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アユミは話を切り上げ、タンスを順に開けながら考える。
松浦が邪魔なわけではない。ただ頼りないだけ。でも彼は生き延びている。何回か調達しに行った事もあるはずだ。
沈黙の中、家捜しが進む。松浦が丁寧に探したせいか、早くもコンテナは半分近く埋まる。すぐ隣の家を物色した後に松浦は、帰る。と言い出した。
コンテナはほぼ満杯になる。食料は少しだけ。
アユミは、もう帰るのかと驚いたが口には出さなかった。
多分、松浦の調達方法がこの短さなのだろう。
確かにたくさんウロつけばゾンビにも人間にも出逢う確率が増す。
それに長時間探しても食料が見つからない時は見つからないのだ。
アユミは移動しながらの生活の体験上、食料と薬品が見つかるのは運の要素が大きいと思ってる。
コンテナがゴロゴロと鳴り響く音で松浦は絶えず周りを見渡しながら押している。
アユミの足元に石が転がって来た。アユミが後ろを振り向くと、少し離れた場所で人が二人、両手を上げていた。
アユミはコンテナの後ろに隠れる。
[少し薬を分けてくれないか。この子の熱が下がらないんだ]
男が言った。アユミは松浦を見た。松浦は二人を凝視している。まだあの雰囲気は出ていない。
[薬は無いが]と、松浦はコンテナから少しの食料を取り出し地面に置いた。たいした食料じゃないのでアユミは構わなかった。それよりも一緒に行動しようと持ちかけられるのがイヤだった。
[ありがとう。助かる。君らはここら辺に住んでるの?もしよかったら少し休ませてくれないか?]
松浦は困った。断りたいがアユミに冷たいと思われるのが嫌だった。
松浦はアユミを一瞬チラリ見した。アユミは、断って。と僅かに首を横に振ったが、松浦はアユミのサインに気付けなかった。
[す、数日なら]
松浦は頭とは違う言葉を出した。アユミならそうすると思っていた。逆だった。
アユミは心の中で、なに言ってるのよ。と悪態をついた。
男の一人が地面にうずくまるのを見てアユミは気付かれないようため息を吐いた。
男手なら欲しいが一人は子供だった。それも病人だ。
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