[再掲] 吸血鬼の幼馴染百合

 突然で申し訳ないのですが、私 流血りゅうけつ すいは今幼馴染の吸血きゅうけつ ひめによってベッドに無理矢理押し倒されています。

 姫のお世辞にも大きいとはいえない胸が、私の目の前にあり私の視野を狭めている。そんな可愛い可愛い姫が私を押し倒している。しかもいつもは常につけている眼鏡を外しているので、普段とは全く違う姫の顔が間近にあるのだ。そんなの照れない方がおかしいくらいだ。

 この状況を読んでいる方に説明するには、今日の学校からの帰り道頃まで、話を戻さなくてはいけないので、本当に身勝手で申し訳ないのですが、話を戻します。


 〜今日の帰り道〜


 いつも通りの帰り道で、姫といつも通りな馬鹿な会話をしている最中。姫が突然照れた表情で私の肩を掴んだかと思うと、照れていた表情を真剣な表情に変え喋りだした。


「水⋯⋯今日誕生日だよね」

「う、うん」

「それじゃあこれから家来て!」

「え、うん別にいいけど突然どうしたの?」

「そ、そのもうとにかく来て!」


 そう言いながら姫は私の大事な大事な顔を、一発勢いよく殴った。そりゃもうボクサーの右ストレート並の力強さで殴った。その言動に私は怒りを通り越しての驚きを見せた。


「えええええええええええれれー!」


 今時こんな驚き方をする女性主人公がいていいのかと思うぐらいに驚いてしまった。(最後にれが入ってるのはeとrが隣にあっての打ち間違いだが、いい驚き表現になった気がしたので放置)

 殴り終わった姫は謝罪の一言もなしに、家の方向に走って行ってしまった。それが姫最高速度なんじゃないかというぐらいの速さで、走って行った。

 そんな姫の後ろ姿を見ながら私は、近所迷惑など考えずに自分が出せる最良の大きさの声で、もう一度驚いた。


「えええええええええええええええー!」


(そして今押し倒されています。

 え? うんこれじゃあなんで押し倒されてるのかわかんない? しょうがないなーもうちょっとだけ詳しくやるから。)


 〜二回目の驚きの直後〜


 ここで一つ弁明しとくが、この話は決して百合の話ではない! なぜなら私は別に姫のことなんて好きでもなんでもないんだからね!

 全く可愛くないとは言わないよ、それにあの長くて綺麗な髪をゆっくりと触りながら匂いを嗅ぎたいと思ったことは、一度や二度ではないよ。それにそれにあの整った顔をずっとまじかで見てたいし、姫の唇に私の唇を重ねたいと思ったのも二度や三度じゃないよ。それにそれにそれにあの私にとってはちょうどいい大きさの胸もう最高! あの胸を揉めるなら死んでもいいって思ったのも三度や四度じゃないよ。それにそれにそれにそれに〜以下略〜(ここまで全て早口です)


「ふぅー」


 声を出していたわけではないけれど何故だか息をついてしまった。別に好きでもなんでもないただの幼馴染の、そう強いて言えば嫌いな箇所そうそう嫌いな箇所を心の中で早口で語っていただけなのに息をついてしまった。

 そんな私の苦労もあって読んでくれている方には、姫がどれだけ魅力がない奴かわかってもらえたと思うのでそろそろ姫の家に向かおう。


「しょうがない行ってあげますか」


 そんなセリフを口に出しながら太陽が少しずつ沈み始めた頃、私の足取りは好きでもない姫の家に行くだけのはずなのにどこか浮足だっていた。


(そして今押し倒されています。

 え? うん、うん、えーまだわかんないの? しょうがないなー次で最後だからね。)


 〜姫の家の玄関をまたいだ直後〜


「お邪魔します〜」


 私はそう言いながら靴脱いで玄関に上がる。玄関のドアを開けてくれたのは姫ではなく、姫のお母さんだった。姫のお母さんは姫によく似ていてとても綺麗だ。この場合は、姫がお母さんに似ているが正解なのだろうか? 私はそんな疑問を抱きながら玄関に足をつく。


