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男は子供を背負った。この労りようは間違いなく親子だとアユミは確信した。
[ありがとう。凄く助かる。本当にありがとう]
男は何回もお礼をした。
アユミは男の子を見る。ひどく汗をかいていたが、顔や首に斑点やデキモノがないので伝染病や感染する類いでは無いと思った。
松浦を見る。果たして彼はそういう事まで考えてるのだろうか?
松浦はここ最近の人間に出逢う確率が高い事を考えていた。ここ一週間で六人の人間と出逢い、そのうち三人も一緒に過ごすという。松浦はまだ自分では気付いていないが、元の独りきりの生活に戻れないだろう。の不安を感じてた。
松浦は荷物をそのままに、焼却場の廊下の片隅に布団を敷き、あらゆる薬を持って来て男の子に飲ませて寝かした。
[お風呂入れば]
アユミが言った。二人とも何年も体を洗ってないようなくらい臭かった。
この施設内には臭いがしない分、余計に感じる。
松浦はただ立っている。アユミはとりあえず松浦が求めてるだろう言葉を言った。
[優しいのね]
松浦は照れた。アユミは、やはり松浦は単純な男だと思った。
松浦は男の子の服を持って来ると場を離れた。
優しいのには間違いない。だが今の厳しい時代、優しさは時として命取りになる。
男がアユミにお礼を言った。
[熱が下がったら出て行ってもらうから]
アユミはわざと冷たい言葉を返した。
松浦が服とタオルとご丁寧に新しい髭剃りまで持って来た。
アユミは呆れ果てたがここは松浦の場所。アユミがどうのこうの言える立場ではない。
本来なら風呂に入るのも松浦の許可がいる。あまりにも臭くてついアユミが言ってしまったのだ。
[お水はたくさん出るし]
松浦は男に言いながら風呂に連れて行った。
男の子とアユミの二人きり。
男の子は寝息をたてている。
アユミは大きく声を出してため息を吐いた。
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