはリクの左手にある紙袋を見ながら言った。


「やった! やったぞ! ふははは、私は勝った! 今回もまた勝った! 常勝無敗!」


 リク・ニト・アヤからなる小さな殺人集団"永劫無銘"への依頼者金ヶ屋秀光かねがやひでみつは、高らかに宣言した。勝利宣言をした。


「ほらほら、あんたらも見たまえよ。我が覇道のあかしを!」


 秀光は興奮しながら紙袋からを取り出した。

 乱雑に髪をつかまれ揺れ動くその生首は、確かに対象者に他ならない。


「ふう。よくやってくれた。これでなんとか誤魔化せるだろう。……そうだ! あんたらも」


 その刹那。扉が勢いよく開いた。


「何をコソコソとやってるのかしら?」


 金ヶ屋秀光の妻が大勢の従者とともに邸内に入ってきた。その数、およそ二十余名。


「はあああ! 我が最愛の者よ。非礼は詫びる。この首とともに詫びる!」


 秀光は不倫相手の生首を掲げながら床にひざまずいた。その身を震わせながら。


「……なるほど。いいでしょう。許しましょう」

「おお! ありがたきかな!」


 秀光は不倫相手の生首を投げ捨て、絶叫した。


「許しましょう。遊びなれば。秀光さん、あなたは超えた。許容量を超えてしまった」


 秀光の妻、金ヶ屋麗子が右手を挙げる。と同時に彼女の従者全員が秀光を取り囲み、拳銃を抜いて構えた。


「どういうことだ麗子。私たちは夫婦じゃなかったのか」

「はあ? 自分の胸によく聞いてみるんだね。あの世で」


 麗子は右手の指を鳴らす。と同時に彼女の従者全員が発砲した。

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