[再掲]SS 生きる意味を訊く幼馴染百合

 高校からの帰り道私は、少し病み気味の数十年来の友人であり私の想い人でもある彼女から相談を受けた。


 友人である彼女は、ギリギリ私に聞こえるか聞こえないかというほどに小さな声で、早口で喋り始めた。

「この世って生きる意味あるのかな?」


 相談ごとがここまで重いものだと想像していなかった私は、額に汗を垂らしながらもなんとか相槌をうつ。

「と、突然どうしたの?」


「だからね。生きるってこと自体が必要なのかな? って最近凄く疑問でさ」


「と、言いますと?」


「物事何をするにも何を買うにも全てに、お金って言う人間が生み出した物の中で一番最恐最悪な存在が必要になってくるわけじゃない?」


「そこまで言わなくても」私はそんなことを言いながら苦笑いをし「まぁそうだね。お金は何にでも付いてくるね」と彼女の綺麗な黒髪長髪を横目に見ながら相槌をうつ。


「そう。でね。だから私は考えたわけ、生きるためにはお金が必要で、お金を貰うためには働かなくちゃいけなくて、ということは生きる=お金を稼ぐってことなんじゃないのかなってね」


 自慢げに解説している彼女の邪魔をしないように「⋯⋯⋯⋯」黙って聞いておく。


「それに気づいた時私は思ったわけですよ。それって生きる意味あるのかなって、だって考えてみてよ。もし死んだらお金必要無くなるわけじゃん。けどこのまま生きた場合は常にお金という存在に振り回されながら生きるわけだよ! そんなの死んだほうがマシじゃん!」


 こんな死ぬ理由を探している人が見たら今にでも実現してしまいそうな意見を納得することは、できないので私は彼女の目を見て反論をする。


「生きている人全員お金=生きるじゃないと私は思うよ」


「じゃあ何?」


「お金=娯楽って人もいるだろうしお金=子供って人もいると思うの、必ずしも生きるためにお金を稼ぐって考え方ってわけじゃないんじゃないのかな?」

 これで一安心、と思っていたその時いつもならここで彼女が折れて何もなかったかのように過ごすのだけど、今日の彼女は一味違った。

 なんと彼女は反論をしてきた。

 額に汗をかきながら脳をフル回転させての反論だったはず。


「それは、娯楽とか子供とかがいる人の場合でしょ? 私いないもん、お金=生きるのお金=ここに入る物とか人とか何もいないもん」

 彼女の意見を聞いた瞬間私は、彼女とキスをしていた。

 自分でもわけがわからない、体が勝手に動くという感覚が、今日今この瞬間初めて理解ができた。

 だって彼女にしてみればただの友達から突然キスをされると言う意味不明な状況。

 この時の私の気持ちは、誰にも表現できないものだったはず。けれどこの次に言う言葉は、簡単に表現できる。

 それは──告白。


「私をお金=のところに置いて」

 私は顔を赤く染め上げ動揺を隠しきれていない彼女に、未だ嘗て誰もしたことがないであろう言葉で、彼女に告白した。


 そして彼女の綺麗な長髪が風で揺れながら数分が過ぎた頃、彼女と私二人の動揺が収まると二人同時に微笑んだ。


「何その告白の言葉──」


「ありえないよね──」


 そして彼女は言った。


「これからよろしくね」



 これが私と彼女の思い出の一片。

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