エゴイスト

CKレコード

エゴイスト

俺の香水はシャネルのエゴイストだ。


男のダンディズムを語る上で、「自分の香り」ってやつを持っていなければならないってんで、長い事、自分に合う香りってやつを探し続けてきたけれど、俺の香り探しの旅はどうやらこのエゴイストで落ち着きそうだ。


なんせもう10年ぐらい使い続けている。

決め手は名前だった。

エゴイストだぜ。

人一倍、キクバリストの俺がつけてる香水がエゴイストなんて、おもしろくないかい?


「香りぐらいエゴイストでいたいんだよ!」


っていう俺の悲痛な叫びが聞こえてくるようだろ?



今日は大事な商談だ。

おっと、気合のあらわれか、今日はエゴイストをちょっとつけすぎちまったようだ。

自分の香水のニオイで自分自身が気持ち悪くなっちまう。

そんな気持ち悪さを口呼吸でごまかしながら、特急列車に乗り込んだ。


と、別の強烈なエゴイストの香りが俺の鼻腔を襲った。

隣に座った紳士、どうやら彼もエゴイストの愛用者。

しかも、俺以上にエゴイストをつけすぎすぎているではないか!

しかも、この紳士、後ろの人に対して


「シートをちょっとだけ倒してもいいですか?」


なんてお断りをいれている!

なんと、俺以上のキクバリスト!


おっと、どうやら紳士が俺のエゴイスト臭に気付いたようだ。


「あなたもエゴイスト?」


「ええ、エゴイストです(爽やかな微笑み)」


それから僕達は、強烈なエゴイスト臭を社内にまき散らしながら、"特急電車の真ん中の肘掛はどちらが使うべきなのか"について友好的に語り合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エゴイスト CKレコード @ckrecord

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