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周りを見渡す。
ゾンビが思ってた以上に居た。
人が増えたからだな。松浦は思った。
鉄板はまだ開けられない。
となるとゾンビを殺してくしかなくなる。
「殺すのかぁ」
松浦はつぶやき裏側の壁にゾンビを誘導する。誘導は簡単。ただそこで待ってるだけでいい。
長いお手製のヤリと農作業用のスキは屋上に置いてある。
足にロープを結わえ、うつ伏せに横たわる。真下にゾンビが集まってくる。
松浦を見上げてるゾンビの口元を狙い力を入れて何回か突き刺す。
別にそれで死ななくてもいい。傷を負ったゾンビは違うゾンビに襲われていく。
ただ、口や喉元を壊すように狙わないと喰べて復活してしまう。
弱らせ喰べられないようにしとく。
何体かを突き刺す。
女の子が下を覗き込み松浦はそれ以上刺すのを辞めた。女の子に押される不安を今更ながら思った。
「殺さないの?」
「後は勝手に喰われてく」
「中に人が居るのに?」
松浦は女の子の言った意味が分からなかった。が、弱いゾンビより弱い人間を優先して襲うらしい。と気付いた。
「あぁ。どうだろうかねぇ」
確実に殺そうかと思ったが、面倒臭いのと、本当にそうなのか試してみようと、殺すのを辞めた。
「まぁ様子見」
松浦は答えた。
ゾンビは外に全部で十五体も居た。女のゾンビはいない。
久しぶりに見るたくさんのゾンビ。三年くらい経ってるのに、まだこんなに居る事に松浦は落胆を隠せなかった。
「ずっと一人で生きてたの?」
女の子が聞いた。松浦はうなづく。
「食べ物は?病気にはならなかったの?」
松浦はうなづく。松浦は日常に戻り落ち着いたせいか、この女の子を女性と意識し始めた。しかも自分の苦手とするタイプの女性。
不細工な顔やおばさんだったら、なんとか普通に話せる。だがこの女の子は若いし、汚れていても綺麗なのが分かる。
どうせ嫌われるし、自分とは違う世界に生きてる存在だと思っている。綺麗で若い女の子は本やテレビの世界。
救いは、彼女は松浦をバカにしたり見下したりしない。それだけだ。
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