4話(さとりside)

さとり「んー、此処何処」



蓬莱さとり、お手洗いから出ただけなのに道に迷いました。


どうしよ、スマホ…。


さとり「あ、2人の所に置いてきた。」


ヤバい、連絡手段がない。

どうすれば…人に話しかけるのは苦手だし、当てずっぽうに行こうにも更に迷ったら二度と戻れないかも……。


さとり「あはは、バカみたい。」


いつもこう。

2人に、零と博音に迷惑ばっかりかけて。

すぐに道に迷って、人が苦手で、怪我して、泣いて。

いい所なんて、一つも見つからない。

悪い所ばっかりで、何もできない要らない子。



母「本当に、出来の悪い子。」


ごめんなさい、お母様


父「誰にも似ない…気味が悪い。」


ごめんなさい、お父様


「何で、生まれてきたの?」


「どうしてこんな簡単な事も出来ないの!」


「失敗作、要らないわ」


「出来損ない」


「貴女なんて産まなきゃよかった」


「いらない存在」


「役立たず」


「つまらない」


「うんざり」


だから、頑張ったよ…?

何でも、出来るようになったよ…。

完璧な、人に…。


「化け物」


「人間味がない」


「恐ろしい」


「忌み子」


出来なくても、出来てもだめなの?。


なら、私はどうすればいいの…?。



男性1「お、超絶可愛い子発見~」


男性2「マジじゃん。かーわい」


さとり「え、嫌あの…。」


どうしよう、面倒な人に絡まれた。


男性1「俺ら2人なんだけど、君は1人?一緒に遊ばない?」


さとり「いえ、連れがいるので。」


男性2「男?女の子なら寧ろ大歓迎!その子も一緒に遊ぼうぜ。」


さとり「いえ、男の子、です。」


そう言うと、男性二人の顔が曇る。


男性2「男か~…なら約束すっぽかして俺たちと遊ばね?」


男性1「俺たちの方が楽しませる自信あるよ?」


何、言ってるの…この人たち。


さとり「いえ、流石にすっぽかすのは一寸…。

相手にも悪いですし、私も罪悪感が湧くので。

では、失礼しま」


男性1「嫌々、今さら無理とかないっしょ。」


男性2「こんなとこに1人で居るんだし、どうせ適当に遊ぼうとか思ってたんだろ?だったら俺たちでいいじゃん。」


さとり「ホントに、知り合いが待ってるんです!離して、ください!」



男性1「足震えちゃってるよー?子鹿みてぇ(笑)」


男性2「大人しくしてくれたらさぁ、痛くしねぇから」


さとり「嫌ッ!」



誰か、零、博音、助けて…!



零「手、離せよ。」



聞き慣れた、落ち着く声。

私は知ってる、きっと、一番よく知ってる。



如月、零。


さとり「零!」


男性2「誰だこいつ?」


男性1「あ?」


零「ヒッ,嫌、そいつは俺の連れだから。その手、は、離せよ…」


男性1「何だ?俺たちと張り合おうってのかよ?」


零「は、張り合おうって訳じゃ…。さとり、そいつは俺のモノなんだよ!」


博音「零の言う通りだ、そこの女子を返してもらおう。」



零と同じ、聞きなれた声。



伊集院、博音。



さとり「博音、くん。」


何で、分かったの?

どうして、助けてくれるの。

私、お荷物にしかならないのに。


男性1「てめぇ、調子乗ってんじゃ」


博音「良いのか?手を出して。見たところ20は言ってるな。大学生くらいか。俺たち未成年に手を出せば警察にお世話になることになるぞ?。それでもいいなら、ほら、殴れよ。」



相手を煽るように博音は笑う。

その笑顔に、背中に冷たいものを感じた。


男性1「チッ、しけた。帰んぞ」


男性2「ああ。」



男性二人が見えなくなったのを見送って、私はへにゃりと床に座り込んでしまった。



さとり「知らない人、怖、かった。」


震える中、やっと口に出せたのはそれだけ。

自分でもわかるくらい顔が真っ青になって、唇を噛み締める。


さとり「ごめん、スマホ置いてっちゃったから…連絡とれなかった。ホントに、ごめんなさい。」



博音「別に気にしていない。」


さとり「え?」


零「別に怒ってねぇよ。て言うかすげぇ心配したわ。」



2人は、そう言いながら私の頭に手を置いた。


さとり「怒って、ない?ホントに?」


博音「ああ。」


零「怒ってねぇけど、気を付けろよ?」


さとり「うん」



ほら、と差し出された手に掴まってようやく立ち上がる。


零「土産見に行くんだろ?」


さとり「うん!」


博音「では参ろう。癒しのエデンへと。」

(訳:じゃ、土産見に行くか。)


笑う二人に、トクンと心臓が高鳴る。

何だろう、凄く、苦しい。


そんな、訳のわからない感情に蓋をして、

私は2人の手を強く握りしめた。


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