ゲームと甘い物
「八六九ちゃんすごい!」
「まさか初めてやった八六九さんに負けるとは」
「ゲームていろんなのあるんだね」
俺が獅子神と勝負してたゲームは、銃でゾンビを倒すゲームだった。一番高いスコアを出したほうが勝ち。という勝負を挑まれて見事に勝利した。
これでも本物撃ったことあるし、鉱石獣との戦いで動体視力は鍛えられてるからな。こういうのは得意だ。
「八六九ちゃんって体動かすゲームは得意なんだね」
「悔しいー! 次のゲームよ! 音ゲーコーナーに行きましょう!」
次に連れていかれたのは、色々な音楽が混ざって聞こえてなんかよくわかんないところだった。
「ここにあるのは音楽ゲームて言って、リズムに合わせてボタンを押すっていうゲームが多いのよ」
「私と獅子神ちゃんとでやって見せるから、八六九ちゃんは後ろから見ててね」
二人は機械の前に立って、ゲームを始めた。あ、なんか勝負することになってる。聞き取りにくいけど奢るとかなんとか言ってるな。
ゲームが始まると二人の腕が上下左右、円形のボタンをとにかく押していた。画面にも何回か触ったりもして、忙しないゲームだってことが分かった。
ゲームを終えた二人は、ちょっと汗ばんでいるみたいだった。ハンカチで汗吹いたり手で仰いでるみたいだったから。勝負のほうは、上月さんが勝ったみたいだった。獅子神さんがうなだれていたから間違いないだろう。
「こんな感じなんだけど、わかったかな?」
「なんとなく?」
「お手並み拝見ですよ、八六九ちゃん」
獅子神さんにお手並み拝見といわれた以上やらないとだめだよな。
「リズムに乗ってやるとうまくやれるよ、八六九ちゃん」
「ありがと上月さん」
えっと百円入れてと。曲選ばないといけないのか、曲のことなんてよくわからんしランダムっと。難易度は簡単でいいよな。そして上月さんに言われたように、リズムに乗ってやってみようと始めたがすごく難しい! まずリズムに乗るってどうやるのかわかんないんだけど、どうすればいいんだこれ! ミスが続いて点数は全然伸びないし、もう曲が半分まで来ちゃったぞ。 リズムとかわからん! とにかくこの図形が重なった時にボタン押せばいいんだろ、俺の動体視力をなめるなよ!
音ゲー無理……。 俺の動体視力をもってしても勝てなかったよ……
「八六九ちゃん元気出して、ね?」
「八六九さんにリズム感覚がないとは驚きました。これなら私も勝てる!」
別にリズム感覚がなくても生きていけるし。そう、別に歌が歌えないわけじゃないからいいんだよ。
「八六九ちゃん、あとどれくらいいれそう?」
スマホで時間を見たらもう五時になっていた。七時には安全圏についていたいから、遊べるのは六時までだな。
「六時までかな」
「もう一時間しかないわね。ちょうど小腹もすいてきたことだし、美味しいもの食べてかえりましょうよ」
「じゃあさっきの勝負に勝ったから、甘いの奢って頂戴穂火ちゃん」
奢るって甘いもののことだったわけか。
「それじゃあ、ミセスドーナツにしましょうか」
獅子神さんの後をついて行ってるけど、ミセスドーナツってなんだろ。甘いものが食べれるんだろうけど、甘い物自体あんまり知らないからな。
「さあ付きましたよ八六九さん。ここがミセスドーナツです」
お店の中からは優しい甘い匂いが香ってきて、ケモ鼻がすごく反応する! やばいすごく食べたいんだけど、いい匂いがいろいろしてよだれが。
「八六九ちゃん涎たれそうだよ?」
「わっ」
「八六九さんは席取っておいてくださいよ、私のおススメのドーナツ持っていきますから」
「あ、お金」
「私たちが払うから気にしないで八六九ちゃん。今日は八六九ちゃんに美味しいの食べてほしいの」
なんていい子なんだ上月さん! それに獅子神さん! いつか二人に恩返ししないといけないな。さて開いている席はここか、あー甘い香りだけでお腹がすく。てかお腹鳴りそう。
「お待たせしました! さあ食べていいですよ八六九さん」
獅子神さんの持ってきたトレイには真ん中がくりぬかれた輪っかの物が乗っていた。これがドーナツ、近くだともっといい香りが!!
