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松浦の食事は一日一食。それで事足りた。ほとんど動かないからお腹も空かないし、なによりも残ってる食料は三ヶ月あるかないかの量なので一日一食になるのも仕方なかった。
酒は呑まないが、タバコだけは今でも吸いたかった。
あんなに好きだったギャンブルもお金の価値が必要なくなった今ではどうでもよくなった。
松浦は働きたくなかった。そして今働かなくて済んでいた。だから今の生活が不満ではなかった。
元の世界に戻りたいかと松浦に問えば、おそらく悩むだろう。
転々と職を変え、たどり着いたのがゴミ焼却場の会社。薄給と不定期の休みに夜勤。独身の松浦だからこそ続けられる仕事。他の職員も松浦と似たりよったりだった。
松浦は、その中でも腐敗したタヌキや犬、猫の遺体処理や生ゴミ置き場の清掃をやっていた。その代わり遅刻や労働意欲の低さは黙認されていた。
ここでは風呂も入れる事が出来た。五右衛門風呂を部屋に作ったからだ。元々風呂は面倒で入らなかったのだが今は楽しみの一つになっている。
ここの社長はケチで修理は職員でまかなっていた。
そのおかげでコンクリ補強材やセメント石の材料。溶接機すらある。
松浦にとってはこれ以上の住処は他に思いつかない。
電気のつかない夜の暗闇にはニ年もいれば慣れた。目をつぶったまま通路から何歩進めば次のドアがある事まで分かる。
人間は全く訪れない。ヘリコプターや車の音は聞いた事がない。
そばに誰か居て欲しいとも思わない。
無音ともいえる世界。音楽も最初は聴いていたが乾電池の消費の方が気になり辞めた。
唯一嫌な事は食料集め。だが一番やらなくてはならない事。
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