「水ちゃんいらっしゃい〜久しぶり〜」

「おばさん今日の朝も会ったから全然久しぶりじゃないよー」

「そうね確かに」

 と姫のお母さんは微笑んだ。


 そんな会話を終えた私は、お義母さんに一言挨拶をして、姫が待っている二階に行くために階段に足をかけた。

 え? うんなんで私が姫のお母さんのことをお義母さんって呼んでるかって? それはねー私と姫は結婚するからだよ。私は別に姫のことなんて好きでもなんでもないけど、姫は将来絶対に私に結婚してって言ってくるから、そんなに頼むなら結婚してあげるみたいな感じ。

 だから心の中だけでも練習しとかないとなって思って、5年前ぐらいからお義母さんって呼ぶようにしてるんだ。

 そんなことを考えているうちに階段を登りきったようで、次に足をかける階段は無くなっていた。私ゆっくりと姫の部屋のドアの前まで移動した。


 緊張をしているわけじゃない、だって私誕生日で18になったけどだからって突然何かがあるわけがない。ましてやあの受け身の姫のことだ本当に何もなかったという落ちに決まっている。この次の行には<物語シリーズ>みたいに、後日談とういうか今回のオチって書かれているはず。

 そのはず。

 そんな風に考えながら私はドアを開けた。開けると同時に言葉も発した。


「姫来たよ──さっきの右ストレート謝ってよね」


 姫の部屋の中を見渡すとポツンとどこか緊張したような、面持ちをした姫の姿があった。そんな姫を横目に見ながら私はゆっくりと部屋に入っていく。

 私が完全に部屋に入ったタイミングで、姫はとても人間業ではない速さで、私の後ろに回り込み部屋のドアの鍵をガチャと閉めた。

 その音を聞いて私がドアの方に目を向けるとそこには、いつもとは真逆、攻めの表情の姫の姿があった。

 その姿を見て私はゾクゾクしてしまった。この時私は、自分はMなのだと確信した。普段は隣にいるのが受け身の姫なので、Sっけが強い私だが(姫はそんな私を見て笑っている気もするが)やはり時には下になりたいのだ。


「水ーさっきの右ストレートはごめんね、つい照れくさくなっちゃってさー」


 そう言いながら姫はもう手を伸ばせば私に届く距離には来ていた。私は少しだけ興奮しながらもやはり恐怖もしていた。なぜなら単純に姫がいつもと違うその一点だけなのだが、その恐怖で私は足を一歩ずつ後ろに下げていく。

 ある程度下がったところで後ろに下げていた足に何かが、ぶつかった。足にぶつかった物は普段姫が寝ているベッドだった。これ以上は下がれないので、私は下がるのは諦めて眼を瞑った。(好きにしてくれという意味合いも込めて)

 眼を瞑った直後姫は私の肩を掴み、そのまま後ろのベッドに私を押し倒した。


 そして今押し倒されています。

 これで大丈夫説明はできたはず、あと一つだけあるの思い出した。姫の足はMの人には最高の足だと思ってる。


 私は押し倒されている間に考えていた。こんな好きでもなんでもないむしろ嫌いぐらいの魅力が全くない、家が隣のただの幼馴染に、処──一夜をともにしてしまうのだと。

 そんな風に考えていた私の耳元には予想外の言葉が放り込まれた。隕石が地球に落ちるとニュースで報じられた時(そんな状況におちいったことがないので実際はわからないけど)ほどの衝撃を与えるぐらいの言葉だった。


「水⋯⋯血⋯⋯吸わせて」


 そんなことを耳元で囁かれたら人の家だろうと何だろうとそんなこと関係なしに、大声で驚く以外の選択肢は、私にはなかった。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!」


 自分自身で今日驚きすぎだろっとツッコミを入れたくなるぐらいには、驚いた気がするが、私はそのまま喋り続けた。


「あのー私てっきり、姫が私の処女を貰ってくれるのかと勘違いしてたんですけど、違う感じですか?」


 先程頑張って隠した処女というワードが、勢いあまって出てしまったが(なんかこのタイミングの出てしまったってどことなくエロすを感じているのは、多分この話を書いている奴だけだと信じたい)私は、気にせず姫に目線を向けると。

 赤面していた。

 それはもう真っ赤に赤面をしていた。ここまで照れた表情の姫を見るのは、100回目ぐらいだろうかどれだけ見ても姫の照れた表情は──良い、やはり私はSなのだろうか?