帽子の中でケモ耳がピーンって立って、服の中で尻尾が暴れる!
「いただきます!」
うまーい! 甘くてしっとりしてて、美味しい。こっちのはココアの味の後にチョコの味がして、幸せだ。これはぜひともお土産に買っていかないと。気づいたらトレイの上のドーナツは消えていた。ドーナツというお菓子は癖になる!また食べよう絶対に。
「美味しかったですか八六九さん」
「うん! お土産に買って帰れるかな」
「持ち帰りもできますよ」
よし! 玖羽と紫焔に買っていこう。あ、須摩さんにも買ってくか。これから面倒見てもらうからな。
「そういえば、八六九ちゃんって安全圏から来てるんだよね?」
「うん、バイクで玲蒼まで……」
うん? あのバイクに物を積む場所あったっかな。思い出せ俺、前には籠はなかった、後ろはあるな。荷物積むところが。でも—―
俺はレジでドーナツを持ち帰っている人を見る。店員から受けっとってるのは紙でできた箱。たぶんあの中にドーナツが入ってる。あれは、バイクの後ろに付くのか? いや、そもそも固定する紐がないから持って帰れないじゃん!まじか……いやあきらめないぞ! 明日から箱と紐をもってこよう。そうすれば持って帰れるはずだ。
「何かあった八六九さん?」
「いや何でもないよ」
ドーナツを二人と食べた後、途中までは一緒のバスに乗って帰った。
「今日はありがとう」
「気にしないで私たちが好きでやったことだから。ね、上月ちゃん」
「うん。それじゃあまた明日ね八六九ちゃん」
「八六九さんまた明日! バイバイー!」
「バイバイ二人とも」
バスで検問所に戻って、それからバイクで安全圏に帰る。これから毎日この街に来ると思うと、何とも不思議な感じがする。
予定どうり七時に安全圏に付いた俺は、玖羽と紫焔を迎えに警察署に向かった。
「須摩さん戻りました、あり」
扉を開けて須摩さんに声をかけると、須摩さんは口元に人差し指をもっていった。これが意味することは静かにしろということだ。静かに須摩さんの所まで行き小声で話す。
「あの、二人は?」
「向こうで寝ているよ。それでどうだったんだい初めて街にいった感想は」
「安全圏とは全く違いましたね。建物も生活も」
「それはそうだろうね。安全圏は生活に必要最低限のものがそろっただけ場所だからね。反応のほうは何かあったかい?」
「物珍しいって感じでしたね、ちゃんとしたことはもう少し時間がたたないと」
「うーん、そうか。はいお茶、それで仲良くなった友達のほうは?」
「ありがとうございます。普通でしたよ。でも習ったことと違うとか言ってましたね」
入れてもらったお茶が身に染みる。バイク乗ってると寒いんだよな。あー美味しい。
「習ったことと違う? 何がどう違うんだい?」
「話しをしてる間に安全圏での生活のことになって。それで感染者はちゃんとした街に住んでるって習ったらしいです。仲良くなった子たちは」
「ちゃんとした街か。一応安全圏は街という扱いになっているから、すべてが違うというわけではないね。ちゃんとしたという部分は疑わざる負えないけどね」
「すべての知識が正しいとは限らないみたいですね」
「まあ、仕方のないことなんだろうね。上は上でいろいろあるんじゃないかな。それじゃあ、何かあったら報告してくれ」
「はい」
寝てる玖羽をおんぶして、紫焔を抱っこして帰ろうとすると須摩さんからファイルを渡された。玖羽と紫焔のデータらしい。帰ったら見ることにして、家に帰った。
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