第6話 猫好きな猫と実戦②

 そこから更に2体のウッドスライムを仕留め、残すところ2体。

 しかしミアの森には他にもいろんな生き物が住んでいて、魔力探知にはたくさんの反応が出てしまう。

 魔力反応があった場所まで来てみれば、スライムではなくウッドバードだったりウッドレプスだったりした。というか、ほとんど違う魔物だった。

 ウッドバードは樹の中に巣を作る鳥型魔物で、茶色の身体に緑色の長い羽根が頭から伸びた、まさに樹っぽい外見をしている。

 ウッドレプスは樹の根本に巣を作るうさぎ型魔物で、茶色の身体に折れた耳が可愛い外見をしている。が、見た目の可愛さに反して生きたまま相手をかじるヤバい奴だ。

 どちらもスライムとは違って【木】の魔法を使ってきた。

 といってもウッドバードもウッドレプスも弱い魔物なので、魔法も木の根が少し盛り上がって動きの邪魔をするレベル。ドラゴンと追いかけっこをした私には話にならなかった。

 ウッドレプスは、お兄さんから「生きたまま相手を……」という話を聞いた瞬間に石杭を放ちました。怖かったので。

 一応、今は冒険中なので魔物は食べたりせず、お兄さんに回収してもらっている。弱い魔物でも素材として売れるなら売りたいしね。


んにゃてや!」


 樹の穴へ石つぶてを打ち込み、お兄さんに確認してもらう。中から取り出したのはスライムの核。

 8回外れをはさみ、ようやく4体目のウッドスライムだ。

 溜め息をつく私に、お兄さんは笑っている。


「ルフス。魔力探知で目標を探すのなら、相手の魔力を覚えるのがコツだぞ」


 と、今更なアドバイスもくれた。お兄さんは優しいが厳しいのです。

 でも、そうだよね。魔力探知では、魔力のあるもの全てに反応する。しかし、感じる魔力は魔物によっても若干違う。

 分かりやすいのでいえば、ドラゴンだろう。こっそりドラゴンのつのを食べたのがお兄さんにバレたのも、私からドラゴンの魔力を感じるからだった。

 ならば、他の魔物だって魔力で区別がつくはず。

 お兄さんに割れた核を1つもらって、その気配を覚える。もう死んでいるとはいえ、魔力はまだ少し残っていた。

 その感覚を頼りに、魔力探知をまた使う。

 無数にある気配の中から、今覚えたウッドスライムの魔力を探した。


にゅ!」


 見つけた!

 ダッと走り出すと、反応のあった樹まで一直線に向かった。そして、その勢いのまま樹の穴へ石礫を放つ。

 しかし、急ぎ過ぎて狙いを外したらしく、核の無事なスライムが穴からにじみ出て来た。

 幸い、スライムの動きはとても遅いものなので、むしろよく見えるようになったおかげで、しっかりと核に向かって魔法を放てた。

 半透明なジェル状の身体の中央になる核に、私の石礫が突き刺さる。核は真っ二つに割れ、身体部分は溶けてなくなった。

 身体が溶けるところは初めてみたけど、なんかちょっと可哀想だったな。


んにゃおおわり!」


 だが、討伐依頼なので仕方ないよね!

 最後の1体を仕留め、私はドヤ顔でお兄さんに振り向いた。

 苦笑しつつも核を回収したお兄さんに頭を撫でてもらい、私の初めての実戦を終えたのだ。




 冒険者ギルドに戻り、しっかりとウッドスライムの核を確認してもらい依頼は完了だ。

 ちゃんと依頼を達成できたことに、レリアーナさんからもとても褒めてもらえた。えへへ。

 依頼実績はお兄さんのものになるので、これからも頑張ろう。

 しかし、まずは反省会なのである。

 宿に戻り、夕飯を部屋で取りつつ、お兄さんから今日の評価を聞く。


「森に入る前の確認と、魔力探知は合格だ。特に魔力探知の精度は、魔法を専門にしている者と同じくらいはあると思う。範囲も申し分ない。ただ、魔力が魔物によって違うということは、もう少し早く気付ければ良かったな。そうすれば4体目を探し出すのに、あそこまで時間はかからなかっただろう。

 魔法を外しても、焦らずしっかりと核に攻撃できたのも良かった」

にゃんはい!」

「そして、最後のスライムを探知した時。すぐに見つけられたのは良いんだが、それだけにしか注意が向いていなかった。あれは危険だ。他の魔物が近くにいたり、仲間とはぐれたりする可能性もある。

 最初に説明した通り、一番大事なのは適度な緊張感を保つ集中力だ。お前は賢い。やろうと思えばできるのだろう。ならば、やらないのは悪手あくてだぞ」

にゃんはい……」

「それらをまえて、総評は……」


 ゴクリと息を呑む私に、お兄さんが真面目な顔を崩して少し笑う。


「初めての実戦としては、及第点だろう。よくやった」

「にゃーお!」

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