第3話 ガブり

吾輩は猫である。

名前はタマなり。

吾輩は師を待っておる。

師は偉大なり。


吾輩がボス猫に襲われると助けてくれる。

吾輩が餌に困っていると分けてくれる。

吾輩に色々なことを教えてくれる。


師こそ最高のネコである。

私もいつか、師のような大きくて、強い猫に…。


「無理だろ」

「にゃっ!?」

突然の声に驚いてしまったがその雄々しく、威厳に満ち溢れた声こそ正しく師のものだった。


「ししょー!人が詩を詠んでいる最中にツッコまないでほしいにゃ!

てかどうしてひとの夢を否定するのにゃ!ししょーにだって夢を見ていた時期はあったはずにゃ!同じネコなら可能性はあるにゃ!!」


「いや、私ネコ科だけどライオンだし。お前らイエネコとは骨格からして違うし」

いや、まぁそうにゃんだけど。

「それでもなりたいんだにゃ!!てか猫ってライオンの劣化版じゃにゃいか!ズルイぞ!」

なんか八つ当たりをしていた。

イエネコおまえらは木に登れるだろ。ライオンわたしたちなんて陸を走り回ってるだけだぜ?飽きるったらありゃしない」

「あー!あー!贅沢な悩みだにゃー!!

強者だからそんなこと言えるんだにゃー!!」

「うるせぇ。オスの癖に文句言うな。ガブるぞ」

牙をシャッ!と見せつけ、ししょーは僕を威嚇する。プレッシャーを感じてしまい、

文字通り借りてきた猫のように僕は身を縮める。

「よし。じゃあ鍛錬行くぞ。ライオンらしくなりたいならひと一倍鍛錬あるのみ」

「いえっさー!!今日はどこ行くにゃ?森?川?それとも畑荒らすにゃ?」

「他人様に迷惑をかけんじゃねぇ。そうだな。野ウサギと競争でもするか」

「相変わらず非暴力主義だにゃー」

「うるせぇ。行くぞ」

「にゃー!」

ちょっと変わったライオンだけれど。

僕はそんな貴方が大好きです。




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