第2話 君との出会い。

僕は学校へ向かった。

ロックバンドの曲を聴き、足を踏み出すときとリズムを合わせるのが気持ちいい。

春は好きだ。

春になると鳥の声も聴こえるし、

春は色々な声が聴こえるから。


今日から僕は新しい人々と1年を過ごす。


その新しい人々にも様々な音がある。けど、僕の好きなロックバンドのような音の人には出会ったことがない。

きっと、ロックバンドのような音の人は僕の日常を変える人だろう。


狭い道路を歩く。自転車が横を通り過ぎる。

みんなはスマートフォン片手におしゃべりしたり、写真を撮ったりしているが、僕はイヤホンをつけ、1人で狭い道路を通り、学校の前に立っている。


学校では見知った顔がちらほらいる。僕は人の名前を覚えるのがあまり得意ではないため、顔くらいしか覚えられないのだ。


ホームルームの時間だ。

僕の隣には誰もいない。

前はここに


「ホームルームの時間だ!みんな立て!」


体育担当の僕のクラスの担任が大きな声で言った。


「…!」


僕はぼんやりと桜が舞う様子を眺めている。

外がピンク色で埋まっていて、とても綺麗…


「おい!」


僕に言っていたようだ。


「先生なにか用ですか?」


本当になんだろう。


「だから、お前の隣に新しく来たやつが座るから、学校の案内とかしてやれよって。」


ん?新しい人?


「先生。それって…」

「おーい!入ってこーい!」


人の話を聞かない。この先生はこういう所がある。

どうして僕が……。


え。


きっと僕だけじゃなかった。

あの人が入ってきた瞬間目を見開いたのは。


「じゃあ自己紹介してくれ!」


ツヤツヤの黒髪ロング。ツリ目の凛々しい顔立ち。お世辞にも可愛いとは言えない。けど、とても綺麗だった。そして僕は見つけた。ロックバンドのような音の人を。


「私の名前は河本美鈴。ロックバンドの「Rain」というバンドが好きです。」


自己紹介はたったそれだけ。けれど、彼女には何か圧倒されるものがあった。

Rainというロックバンドが好き。たったそれだけで彼女の全てを知りたくなった。


「それじゃあそこの席だから、とりあえず座ってくれ。」


担任がそう言い、彼女が机と机の間を通りながらこちらに向かってくる。歩く度に彼女から「Rain」の音が聴こえてくる。


「よろしく。」


僕はたった一言


「うん。」

それだけ交わした。


僕はその日、家に帰ったあとに日記を書いた。いつも同じような内容ばかりだったけど、今回は一言だけ書いた。


「河本美鈴さんが来た日。」


たったそれだけ書いて、日記を閉じた。

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