 そういえばとある有名声優が人は誰でもSとMどちらも持っていると言っていた気がする。そういうことにしておこうこれ以上深く考えても答えは出ない気がする。


「処女なんてそんな、私達恋人でもないのに、それにもし恋人だったとしても水となんてそんなの考えただけで──」


 私がくだらないことを考えているうちに姫は、いつもの調子で独り言を喋り考えの限界値を超えたのか、頭から煙が見えてくるようにボーッとしていた。

 それを見て私は、これまたいつものように手を姫の目の前に持っていき、数回スッスッと振るとこれまたこれまたいつもの調子で、姫は正気に戻った。


「よかったよかった戻ってきて」

「う、うんいつもごめんね水」

「いや全然大丈夫。それで──さっきの話の続きなんだけど」


 私が姫に勘違いをさせていがために意味ありげにそう言うと、姫は見事に引っかかってくれた。


「さっきのってその、処女とかそういうこと?」

 姫は私が思っていた通りの照れた口調で、そう言ってくれた。


「いやー、その前の血についてだったんだけど、姫ー何考えてたの?」

 私はここぞとばかりに姫を煽っていく(やはり私はSなのかもしれないそんな風に考えながら)そのまま身動きを取れていない姫を私は押し倒した。

 その直後私は姫の耳元で囁いた。


「姫の⋯⋯エッチ」

 と。


 すると姫は照れながらも反論を繰り出してきた。


「ち、違う別にそういうことを想像してたんじゃなくて、その」


 私はそこに追い打ちを耳元にかけていく。


「そういうことってどういうことー? 私わかんない教えてほしいなー姫ー」


 これはもうSでしょ両方持ってるなんて嘘だ。これをSじゃないって言う人がいるのが想像つかない。

 しかしその私の想像はすぐに崩れ落ちた。

 姫のこの後の一言によって。


「でも先に想像してたのは──水の方でしょ!」


 正論。ド正論。マジレスだった。

 私はその姫の言葉に返す言葉が見つからなかった。

 その瞬間を真のSは見逃さなかった。

 私のその一瞬のスキをついて姫は、私をまたもや押し倒した。


「ねぇー水⋯⋯血⋯⋯吸っても良いよね」


 私は姫の言葉に、コクっと頷くことしかできなかった。(でもやっぱり下もいいな)


 私の首元に今まで全く見たことがない形の、姫の歯がザクッと(この時の表現が何が正しいのかわからないのでとりあえずザクで)突き刺さった。


「アーっうーっ」


 と痛さで喘いでいると、その痛さはだんだんと快感に変わっていった。

 この快感が私がMだから感じているのか、それとも人間にとって血を吸われるという行為が快感になるものなのかはわからないけれど、とにかく今は今すぐに姫に抱きつきたいただそれだけだった。

 一夜を共にしたような疲労感も相まって(もちろん私は処女なんで、大事なことなのでもう一度言います。処女なんで今の疲労感がその疲労感なのかは本や漫画の知識でしかないけれど、多分あっているはず)私は処女を姫に奪われた気分になっていた。

 見事に簒奪されました。

 しかしその快感も長くは続かなかった。当然ではあるのだけど、姫は血を吸い終わると私の首元に突き刺さった歯を抜いた。

 すると私にはただの痛みしか残らなかった。もし私が痛みによって快感を得ていたとしてそれは、姫が私に痛みをくれるから良いのであって、この首元に残った痛みはただの痛みでしかないのだ。


