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 二人の座っている大きな木の枝は、がっしりとしていて、ちょっとやそっとのことでは、折れたり曲がったりするようには思えなかった。

 でも、それでも、祈がいきなり、そんな大きな木の枝の上に勢いよく立ち上がったときは、隣にいた叶は思わず、「うわ!」と声を出して、すごくびっくりしてしまった。

「びっくりした?」

 くすくすと笑うながら、楽しそうな顔で祈は必死に木の枝にしがみついている叶のことを見ている。

 祈が立ち上がった衝撃で、大きな木の枝がまだぐらぐらと揺れている。

「危ないよ、祈」慌てた顔をして、叶は言う。

「大丈夫だよ。慣れているから。それより、ほら。ちゃんと見ていてよ!」

 そう言って祈は「よっと!!」と掛け声を出して、大きな木の枝から躊躇なく、思いっきりジャンプをすると、そのままなにもない空中を飛び越えで、向こう側にある、もう一本の大きな木の枝の上にそのままの勢いで飛び乗った。

「危ない、祈!!」

 と言って、手を伸ばした叶はすごく慌てたのだけど、祈は全然平気なようで、「おっとっと」といいながら、向こう側の大きな木の枝の上で、一本足で立ちながら、ぐらぐらと体を揺らしながらバランスをとると、そのままゆっくりと叶のほうを振り返って、「どう? すごいでしょ?」と両足を揃えてから、楽しそうな顔で言った。

 そんな祈のことを見て、叶はほっとして、胸を撫で下ろしたあとで、なんだか、すごく呆れてしまった。

「祈はいつもこんなことをしているの?」

 叶は言う。

「まあ、暇なときはね」にっこりと笑って祈は言う。

 それから祈は向こう側の大きな木の枝の上に座った。

 二人は二つの少し距離の離れた場所にある大きな木の枝の上に座って、向かい合うような格好になった。

 また、二人は少しの間、無言になった。

 その間、ずっとお互いの顔を、二人はじっと見つめていた。

「……きっとさ、誰かと私を間違えているんだよ。その人、きっと私によく似ていたんじゃないかな?」と叶を見て祈は言った。

「君に似ている人なんて世界中探してもどこにもいないよ」と真顔のままで叶は言った。

 そんなことを言う叶を見て、祈は向こうの大きな木の枝の上で、なんだか複雑そうな顔をして、……でも、そのあとでちょっとだけ嬉しそうな顔をした。

「どうもありがとう」と顔を赤くして、祈は言った。

 こうして祈にお礼を言われるのは、今日二回目のことだった。(もう! 褒めたって、なにも出ないよ!! とこのあと、真っ赤な顔の祈は大声で叶に言った)

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