小話 猫好きな猫又と猫の日

 進化(?)した私には2つの尻尾がある。

 1つは元からある黒い尻尾。これは身体のバランスをとるのに役立っている。

 もう1つが、後から生えたっぽい紫の尻尾。こっちは魔力を操作するのに大変役立っている。

 普通なら身体に新しい部位が生えたりしたら、こう、違和感を感じると思うんだけど、子猫わたしの身体はすんなりと現状を受け入れていますよ。我ながらアバウト。

 なんで色が違うんだろうとか、なんで魔力操れるんだろうとか、まぁ、疑問に思うことがないわけでもない。

 全く悩まないわけじゃないけど、悩んだ末に「まぁ痛くも痒くもないしOK!」となる。おバカですみません。


 自他共に認める“お勉強苦手族”な私ですが、猫のことに関してはいろんなことを調べたり覚えたりしている。

 それはもちろん、純粋に猫好きであることと、アイラブな愛猫ハルくんの為。

 猫の仕草の意味や習性、猫語なんかも調べたりした。猫語は正直、今の私がしゃべっているやつだけど自動翻訳なのでよく分からない。私的には普通に話しているつもりなので。

 猫種はもちろん、それぞれの成り立ちも調べたこともあった。


 そんな私が、猫繋がりで「猫又」を調べないはずもなく。


 妖怪といえど、猫は猫。そこに違いなんてないし、むしろ作るべきじゃない。

 そんなことを力説した私を、妹が適当に相槌を打っていたのが懐かしい。もっとお姉ちゃんに優しくしてくれても良いんだよ?


 猫又と呼ばれる妖怪は2パターンいるらしく、1つは山に住むタイプ、もう1つは家猫が年老いて化けるタイプがいる。

 山に入ったところを人に化けて遭難させたり、襲って食べたりと割と狂暴。


 何より、猫といって最初に思いつくのは、やっぱり二の尻尾だと思う。今の私がそう。

 実は尻尾が2つという意味じゃなくて、確か山に住むタイプの猫又を木々の間を移る様子からサルを意味する「また」が語源だっていう説もあるらしいが。

 ちなみに私は爰が読めずに国語の先生へとわざわざ質問しに職員室に突撃しました。そんなことより明日のテスト勉強をしろと怒りつつも教えてくれた先生、ありがとうございます。赤点は回避しました。


 まぁ、ともかく。猫又の象徴ともいえる二又の尻尾ですが、それと今の私の状態を合わせて考えると不思議に思うことが1つ。


 猫又って、なんで尻尾2つなんだろう。


 いやね、身体のバランスをとるなら1つで良いわけですよ。実際、普通の猫ちゃんは尻尾1つなわけで。

 だとすると、バランスをとる以外の用途があるわけじゃないですか。

 更に私の2つ目の尻尾には魔力操作の用途があるわけじゃないですか。


 つまり、猫又の尻尾にもそういった用途がある可能性が出るじゃないですか!

 そこで思い出すのが、そう!

 「猫又は人に化ける」という話!

 もしや、私も頑張れば人に化けられる、もとい戻れるかもしれないと思ってしまうのも仕方ないと思うんです。

 別に子猫の身体が嫌というわけじゃないんだけど、できればディオさんと会話してみたいわけでして。


「…………最近よく見るが、何をしてるんだ?」

にゃんにゃん変身です!」


 開けられた窓の外に向かって、後ろ足で立ち上がって両手を上げてみたり、綺麗なエジプト座りで鳴いてみたり、見本のような香箱座りをしつつ2つの尻尾でハート型を作ってみたり、いかにもポーズをとること暫し。


「魔力を集めているから、何か魔法でも使いたいのか……? そのわりには何も出てこないな…………魔力の気配が強くて気になってしまうんだが、何をしたいのかはさっぱりだ」


 そんなお兄さんの不思議そうな視線を背中に感じつつ、今日も私は頑張っています。

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