初めての街と自己紹介とそして

「ようこそ玲蒼れいそうの街へ」


 そう言って検問所の職員は出迎えてくれた。


「安全圏から来た方ですね。通行証とタグを拝見してもよろしいですか? 」

「はい、これです」

「ありがとうございます。八六九燈火さんですね、確認が取れました。街中にウィシュリーの原石を持ち込まないために鉱石が付着してないか検査をうけてください」

「わかりました」


 安全圏から出るときに、ウィシュリー鉱石が付いてるか検査しなかったけどよかったのか? 

 最初にあった職員とは別の、防護服来た人に金属探知機で調べられてそのまま街に入った。

 安全圏から乗ってきたバイクは検問所のほうで預かってくれるらしい。

 帰りはそのままここでバイクを受け取って帰ればいいそうだ。

 街に入ったはいいものの、どうやって学校行けばいいの? こういうのって、案内とか付くものじゃん。

 周りにそれらしい人いないし、自力で行かないとだめ?

 須摩さんにもらった学校の情報に場所とか載ってたかなぁ……

 学校の名前が玲蒼第二高校でクラスが二年Bクラスなんだよな。で場所とか書いてたり……しない。

 嘘だ! どこかにきっと書いてあるはず!

 ――書いてなかったどこにも。どうすんのこれ?学校に行くことすらできないんだけど。


 あっ須摩さんに電話すればいいのか。

 なぜ最初から電話をしなかったのか少し前の俺に問いただしたいな。


「須摩さん、学校までどうやって行けばいいんですか?」

「どうやってってきみ、電車なりバスなり使えばいいじゃないか」

「いや、それはわかるんですけど。学校の場所わからないんで、何に乗ればいいかもわかんないんですよ」

「あーきみはスマホ普段何に使ってるんだい?」

「須摩さんに連絡したりとか時間確認したりとかですけど」

「きみにはスマホの使い方から教えないといけないみたいだね」


 電話越しに須摩さんからスマホの使い方を教えてもらい、早速地図アプリを使うことになった。

 確かこの上の四角に学校の名前を入れるんだよな。それで次が経路ってところを押すと――

 おお! ここから学校までの道が出たぞ、しかも何に乗ればいいかもついてるし。

 スマホって便利なんだなー。安全圏にいると道に迷ったりしないから使わないんだよな。

 大体地図見れば場所わかるし。

 そういえば須摩さんが、ナビに頼ると迷うから地図見て行けって言われたな。えっとこっち行けばいいのか。


                  

                  ◆◆◆



 とりあえず歩いてバス停まで来た。耳とか尻尾は帽子とか制服で隠してるが、ちょっと視線を感じるな。

 やっぱり金髪は目立つよなー。しかも同じような制服着てる子もいるし、気まずい。

 着いたわー。そしてバスから降りたら降りたで、めっちゃ見られる。

 たしか着いたら職員室行けばいいんだよな、早くいこう。

 こっちが職員玄関でいいんだよな?とりあえず事務室って書いてあるし、話しかけるか。


「すいません」

「はい、えっとどうしたの?」


 出てきたのは女の事務員さんだった。


「お―—私今日ここに来るように言われた、八六九燈火というんですが」


 あぶねー、俺今女の子だった。俺とか言ったら絶対怪しまれる。


「ああ、転校生の子ね。今担任の先生呼んでくるわね。そういえば鉱石病になったのよね?人外変化の子って聞いてたんだけど」


 耳とか尻尾出したほういいか。帽子を脱いで隠していた尻尾を出す。


「はいそうです。来るときは隠してたんで」

「まあ、綺麗ね。それじゃ少し待っててね」


 事務員さんはそのまま職員室らしき場所に入って行って、女の人と出てきた。あの人が俺の担任。


「あなたが八六九燈火さんね。担任の高階たかしな亜梨沙りあさて言います。よろしく」

「八六九燈火です、よろしくお願いします」

「これあなたの生徒手帳ね。中に学生証も入ってるからなくさないように」

「はい」

「それじゃあついてきて。ホームルームっ中にあなたのこと紹介するから、自己紹介お願いね」


 自己紹介あるなんて聞いてないんですけど須摩さん!

 やばいなんて話せばいいんだ、とりあえず名前だろ、年齢だろ、趣味はそもそもないし他には――


「それじゃここでまっててね」


 考えてるうちに教室のまで来ちゃったし! ええい! 名前と年齢だけでいいや、あとは聞かれたら答えよう。うん。


「入ってきてー」


 よし!行くぞ。

 教室に一歩足を踏みいれたとたん、わー! という声に耳がキーンとなったがどうにか教卓の前にこれた。

 そして教室にいる人全員から注目されながら、俺は自己紹介を始めた。


「安全圏から来ました、八六九燈火と言います。文字はこう書きます。歳は十七歳ですよろしくお願いします」


 黒板に名前を書いて、歳も言ったし完璧なはずだ!


「質問とか休み時間にするように、席は一番左の列の後ろだから」

「はい」


 よし、慌てず落ち着いて席まで行こう。


「それじゃあ、これでホームルームを終わる。次の授業の準備忘れるないようにー」

「ありがとうございました」

『ありがとうございました』


 よしこれで――


「ねえねえ八六九さんて――」


 ――安心どころか一番大変なのが待ってた!?

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