 気づくと私は姫に願っていた。


「姫ーもう一回首から血吸ってー」


 その言葉を聞いて姫は、私の唇に人差し指を置き一言。


「また今度ね」

 と言った。


 その時の姫はものすごく──可愛かった。

 気づくと私は、好きでもなんでもないむしろ嫌いぐらいの、もし結婚してって頼まれたらしょうがないしてあげるってぐらいの姫に。


 キスをしていた。


 心の中で⋯⋯大好きー! 叫びながら。


「姫? それじゃあさっきのこと説明してくれる?」


 勢いあまってしてしまったキスのことを隠すように、私は姫に問いかけた。

 すると姫は私を下に見るように(背丈はあまり変わらないのであくまで目線のみ)して問いかけに答えた。


「さっきのことって? 水が興奮して私にキスしたこと? それとも処女とかのやつ?」


 もう本当にこの子は、Sだった。そんな姫を見ながらもう私はゾクっとした。ゾクっとしないはずがない。

 私は姫のことが好き──でもこの気持ちを姫には今は言えない、それも含めての照れ隠しを私はした。(キスとか処女とかのも含めて)


「どれも違う! さっきの吸血のこと」

「あーそっちね」

「そっちって絶対わかってたでしょ?」

「いやー全然わかってなかったよ、もう少しだけ水の照れ顔見たいなんて思ってないよー」


 姫の表情と口調は本当に白々しかった。これでもかと言うほどに白々しかった。

 私はすぐに話を戻した。


「それで、吸血のことの説明をしてほしいんですけど」

「あーはいはい吸血のことね。どこから説明したらいいかなー?」


 姫はどこかめんどくさそうにと言うか、適当にとか言うかそんな感じで、返事をした。


「単刀直入言うと私──吸血鬼なんだ」


「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええー!!!!!!!!!!!!!!!!」


 私は今日一日何回も驚いたけれど、それでもここまでの驚きをしたのは、今日以外を合わせても初めてだった。

 そんなの当たり前だ。だってだって──友達が⋯⋯幼馴染が⋯⋯吸血鬼なんて言われたら驚かない方がおかしいでしょ?

 私は姫の体を揺らしながら問いかけた。(気持ち的にも焦っていた)


「え!? え!? 吸血鬼ってどういう?」

「どういうって言われても、そのままの意味だよ。私は吸血鬼なの、私がと言うよりかは私の家系が吸血鬼だけどね」


 姫はさも当然のようにそう言ったが、私は全く理解が追いつかないが、私はそのまま姫に説明をするように喋った。


「でもでも今まで、姫──吸血鬼っぽいこと全くしてなかったよね? 太陽も大丈夫だしにんにくも大丈夫もちろん十字架もだし。それはどういう?」

 私は説明を求めた。


「あーそれはね。今水が言った吸血鬼のイメージが全部嘘だからだよ。もちろん回復能力なんかもないしね」

「でも姫、血は吸ったよね」

 私は考えが追いつかないながらもなんとか、言葉を出していった。

 それに対して姫は、言葉が詰まる様子もなくスムーズに喋り出した。


「多分姫は今私が、昔から血は吸っていると思ってるかもしれないけどそれは違うの」

「どういうこと?」

「私──血を吸ったの今日が初めてだよ」

「とういうことは、今日の朝あたりにおばさんの血を吸ったってこと?」

 私は気づいている。今言っていることは間違いだとでも、やっぱり正直に言うのは私には無理だ。

 照れ隠しをした。


「もう気づいてると思うけど、しょうがない言ってあげる」

 すると姫は私の体に抱きつき耳元に囁いた。


「血を吸うのも今日が初めて、それに初めては⋯⋯水だよ」


 耳元で囁かれた姫の息遣い、声全てがエロかった。もう私は一生Mでいいそう思えるほどに姫は凄かった。

 語彙力がなくなるほどに凄かった。


「でもじゃあなんで今まで、一回も血を吸わなかったの?」

 ここまで姫は、言葉を一度も詰まらせはしなかったのにも関わらずこの問いにだけは、言葉を詰まらせた。

 すると私の問いかけに先程までよりは、真剣な口調で答え出した。


「そ、それはねー⋯⋯吸血鬼は、その」

 姫は姫自身の人差し指をを絡めながら、とても緊張しているような面持ちで、こちらを上目遣いで睨んでいる。

 その姫の表情は、もう、もう、もう言葉にできないほどの可愛さを詰め込まれていた。(本当に読んでいる方に伝えられないのが辛い)

