[再掲]SS 結婚の約束をした幼馴染百合

 私の一番古い記憶は、幼馴染の女の子に指輪をはめてもらった。そしてその時幼馴染は言った。

「将来私たちが、結婚できるようになったらあなたの方から私に指輪をはめてね」

 笑顔で言った幼馴染にこちらも満面の笑みで、返したのを覚えている。

 一言。

「うん!」

 そう返したのを覚えている。




 そして今社会人になった私たちは、一緒に住んでいる。

 もちろん結婚はまだだけれど、同棲を最近始めたばかりで、お互いに慣れていないところを補いながら仲良く一つ屋根の下で、暮らしている。

 そんなある日、仕事から帰って疲れている幼馴染にいつもどおりキスで、お出迎えした直後。


「あー! 好きー!」

 そんな風に言いながら幼馴染は私に抱きついてきた。

 私は多少戸惑いながらも、なんとか幼馴染を受け止めると返しをする。

「私も好きだよ」

 そしてもう一度今度は、幼馴染の額にキスをした。

 すると幼馴染は照れた表情を見せて「エヘヘ」と微笑んだ。


 そのまま私は、幼馴染の頭を撫でながらさっきまで、考えてた記憶のことを何気なく聞いてみる。

「ねぇ。子供の頃の約束で何か覚えていることある?」

 全然何気なくでもないことに、質問し終わって気づいたけれど幼馴染は、私の間違いというかミスに気づく様子を感じさせずに言った。

「全く!」

 今回も笑顔だった。

 とても可愛らしい笑顔だった。

「そっか」

 そう呟くと私は、一旦自分の部屋に戻り昔からずっとどこに行くにも持っていっていた指輪を、玄関まで隠して持ってきた。


 幼馴染は、どうしたの? と首を傾げているが、私は気にせずに真面目な口調──トーンで喋り始めた。


「あなたは全く覚えてないって言ったけれど、私はずっと忘れずにいたよ。その反省を活かしてこれからは、絶対に忘れられない思い出をいっぱい作る。だから私と結婚してください!」


 お互い好き同士だということは、ずっと前からわかっていたことだけれど、やっぱり結婚っていうのは重みが違った。緊張が違った。

 数秒頭を下げて、私は頭を上げる。

 そこには、泣いている幼馴染の姿があった。


「え。どうしたの」

 私はゆっくり近づきながら聞いた。

「ううん。大丈夫。大丈夫。私嬉しくて、あなたが結婚って言ってくれて、私嬉しい」

 私は泣いている理由が、悲しいからじゃないと分かると、期待を込めて聞いた。


「それじゃあ」

 と。


 すると幼馴染は、笑顔と涙を混ぜながら言ってくれた。


「こちらこそよろしくお願いします」

 と。


 その返事を聞くと私は、反射的に幼馴染の右手を優しく掴むとそのまま薬指に、ゆっくりと指輪をはめた。

「これで、約束は果たしたよ!」

 自信満々に言った私の言葉も、幼馴染は何を言っているのかわからないらしく首を傾げていた。

 もう! とちょっと大きな声を出してみるけど、なんだかおかしくなり私たちは、仲良く笑った。

 仲良く同じ道を歩んでいく。

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