第5話 2人と1部屋
宿に着いた俺達は建物の中に入りテーブルを拭いて居た女性に声を掛けた。
「すいません、何日か泊まりたいんですが」
「あら、いらっしゃい。リズの宿へようこそ」
「2人なんだけど空いてますか?」
「あら、ごめんなさいね…同室で良ければ1部屋だけ空いてるんだけど」
1部屋って事は沙紀と一緒って事になるのか。
「沙紀、違う宿屋にするか?」
「えっ、あたしは拓真と同じ部屋でもいいよっ!って言うより寧ろその方がいい!」
「へ?」
まさか一緒で良いと言われるとは思わなかった。
「いや、俺男だぞ?」
「知ってるよ!何を今更」
「変な気を起こすかも知れないぞ?」
「拓真ならイイよっ!」
「だろ!そんなの困るだ………えっ!? 今なんて?」
「拓真ならイイよって言ったの」
沙紀の顔が真っ赤になっていた。
「いやいや、えっ、ちょっと…いや待って…」
完全に動揺していた。
「あらあら、若いっていいですね…フフッ でも続きはお部屋でして下さいね」
「えっ、いや、続きも何も…」
「はい、これが部屋の鍵ね。お部屋は2階の一番奥の突き当りの10よ。1泊150Rで退室時に精算して下さいね」
沙紀に引っ張られ2階へと上がり、借りた部屋の前に着いた。
「ホントに良かったのか沙紀?」
「拓真はあたしと同じ部屋じゃ嫌?」
「嫌って事はないが…」
「あたしは拓真と一緒に居たいのっ!」
「沙紀がいいなら俺も構わないが…」
「鍵開けて拓真」
俺は部屋の鍵を開けた。
沙紀は直ぐにドアを開けて部屋の中に入り、そして振り向き俺をジッと見つめていた。
「そんなに見つめるなよ、こっちが恥ずかしくなるだろ」
「あたしだって超恥ずかしかったもん」
取り敢えず俺も部屋に入り中を見渡した。
部屋にはセミダブルサイズのベッドが1つとテーブルに2脚の椅子しかない殺風景な部屋だった。
「布団はないのか…」
「ベッドだけみたいだねっ」
沙紀はベッドに腰かけ俺を見つめていた。
「だ、だから見つめるなよ」
「えっ、いいじゃん!減る訳じゃないしっ」
(沙紀ってこんなにカワイかったか? ヤバっ変に意識しちまったじゃねぇーか)
「部屋あって良かったよねっ?」
「あ、あぁそうだな」
「あれ、拓真緊張してる?」
「す、するわけないだろ!」
「あっ、あたしと同じ部屋だから?」
「ちげぇーよ!」
「あー異世界かぁ…拓真と一緒で良かった」
「まあ、知ってる奴居た方が気は楽だろうな」
「そう言い意味で言ったんじゃないけどねっ」
「拓真と居ると安心出来るし、異世界でも怖くないって意味だよっ」
「そ、そうか…取り敢えず冒険者ギルド行ってみるか?」
「あっ、うん そうだね」
俺と沙紀は部屋を出て1階の食堂で宿のオーナーにギルドの場所を聞き、冒険者ギルドへ向かった。
宿から冒険者ギルドまでは結構な距離があり10分程歩き目的のギルドに到着した。
「ここが冒険者ギルド?」
イメージしていたものと大差がありすぎた。
俺達が目にしている冒険者ギルドは1階が開放的な空間で、テーブルを囲んで複数の人種の奴が酒を酌み交わしている。
その奥に受付らしいカウンターが見えた。
俺と沙紀は酒を酌み交わしている奴らを横目に奥のカウンターへと足を運び、カウンターに居るダークエルフに声を掛けた。
「あら?見ない顔ね」
「今日アルタゴに着いたばかりだからな」
「それで?何の用かしら?」
「冒険者登録がしたい」
「あら珍しいわね、こんな街で冒険者登録がしたいなんて」
「普通は別の場所で登録するものなのか?」
「そうね、殆どの人が王都で登録するわよ」
「王都とアルタゴでは何か違うのか?」
「特選階級を目指すなら王都で登録しないとなれないのよ?知らなかったのかしら?」
「あぁ知らなかったな、俺達はニホンから来たからな」
「ニホン?……始めて聞く国ね?東の大国の方かしら?」
「東の大国?」
「そうよ、東の大国ムホン」
「たしかに響きは似てるが、俺達の国ニホンはもっと遠いな」
「そうなのね、まぁいいわ。じゃあ登録してあげるから、これを書いてちょうだいっ」
ダークエルフから受け取った紙には、名前と年齢と出身地を書く欄があった。
「名前の所はタクマでいいな、年は19で出身地はニホンっと」
沙紀は俺の記入された紙を見て同じ様に書いていた。
俺と沙紀は必要事項を書き終えダークエルフに紙を戻した。
「発行までにはチョッと時間が掛かるから、その辺に座って待ってて頂戴」
俺と沙紀は空いている椅子に腰かけ待った。
「なんかギルドってより飲み屋みたいな雰囲気だねっ」
「ギルドには変わりないから気にするな」
俺達が登録を待って居た時、1人の
「よお、アンタ等は新人か?」
「新人って言うよりは冒険者見習いだ」
≪魔族を感知したでぇーす!≫
(ビックリさせんなよな!?)
