[再掲]SS とある星達の幼馴染百合

 とある空での出来事。

 この空域では十年に一度空に散りばめられた星たちが、流星となり様々な惑星に命となって降りたつという決まりがある。


 そして残り一年で、十年目となる二つの星がいた。この二つの星は生まれてからずっと隣同士で、仲が良く常にお喋りをしている星だった。


「あと一年で、私たち十年だね」

 そう言ったのは一つの星。リウだった。

 リウの言葉に一つの星が反応した。

「もう十年か⋯⋯早かったような、ものすごく早かったような」

 そう言ったのはリウと常に隣同士にいる、セイだった。

「それって結局早いってことだよね?」

「違うよ。全然違う。ものすごく早いって言うのはね。本当に本当に早くて早くて、瞬きしたら終わってたとかそんな感じの早さなの!」

 セイの意味がわかりずらい説明を、リウはいつものように若干呆れつつ言った。

「まぁセイの説明は、置いとくとして。確かに早かったのは早かったよね。あと一年で私たち離れ離れってことだよね」

「まぁきっとそうだろうね。同じ星に行ける可能性なんて数パーセントだって、星王様が言ってたもんね」

 寂しげに言うセイに釣られてなのか、リウは寂しさ全開で、声をところどころ途切れさせながら言った。

「私、嫌だセイと離れ離れなんて嫌だ! このままずっと、セイと一緒に、話していたい。このままずっとセイと一緒にいたい」

 そんなリウを見て、セイは喋りだした。リウと同じように。

「私だって嫌だよ! 私だってリウとずっと一緒にいて、ずっと一緒にお喋りしてたいよ。けど、けど⋯⋯この空域の決まりなんだからしょうがないじゃん!」

 これでもかという勢いで、リウに怒鳴りつけたセイは、そのまま喋り続けた。

 ただ今回は怒鳴りではなく、優しく喋りかけた。

「だから祈ろうよ。私たちが同じ星に、行けますようにって、祈ればきっと叶うよ。例え数パーセントでもきっとね」

 セイの言葉に心をうたれたのか、直前まで、言葉を途切れせていたリウが、普通に喋りだした。

 いつものように元気よく喋りだした。

「うん。そうだね。祈る。セイと一緒に祈るよ!」


 二つの星は、タイミングを合わせ叫んだ。


「リウと一緒にいさせてくださいー!」


「セイと一緒にいさせてくださいー!」




 それから一年後二人が、流星になる日がやってきた。


 そして流星になる数秒前、リウはセイに言った。


「セイ⋯⋯私あなたのこと好きだったみたい」

 セイは驚きを隠せず言った。

「え!? リウが私のことを?」

「うん。私が、セイのことを好きなの。だからねもし私たちが、同じ惑星に行けるなんていう奇跡が起きた時には、その時はもっといっぱいお喋りしようね」

 リウの告白にセイは答えた。もしかしたらこれがリウとの最後の話になるのかもと、そう思いながら真剣に答えた。

「うん! その時はまた仲良くしようね」


 そしてついにその時は、やってきた。

 二人は最後に言った。


「またね」


「うん。またね」


 二人は落ちていく。真っ暗な空から落ちていく。

 その間に今までの記憶がどんどん落ちていく。

 今までの楽しかった記憶辛かった記憶が落ちていく。

 これもこの空域での決まりだった。


 そして二人は、生まれ落ちた。

 記憶を空に落としてしまった悲しみから、涙を流しながら、涙を星のように散りばめながら生まれ落ちた。

 同じ時間、同じ病院で生まれ落ちた。


 名前を──


 佐藤 流(女の子)


 鈴木 星(女の子)


 二人は、生まれ落ちた。地球と呼ばれる惑星に、幼馴染として生まれ落ちた。

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