6話

さとり「あと、ちょっと、…あああ!負けたぁ~(><)」


零「お前、ゲーム弱いな」


さとり「うるさい!」


博音「初めてやったが、割りと上手くできたな。」


零「初めての奴に負けてんじゃねぇか。」


さとり「うう、だって~(泣)」



現在、3人はさとりの家でゲーム中。

「青春とゲームは紙一重!」と言う訳のわからないさとりに強制参加させられた。

そして、当の本人は最下位である。



さとり「何で2人ともそんなに上手なのさー!」


博音「フッ、俺は前世大魔王「ルイン」。これくらいは朝飯前だ。」


零「弟と良くやってるからな。」


さとり「…上手になる方法とか無い?」


零「まあ慣れだな、慣れ。」


さとり「そんなぁ~!!」



あからさまにガーンと落ち込みながら、さとりは部屋の隅で卑屈になってキノコを生やしている。


零「掃除が面倒だからキノコ生やすな」


さとり「…」ズーン


博音「個人差がある「エナリー」も落ち込まなくてもいいと思うぞ。」


さとり「博音くん…あとさとりだよ。て言うかエナリーって誰。」


博音「さとりは忘れてしまったかもしれないが、前世での名だ。俺と運命の契りを交わし…。」


さとり「へぇ…じゃあ、今世ではどうなの?」


博音「え、それは幼馴染みで…」


さとり「本当に?」


博音「えっと、さとりさァん?」




ニヤニヤと笑いながら、さとりは博音のネクタイを軽く引っ張って顔を近づける。

その顔は、まるでオモチャを見つけた子供のようだ。



零「それくらいにしていてやれ。」



その様子を見ていた零が、さとりに制止を言い渡した。



さとり「はいはい。」


零「て言うか、お前やること無いのかよ。夏休みだからって毎日のように俺たちと遊び合って…。」


さとり「うん、無い。」


零「即答かよ!」


さとり「別に遊びたくないなら零は無理に来なくてもいいよー。私博音くんと遊ぶから。」


零「べ、別に遊びたくねぇ訳じゃねぇよ…。」


さとり「じゃあ何なの?」



怪訝そうにさとりはその整った眉を歪めた。


零「少しくらい、警戒しろよ。」


博音「ああ。」


さとり「警戒?」


零「仮にも、男二人と一緒なんだから警戒心持てってことだよ。」


さとり「2人は"ただの"幼馴染みだよー。警戒心も何も無いよ。」


2人「はぁ…。」


さとり「二人して酷い!なんで溜め息吐くのさ!ホントのこと言っただけなのにィ!」



「私凄い傷ついた!」と言うさとりを横目に、2人は顔を見合わせて笑った。


さとり「え、何々?どーしたの?。」


零「何でもねぇよ。強いて言うなら男同士の話だ。」


さとり「男同士、ねぇ…。」



ジトーッとした瞳で、2人を見つめるさとり。

だが、その瞳に悪意はなく、優しさに満ちていた。


博音「さあ、今再び悪魔と天使の禁断の戯れを始めよう。」

(訳:またゲーム再開しよう。)


さとり「んー、そうだね。次はトランプにしよう?神経衰弱とか、ババ抜きなら私得意!」


零「俺もいいぜ。さっきみたいに泣かせてやるよ。」


さとり「え、そういう趣味…?。」


零「違っげぇよ!そう言う意味で言ったんじゃ無ぇ!言葉の綾だわ!」


零の言葉にドン引きするさとり。

そしてそれを訂正しようとする零。

2人の様子を見ていた博音が、静かに久地を開いた。


博音「俺、一人だけ空気だな。」


2人「「あ…。」」


さとり「ごめん博音くん!。そんなつもりは一ミリも無かったんだよー!」


零「悪りぃ…。」


2人は、博音に綺麗な土下座をかました。


博音「否、別に起こってる訳じゃない。」


さとり「ホント?良かったー。」


零「じゃ、ゲーム再開すっか。」


さとり「おー!。」



そのまま、3人で日が暮れるまでトランプをした。勝負は十回。さとり5勝、博音4勝、零1勝と言う結果になった。



零「お前ら、化け物かよ…。」


さとり「失礼だなー。」


博音「トランプは意外に頭を使うからな。相手の表情を見たり、手元のカードから相手の持つカードを推測したり、神経衰弱は如何に場所を覚えられるかが重要になってくるしな。」


零「もっと気楽にやれよ…。」


さとり「あ、2人とも時間大丈夫?。日も暮れて来たけど…。」


博音「そろそろ失礼する。」


零「俺も母さんに怒られる。」


さとり「そっかぁ…。じゃあまたね~。」


2人「「ああ。」」


さとり「♪」


博音「さとり。」


さとり「?どしたの博音くん。」


博音「警戒心は、持った方がいい。じゃないと。」


さとり「え。」



博音は、さとりを壁に追い込む。

そして、両腕を上で纏めて掴んだ。



さとり「ひろね、くん…?。」


博音「あ、嫌…。何でもない、またな。」


さとり「うん、バイバイ。」



2人の様子を、夕日だけが優しく照らした。

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