7話(混合side)

(さとりの話)

2人が帰ったあと、私は1人ベッドに倒れこんだ。


"警戒心"その言葉が心に残って…。


2人に、どうやって警戒心を持てって言うのさ。


さとり「幼馴染みに、警戒心を持つ必要なんて…。」


"無い"と言いたいのに、彼らの言葉が心に残って、言えない。


さとり「それより…。」


水族館に言ったとき、トクンと鳴った、あの感情は何なのか。


思い当たるような言葉がない。


何か、病気…?。


否、体調管理はしっかりしてる筈だから平気。


だとしたら、一体…。


2人の笑顔を思い浮かべると、心臓がキュッと苦しくなった。


2人は、ただの幼馴染み。


零は、カッコ良くて、でもビビりで。

女の子に、笑われてたなぁ。


博音は、カッコ良くて、女の子にもモテて、厨二病が炸裂してたなぁ…。


2人は、好きな人とかできたのかなー?


最近益々カッコ良くなってたなぁ。


何だか、嫌だなァ…。


?嫌……?。


私が、口出しすることじゃない、よ。



一体、この感情は……?。






(零の話)

"警戒心を持て"。


そんなこと言っても、彼奴は聞かないだろうなって知っていた。


それでも、少しでも持ってほしかった。


幼馴染み関係を壊したくない。


でも、好きが溢れて壊れそうだ。


好きだと言えば、確実に元には戻れなくなる。


博音とも、喋れなくなる可能性が高い。


3人の関係が崩れるのは、俺の身勝手で崩すことになるなら、このままでいよう。


さとりを好きになったのは、7歳の時だった。


1人公園で遊んでいる姿を見て、綺麗だと思った。


風に靡くサラサラの髪。


左右色違いの宝石のようなオッドアイ。


透き通るように白い肌。


今思えば、一目惚れだったのだと思う。


俺に気づいた彼奴は、笑って声を掛けてくれた。


「一緒に遊ぼー?」その一言だけで、俺を確実に恋に落とさせるのは、簡単だった。


好きなんだ。


好きすぎで、壊れちまいそうなくらい愛してる。


伝えたら、きっと前みたいに笑ってくれなくなるだろうから。


もう1人の幼馴染みである博音は、俺よりずっとカッコいいから。


俺が告白しても、お前はきっと博音を選ぶだろう。


お前の幸せを、見守ってる。


ただ、今だけ伝えさせてほしい。


零「好きだ、好きすぎで壊れそうなほど、愛して愛して、愛しすぎてる。」


自分しか知らない告白をして、俺はそのまま襲ってきた睡魔に身を委ねた。






(博音side)

俺には、大切な幼馴染みが2人いる。


2人ことは大好きで、1人は恋愛感情として。


俺は、さとりが好きだ。


初めて会ったとき、あまり話してくれなかったから、嫌われたのかと思ってた。


でも、


「人、苦手。でも、君なら仲良くなれそう。」


そう言ってくれたから、俺はさとりを好きになった。


伝えるのが怖い。


いつもみたいに喋れなくなるのが辛い。


でも、伝えなくても苦しい。


もう1人の幼馴染みである零もさとりが好きだ。


俺が告白しても、彼奴は、きっと零を選ぶだろう。


なら、お前の幸せを願ってる。


俺が、我慢すればいい。


でも、彼奴に触れた感触が残ってて。


サラサラの髪、柔らかな肌。


ただ、警戒心を持ってほしいだけだった筈なのに。


「ひろね、くん?」


彼女の言葉が、頭に響く。


ああ、いっそ忘れてしまえたら。


この感情に、蓋をしてしまえたら。


どんなに楽だったのだろうか。


お前に伝える勇気も、忘れることもできないから。


今だけ、今だけでいいから言わせてほしい。


博音「好きだ、好きで好きで堪らないくらい。

狂いそうなほど、愛してる。」



彼女に伝わる筈がないのにと、自分を嗤いながら眠りについた。

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