第10話

 通りの端、民家まで逃げ延びたナタはシューラの足の手当てを始めた。

「これ以上はボクらにはどうしようもないよ、充分にやった」

 茫然としていたシューラは、不意にニヤリと笑った。

「充分……?へへ、えへへ、そうか。充分か」

「そうだよ、だから――」

 小柄な車長の体は、鼻先への拳の一発で吹き飛んだ。

「そりゃテメェが利く口か?」

 ナタは混乱したまま、どろりとした鼻血を拭った。

 怒りに火の着いた運転手は、足を引きずりながら彼女に迫った。

「今日何回“どうしよう”つった?ガキを轢いた時、一体何見てやがった?」

 ナタの首を掴み、力任せに壁に叩きつけた。

「酒盛りだってテメェが整備士連中をバカにしやがるせいで!渋られたパーツを引き出すためだ!挙げ句に部下を見殺しとはな!」

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 真っ赤になって泣きじゃくる彼女を床に放り出すと、1丁の軽機関銃PPSh-41を投げつけた。

「囮になれ。装甲は破れなくても人間ならコイツで吹っ飛ばせる」

 それだけ言うと、手榴弾を握りしめた。

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