初仕事なんだけど?

「さて特殊捜査課復帰おめでとう。そして初仕事を与えよう」


 双子を保護した次の日。俺はその双子を連れて警察署特殊捜査課に来ていた。


「それはいいですけど、こいつらのことお願いしますよ?」

「わかっているとも。まかせたまえ。それで名前なんて言うんだい子の子たち?」

「それが聞いても、わからないっていうんですよ」

「名前ないのかい?それは不便だね~。よし、こっちの鉱石変化の子が玖羽くう。人外変化の子が紫焔しえんでどうだろうか」

「くう?」

「しえん?」

「お前たちがそれでいいなら、いいけどどうする?」

「くうはくう」

「しえんはしえん」


 気に入ったみたいだな。お互いに名前呼び合ってるし。


「あっちにお菓子あるから食べているといいよ」

「「おかし食べる」


 玖羽と紫焔は走ってお菓子のあるテーブルに向かっていった。


「食べ物のことになると動きが早いなほんと」

「いいことじゃないか。食べる子と寝る子は育つんだから。さて、君にお願いしたい任務のことを話す前に。燈花くんは安全圏の封鎖が解除されることを知っているかい?」


 須摩さんは楽しそうに聞いてきた。


「封鎖が解除されるって、そんな話初耳ですけどそれ本当なんですか?」

「本当さ。政府は安全圏の封鎖を解除して感染者が街に出れるようにするらしい」

「そんなことして大丈夫なんですか?俺達感染者は迫害されてるんですよ」

「世論ていうものは移ろいゆくものでね、数年前から感染者を迫害する風潮が薄れて行ったんだ。そもそもの迫害の理由が、感染者に関わったら鉱石病になると思われていたからだしね。感染者に触れても鉱石病にはならないという、正しい知識が浸透したのさ」


 街に出ても迫害されることは無い。それは感染者にとって嬉しいことだが、急に言われたって俺達感染者は受け入れられない。

 感染者の中には政府だけじゃない、人間そのものを恨んでる奴らもいる。そいつらが町に出ようものなら大惨事だ。


「人間そのものを恨んでる人間が街に出てしまうことはないんですか?」

「それなら大丈夫だと思うよ。街に出るには通行証が必要なんだ。その通行証はここ警察で発行される。審査の段階で弾かれるよ」

「そうなんですか、それで任務ってこれに関係してるんですよね」

「うん。燈火くんには封鎖解除前のテスターになってほしい」

「テスターってことは、俺が街に行ってどんな反応されるか見てくるんですか?」

「そういうこと。警官の君なら信頼できるし、何かあっても対応できるだろう?」


 なんか、結構重要なことじゃねこれ。俺がへましたら封鎖解除自体無くなるかもしれないわけだよな。


「俺なんかでいいんでですか?もっと適任がいると思うんですけど」

「きみじゃないとダメなんだよね。はいこれ」

「なんですかこの包み」

「開けてみればわかるさ」


 手渡された包みを開けると、服が出てきた。

 着たことはないし、俺が着ることはないと思っていたんだが。

 これ制服だよなたぶん? でも俺の知ってる制服なら男がスカート着ることはないはずなんだけどな。


「これ制服ですよね。しかも女子用」

「そうだとも、きみにはその制服を着て一定期間学校に行ってもらいたいんだよ。大人数のいる学校ならいいデータ取れるからさ」

「俺じゃないとダメな理由って」

「きみ以外に学校いける年齢の警官いなくてねー」

「まあ、理由のほうはいいとして。どうして女子の制服なんですかね、女装しろと!?男子用の制服下さいよ!」

「それしかないんだよね。それにもう女子で登録しちゃったっ」

「……登録ってなんの?」

「通行証!」

「はあっ?!」

「だからあきらめてそれ着なさい。大丈夫きみは人外変化すれば女の子になれるだろう?」


 人外変化すれば女の子になれるなんて本当ならバカげてるといいたいが、俺の場合事実なんだよなぁ……。

 俺は鉱石変化と人外変化の両方の症状が出てる。

 鉱石変化のほうは、手足の鉱石化。人外変化は狐の耳と尻尾が付いた。

 そして普段の俺はどちらの症状も出ていない普通の人間の見た目だ。

 人外変化を意識すれば尻尾と耳が生えてくるし、手足の鉱石化を意識すればそうなる。なんでかはわからん。

 そして女の子になるってのは、人外変化して耳と尻尾が生えると体も女の子になるてことなんだ。

 俺が一番理解できないし、なんでか聞きたいが理由は全くわかってない。

 人外変化ってのは本来他種族の特徴、つまりは動物の特徴が出るだけで普通は性別まで変わらないんだよな。


「わかりましたよ、わかりました!」

「うん、じゃあ衝立のむこうで着替えてくれ」

「え?」

「聞こえなかったかい?サイズあってるか確認したいから着替えてくれ」

「いや、聞こえましたけど。まじで?」

「べつに着替えなくてもいいよ?制服が小さくてぴちぴちになっってもいいなら」

「着替えてくればいいんでしょ!着替えれば」


 制服に着替えて、鏡の前に立った俺は震えた。羞恥心で!

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