第4話 アルタゴ

兵士たちが去ってから、俺達は再び歩き出し街を目指していた。


「あたし達の服って目立っちゃうかもねっ?」

「そうだな、街に着いたらこっちの世界の服装と交換した方がいいかもな」

「交換してくれるかなっ?」

「俺達が着てるこの服なら喜んで買ってくれると思うぞ」

「珍しいから?」

「あぁ」


そんな会話をしながら歩き続け、ようやく街の門が見えてきた。


目の前に見えるのは、石で造られた高さ3m程の壁と開け広げられた門だった。

門の脇にはこれまた定番の門兵が居る。


「暗くなる前に着けたねっ!」

「お前と2人で野宿も良かったんだけどな」

「えっ!?」

沙紀が俺をと見ていた。

(あれ?なんか変な事言ったか俺)


俺達はまた引き止められる覚悟で門に近づいたが、何事もなく通り抜けられた。


「引き止められずに済んだな」

「異世界の街並みって、なんか長崎のハウステンボスみたいな風景だねっ?」

「定番だからな」

「そうなの?」

「なんでか知らんが異世界の街並みは西洋風の物が多いんだ」

「ふーん」

「先ずは服屋を見つけないとな」

「服屋さんならあそこだよっ!」


沙紀が指さした方を見たが、余りにも距離があって服屋かどうか俺には分らなかった。


「よく見えるな?」

「自慢じゃないけど、あたしの視力って2.2あるんだよっ」

「十分、自慢になってんじゃねぇか」


そして服屋に辿り着き、俺は直ぐさまに交渉を始めた。


俺達の着ていた服と交換の交渉をした結果、1人上下セットで2着と交換してくれるとの事で、2人分だから4着と更に金貨20枚まで付けてくれるらしい。


店のオーナーに聞いたところ、通貨はRラックで表し、単価は銅貨が10R、銀貨が1000R、金貨が100000R、因みに白金貨1枚は1000000Rだそうだ。

つまり金貨20枚と言う事は200万になる。


一般的に流通しているのは金貨までで、金貨1枚あれば30日は普通に暮らせるらしい。

白金貨に至っては上流貴族や商会でしか使われて居ないそうだ。


「取り敢えず着替える為に1着選ばせてくれ」

「どうぞどうぞ、ごゆっくりと」

「沙紀も1着選んどけよ」

「うん」


服を選び着替えを終えた俺は、沙紀が着替え終わるのを待っていた。


こちらの世界のファッションについては全く分からないが、ズボンもシャツも形状が同じものばかりで、色だけが違うと言う感じだ。


沙紀が着替えを終えて出てきた。

ベージュのスカートに白いYシャツ、シャツの上にはライトグリーンのベストを合わせ着していた。


「拓真、お待たせっ!」

「まあ、こんなもんか」

「こんなもんって何!?こんなもんって!……これでも一生懸命コーディネートしたんだからねっ!」


「お似合いですよ」

「あ、ありがとう」

「なに照れてんだ?社交辞令に決まってるだろ」

「そんなの分かってるしっ!」


俺は沙紀から着ていた服を貰い、俺の着ていた服と一緒に服屋のオーナーに渡した。


「お客様達はどちらのお国からお出でになられたのですか?」

「ニホンと言う国だ!今は旅をしている」

「ニホンですか。聞いた事のない国ですね」

「だろうな。あまり知られていないようだな」


知らなくて当然だろう。異世界なんだからな。


「ニホンと言う国では、みなさんこの様な衣を着用されているのですか?」

「そうだが?」

「私も1度ニホンと言う国に行ってみたいですな」

「機会があれば行ってみると良いと思う」

「そうですな、その際は案内をお願いしたいものです」

「機会があればな」

(行けないんだけどな!)


そして2着目を決め金貨20枚を貰い店を出た。


「拓真、金貨20枚だよ!すごいねっ」

「あぁ、俺も驚いた」

「これだけ有れば何日滞在出来るかなっ?」

「金貨1枚で30日は暮らせるって言ってたから、1年は余裕じゃないか?」

「1年かぁ…」

「使うだけじゃなく得る方法も考えないとな」

「バイト?」

「俺達に出来る仕事があるかは分からないけど、収入を得る手段は必要だろ」

「そだよねっ」


ラノベ的な方法なら冒険者登録して稼ぐってのが妥当なんだろうが、沙紀を危険な目に合わせたくはない。


「異世界なら、やっぱり魔物とか倒してお金を稼ぐのが普通じゃないの?」


まさか、沙紀から魔物討伐の話が出るとは思わなかった。


「よく知ってたな」

「アニメとかで何度か見た事あるから」

「魔物を狩るかどうかはまだ決められないが、冒険者登録だけはしといた方がいいかもな」

「じゃあ、冒険者ギルドだねっ?」

「なんか楽しそうにしてるな沙紀」

「うん…やっと異世界に来たんだって思えて」

「そうか でも先に宿屋を探すぞ」

「う、うん分かったよ」


宿屋を探して街中を歩いた。

街には、道具屋や鍛冶屋、酒場に青果店など色々な店が並んでいた。


「焼きたてのフエラビットの串焼き肉はいかがですかぁ」

香ばしい匂いが俺の足を止めた。


「旨そうな匂いだな」

「そこのお兄さん方、1本いかが?」

「沙紀、食うか?」

「拓真が食べるなら」

「じゃあ2本頼む」

「はーい、2本だね!なら30Rね」

「あっ、金貨しか持ってないが大丈夫か?」

「うーん、チョット待ってて! お父さん、金貨でも大丈夫?」

「金貨じゃ今は釣りが出せねぇな…悪いな」

「いや、また後で来るよ」

「ん?見ねえ顔だな…旅人か?アンタ等」

「あぁ、今アルタゴに着いたばかりだ」

「ならサービスだ!持ってきな」

「えっ、いいの?オジサン」

「アルタゴに来た歓迎の証だ!」

「オジサンありがとう」

「あ、そうだ…この辺で宿屋はないか?」

「宿屋なら、もう少し先にリズの宿があるぞ」

「そうか、サンキュー」

「サンキュー?」

「あー、ありがとうって意味だ」


俺達は串焼き肉を頬張りながら、今聞いたリズの宿を目指した。


「この肉美味しいね」

「異世界でも旨い物があって良かったな」

フエラビットと言う名からウサギの肉なんだと思うが、こんなに旨いとは思わなかった。


「ここだな、リズの宿は」

教えられた宿は1階が食堂みたいな建物で3階建てだった。

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