第54話 決勝戦の攻防



「今の一撃を耐えたとしても、何度も当たっていれば、耐えられなくなるだろう! そら! そらそらそら!」

「はっ! ふっ! くぅ! ぬあ!」

「バハムーさんの連続回転! 尻尾と連動し、次々と拳がユウヤ様に襲い掛かる!」


 先程と同じ攻撃だけど、今度は連続で何度も回転して来る。

 尻尾を避けても拳が来るし、それをなんとか身をよじって避けても、さらに尻尾が来る。

 何度かかすめた尻尾と拳……当たった部分はさすがの威力で、痛みが凄い……身体強化(極限)が無かったら、もう死んでたなぁ、これ。


「どうした! どうしたぁ!」

「いつまでも! っと! 攻撃を受けてばかりじゃいられま! せん! はぁ!」

「ぬお!?」


 連続で回転するバハムーさんの攻撃を、かすめながらもなんとか避けてるけど、このままだといつかは当たってしまい、やられてしまう……。

 そう考えた俺は、拳を避けた後、落下する俺を弾き飛ばそうと迫る尻尾に向けて、体を動かした。

 横に振られる尻尾だから、縦から当たればそんなに衝撃は無い……そのまま回転されるから、凄い遠心力が掛かるけど。

 尻尾に掴まった俺は、回転する遠心力に飛ばされないようにしがみつきながら、片手を上げ、バハムーさんの尻尾へ打ち付ける!


「ユウヤ様、バハムー様の尻尾に取り付きました! 何という無茶! 何という無謀! しかし、尻尾にしがみついたまま拳を打ち付けるユウヤ様! その力に我々は言葉を無くさざるを得ません!」


 俺が打ち付けた拳は、さすがに少しだけ柔らかそうな尻尾なだけあって、少し痛かったのか、バハムーさんが回転を止める。

 今だ!


「動きを止めたらこちらのものですよ! はぁ! せい! ふん!」

「ぬお! ぐあ! ぬぅ!」

「攻める攻める! ユウヤ様、バハムー様の動きを止めてからの連続攻撃! これにはさしものバハムー様もたまらないか!?」


 動きを止めたバハムーさんを見て、張り付いていた尻尾から離れ、すぐさまバハムーさんに向かってジャンプ。

 いつも乗せてもらっている背中に向け、拳を放ち、蹴りを放ち、さらにもう一度拳を打ち付けて離脱する。


「尻尾に取り付いたうえ、背後から攻めるとは……」

「こうでもしないと、バハムーさんが止まりそうにありませんでしたからね。まだまだ行きますよ! せい! はぁ! ふん! たぁ!」

「ぬお!? ぐぬぅ!」


 こちらを向いたバハムーさんに、再びジャンプして、今度はお腹に連続攻撃を叩き付ける。

 何度か攻撃した後、バハムーさんから離れて離脱する。

 ……手が、俺を捕まえようと動き出してたからな……危ない危ない。


「ぬぅ……ちょこまかと動きおって……」

「体の大きさが違い過ぎますからね。素早く動かないと、捕まえられたら終わりでしょ?」


 煩わしそうに話すバハムーさんに、不敵に返すが……多少の痛みは与えてるようだけど、ダメージは少なそうだな……。

 やっぱり、ドラゴンの皮膚は硬い。

 攻撃した感触がそうだったが、まるで金属を殴ってる感触だった。

 一応柔らかさもあるのだけど、金属よりも柔軟……というだけで、打ち付けてるこちらの拳が痛いくらいだ。

 ……どうしたもんか。


「しかし、それが全力か? それなら、俺を倒す事はできそうにないな……」

「それはどうですかね……?」


 拳や蹴りでは、どうにもバハムーさんにはダメージを与えられないようだ。

 多少の痛みを与えたところで、こちらの方が早く疲れてやられてしまうのは、想像に難くない。

 打ち付ける拳の方が、バハムーさんの皮膚より先に壊れてしまいそうだしな……。

 一応、考えてる事はあるんだけど、それを易々とさせてくれるバハムーさんではないだろう。


「今度はこちらからだな……ふっ!」

「させませんよ! はぁ!」

「目にも止まらぬユウヤ様の連続攻撃! しかしバハムー様にダメージは無い模様です! 今度はバハムー様の攻撃です! 足を上げ、飛び蹴りをユウヤ様へと放つバハムー様! ドラゴンがこんな動きをする事に会場中が唖然としています!」


 アナウンさんの実況通り、バハムーさんは、俺へ向かって飛び蹴りを放って来た。

 どこかのライダーも顔負けの、凄まじい威力がありそうな飛び蹴りだ。

 これに当たったら、俺の体なんて軽々弾き飛ばすだろう……下手したら骨も折れるかな?