≪敵意をヒシヒシと感じまぁーす!≫
(魔族なんてどこに居るってんだよ?)
≪すぐ傍に居まぁーす!≫
(すぐ傍って…ギルドの中には結構な人数居るんだぞ?)
≪拓真の目の前でぇーす!≫
(こいつ獣人だろ?)
「アンタ等に頼みがあるんだけどよ」
「まだ冒険者にもなってない俺達に頼むって、どんな事だよ」
「新人しか受けらんねえ依頼なんだよ。ここじゃ話せねえから場所移動しねえか?」
俺はコッソリとテーブルの下でアイテムボックスからアサルトライフルを取り出していた。
「仕方ねぇーな」
俺は立ち上がりながら銃口を獣人の顔面に向けた。
「お前、魔族だろ!」
「な、なにバカな事言ってんだ!?」
魔族と言う言葉を聞いて、周りに居た奴らも騒ぎ出した。
「魔族だと!?本当なのか?ボウズ」
「あぁ俺の目は誤魔化せねぇーよ」
「おぉ、たしかにボウズの目は普通の目とは違い変わってんな」
「な、なに言ってやがんだ!俺が魔族な訳ねえだろうが!」
「マセリーナ!ギルマス呼んで来い」
「あいよっ!」
「…チッ」
「あっ!?」
「どうした沙紀?」
沙紀は小声で伝えてきた。
「魂操術が使えるって!」
「声でも聞こえたか?」
「うん、だからここは任せてっ!」
沙紀は魔族の疑いを掛けられている獣人の前に行き、ジッと瞳を見ていた。
「嬢ちゃん、俺をそんなにに見たって意味ねえぞ!魔族じゃねえーからな」
「貴方は魔族でしょっ?」
「あー俺は魔族だ!獣人に化けて冒険者を
「な、なんだ?どうなってる!?」
「コイツ急に自白しだしたぞ?」
どうやら沙紀の魂操術とは、マインドコントロールみたいな物の様だ。
沙紀に誘導され魔族は自白するハメになった。
「な、なんで俺は自分で魔族だってバラしちまったんだ!?」
そこへ1人の超絶美人なエルフが現れ、呪文の様な言葉を発した途端、偽物獣人の魔族の身体に光のリングが纏わり着き拘束された。
「魔族を見つけたのは貴方達ですね?」
美人のエルフは沙紀に聞いていた。
「えーっと、見つけたのは拓真ですっ!」
俺を指差し沙紀は応えた。
美人エルフは俺を見つめて声を発した。
「貴方が見つけてくれたのですね!感謝します」
「いや、俺は見つけただけで感謝される様な事は何もしてないぞ」
(うおっ、見れば見るほど美人すぎる!?)
「ぐはっ!?」
いきなり沙紀に肘打ちを喰らった。
「いきなり何すんだよ」
「なに、鼻の下伸ばしてるのよっ……フンっ」
「よろしいかしら?」
「あっ、ごめんなさいっ 話続けて下さいっ」
「貴方達お2人に少しお話がありますので、私の自室に来て頂けます?」
「はあ…」
俺と沙紀はお互いに顔を見合わせ美人のエルフに着いて行く事にした。
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