.41

ユウキの覗きは収まる。と同時に松浦とユウキの仲が確実に深まっていた。

ユウキは松浦ばかり話しかける。松浦も楽しそうだ。余計な悪知恵をつけるのは困りものだが。


[お姉ちゃん。一生のお願いだからオッパイ見せて]

とユウキが頼み込む。間違いなく松浦の入れ知恵だ。ご丁寧に松浦と一緒に見たいと言い出す。

ユウキの何度目かのお願いのセリフから一秒も満たない時間、アユミはペロッと服をあげてみせた。

松浦が固まる。ユウキは見れなかったらしく、あと一秒だけ。と泣きを入れた。


アユミは、ダメー。とからかい笑う。


つまり生活は安定している。平和の証拠だ。

それに気付いてるのはアユミだけ。

思わずノリで見せた事に少し後悔した。

エスカレートするのが確実だったから。次は触らせてくれ。次は触ってくれ。次は…。

歯止めの言葉を掛けようとしたが、佐々木がユウキ達の味方をした。

[俺にも]と笑いながら言ってきたのだ。

猿が三匹になった。と、アユミはわざと大きくため息を吐き、服を上げて、更に胸をゆすってみせた。

ユウキと松浦は[ありがとうございます]と真顔でお礼を言った。

それが妙におかしくてアユミの笑いは止まらなかった。


外では鉛色の空からボタ雪が降り続き地面を白くしている。頻繁に外を伺うも人間やゾンビの足跡も見当たらない。部屋は暖かく、冬の間の食料も足りる。火事の心配もない。人間関係も良好過ぎる程良好。

このまま復興して以前の生活に戻ってもこのメンバーとはずっと付き合っていきたい。とアユミは思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る