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横にハシゴはかけてあるが、松浦の方の壁は五メートルの高さで、そのハシゴで登る事は出来ない。
ロープも松浦の方から切ったのでロープを伝って登れない。
女が全てを理解して泣き出した。男達も現状を理解した。
「なぁ、俺達が悪かった。謝るからここから出してくれよ」
「俺達の道具や食料全てあげるからさ」
嘲笑や恫喝から頼み事、泣き言に変わる。
松浦は何も言わない。松浦の中では既に男達は死んでる事になっていた。ただ、女の子だけは助けるか悩んでる。
女だと言う理由もあるが彼女だけ一言も悪口や嘲笑をしなかったからだ。
「おい。なんか言ってくれよ」
松浦は決めた。
「下に降りてゾンビを倒す。ここにハシゴがある」
松浦はぶら下がってるハシゴを指差した。ハシゴと言っても棒とロープで作ったハシゴ。
男達はハシゴを降りゾンビを殺し始めた。手慣れている。
「ハシゴを降ろしてくれ」
「まずは女の子からだ。女の子に荷物を持たせろ」
男達は黙ったまま松浦の言う通りにした。
女の子が登る。すぐに男が登ろうとする。
「手作りだから壊れる。一人ずつだ」
男はハシゴから手を離す。
女の子は想像以上に綺麗な顔立ちだった。松浦が相手に出来ないタイプの顔立ち。
女の子が登り切った瞬間、松浦はハシゴを引き上げた。男達は慌てて掴もうとしたが間に合わない。
「約束が違うじゃねぇかよ」
男はまた口々に悪態を吐く。松浦は黙ってペットボトルの蓋を開けて下に撒き散らした。中身はガソリン。
男達はすぐに気付き遠くに離れた。
松浦は焼却炉から出てドアを閉めた。
男達の声は全く聞こえなくなった。
女の子は松浦の後ろをついてきた。
松浦はそばの椅子に腰をかけ、ため息を大きく吐いて言った。
「疲れたぁ」
アドレナリンが放出してた反動と疲労がドッと出て来た。頭の奥で鈍痛。
全てを放ったらかしにして布団に潜り込んで寝たかった。
だが女の子がいる。女の前に人間だ。人間は怖い。何をするか分からない。自分の事ですら何をしでかすか分からないというのに。
松浦はそんな事を思った。
「助けてくれてありがとう」
女の子は言った。
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