 でも、黙ってそれを受ける俺じゃない。

 バハムーさんの足に向かって走り出すように見せかけ、途中で地面を蹴って真横に避ける。

 俺の横を通過するバハムーさんの足を、俺の足で蹴って飛び、さらに距離を離す。


「ほぉ、全て避けたか……中々やるな」

「ただ蹴りを放つだけとは、思えませんでしたからね。何とか、避けましたよ」


 バハムーさんは横に避けた俺に対し、通過する直前、尻尾を動かし叩き落とそうとする動きを見せた。

 何かが来ると予想したからこそ、バハムーさんの足を蹴って大きく避けたため、尻尾は空振りしてくれた。

 蹴りを避けるだけで安心してたら、危なかったなぁ……。


「バハムー様、飛び蹴りだけでなく、尻尾も使う二段攻撃! しかしそれをユウヤ様は、バハムー様の体を蹴る事で距離を離し、華麗に躱して見せました!」

「今度はこちらから行きます……よ! はぁ!」

「むぅ! ぬぁ! ちょこまか……と!」

「当たりませんよ!」


 今度はバハムーさんの足に向かって、地を這うように走って攻撃。

 何度か拳や蹴りを浴びせて、上から俺を止めようとバハムーさんが腕を振り下ろす前に、足を蹴って距離を離す。

 ヒットアンドアウェイを繰り返さないと、捕まえられたらそれで終わりだからなぁ……。


「足くらいしか攻撃して来ないのか? それだと、いつまで経っても俺を倒せないぞ? ふん!」

「まぁ、そうでしょうね……おっと! そい!」


 再びやって来た回転尻尾攻撃を、ジャンプして避けつつ、着地してバハムーさんに向かい、左足に蹴りを入れて離脱する。

 一か八かだけど、痛みを与えてる実感はあるから、これに賭けるしかないか……痛そうだからやりたくはないんだけどなぁ。


「ユウヤ様、バハムー様を相手にヒットアンドアウェイを繰り返す! しかし、対するバハムー様は痛みを感じてはいるものの、依然ダメージは少ない様子! ユウヤ様は一体どうするのでしょうか! やはり素手でバハムー様を倒すのは無理なのかぁ!?」


 アナウンさんの実況を聞き流しながら、バハムーさんの攻撃を避け、幾度も足を攻撃しては離脱を繰り返す。

 近くにいたら、尻尾もよけづらいし、万が一にも掴まるわけにはいかないからだ。


「ちょこまかとしているが、そろそろ息が上がって来ているでは無いか?」

「はぁ……はぁ……まぁ、少し疲れただけです……よ! はぁ! せい!」

「ふん、また足か……多少の痛みはあるが、わかっていればどうということは無い!」


 バハムーさんが攻撃を緩めている間に、再び足を狙って拳や蹴りを打ち付ける。

 すぐにまた離脱して、少しだけ距離を取る。

 ……もうそろそろ、だと思うんだけど……さすがに息切れが辛いな。


「はぁ……はぁ……」

「武器でもあれば違ったのだろうがな……残念だが、今回は俺の勝ちだ! ふん!」

「くっ! はぁ! てや! せいせいせい! ……はぁ……はぁ」

「しぶとい奴だ、さすがは俺が認めた人間ってところか……」

「四天王でドラゴンのバハムーさんに認められるなら、光栄ですよ……はぁ……はぁ……」


 右足を軸にして、左回転の尻尾攻撃を仕掛けるバハムーさん。

 まだ我慢の時だと、酸素を求める体を動かし、尻尾と拳を避けた後、すぐに足に向かって突進。

 何度も連続攻撃を叩き込み、バハムーさんが動こうとしたらすぐに離脱。

 同じ事を何度も繰り返してるが、そろそろまずいかもな……。


「そろそろ動きも鈍って来たか? これでどうだ! はぁぁぁぁ!」

「……まだこれじゃない!」


 続いてバハムーさんが、また左回転を始める。

 今度は単発では無く連続回転で、そろそろ俺に攻撃を当てて終わらせるつもりのようだ。

 さすがに危ないが、これを何とかしのがないとな……。



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