 すると姫は突然「ふぅー」と深呼吸し何かを決意したようで、勢いよく喋り出した。


「あのね、吸血鬼は、18歳以上の人からじゃないと血を吸っちゃいけない。それとねもう一つ条件があって、こっちのほうが重要なんでけど、その。⋯⋯血が繋がってなくて友達としてじゃない⋯⋯恋人にしたいと思える大好きな人からしか吸っちゃいけない決まりなの!」


「そ⋯⋯それってつまり」

 私は姫の言葉を聞いて戸惑いが隠せなかった。無理矢理自分の目を姫の目に合わせた。

 すると姫は──コクっと小さく頷き勢いよく抱きついてくる。強く抱きついてきた。


「私──水が好き──大好き!」


 姫のその言葉に私は、私自身の思いを今まで心の隠していた思いを、一つの言葉にまとめて姫にぶつけた。


「私、私も──姫のことが──好き! 大好き!」


 その後私達は、笑顔で顔を合わせ最後にキスをして幸せな気持ちになり、姫の家での出来事は終わった。


 〜自分の家での出来事〜


 帰る寸前姫に「一応傷隠すために絆創膏貼っておくよ」と言われ断る理由もないので、「あ、うん」と返事をしそのまま家に帰った。


 家に帰るといつもは、もうちょっと遅い時間に帰ってくる私のお父さんが、もう帰宅してゆっくりとくつろいでいる姿がリビングにはあった。

 台所では、今日の夕飯を作っているお母さんの姿が、あったのでそんなお母さんを横目に見ながら手を洗っていると突然慌てて、お母さんが近寄ってきた。


「水、その首元の傷どうしたの?」

「傷がどうしたって?」

 お母さんの声を聞いてお父さんまでもが、近づいてきた。


「あーこれはその、なんといいますかその」

 とどう説明したらいいか悩んでいると(そもそも一から十全部説明しても信じてもらえるのか怪しいけど)お父さんが、突然何かを思い出したようにお母さんに耳打ちしだした。


 耳打ちが終わると二人はなんだか、ニヤケていた。それも悪意あるニヤケかただった。


「二人共ど、どうしたの?」

 私は多少ビビりながらそう言った。

 すると代表してなのかお母さんが喋りだした。その喋った内容は私の人生を狂わせるような言葉だった。(言い過ぎなきもする)


「水⋯⋯血⋯⋯吸われたでしょ?」


 そのお母さんの言葉に私は、驚いた。ただし叫ぶような驚きではなく。ただ恐怖だった。

 なんで、なんでお母さんとお父さんが吸血鬼がいることを知っているのか、それだけで私が恐怖するのに足りているはず。

 私は怖がりながらも勇気を出して聞いてみた。


「な、なんで吸血鬼のこと知ってるの?」

 その言葉を聞いて二人は、一瞬目を合わせ次は代表してお父さんが喋りだした。


「それはね水。お父さんとお母さんどちらも吸われる側だったからだよ」


 質問したタイミングで、まぁそうなのだろうとは思っていた。だってここでお父さんお母さんは、吸血鬼デースって言われたら私も吸血鬼なの? どういうこと? は? は? はーーーー!? って家飛び出しそうだったしまぁ私人間だしけど、けれど実際に本人の口から吸われる側だったと言われると色々くるものがある。

 吸われる側だと言われたタイミングで、私は嫌な予感を二つしていた。

 私はその予感をただの予感だったとホッとしたかった。なのに二人は私の予感を見事に的中させた。


「そうそう今隣に住んでいる──吸血 姫ちゃんの親二人が私達二人の血を吸う吸血鬼だよ」


 これが一つ目の嫌な予感だ。だって私の親二人共があんな快感を良いと、そう思って血を与えてたってそんなの嫌じゃないですか!?

 しかし私も次の展開が起きるまでは、まだ、まだ、まだまだホントにギリギリギリギリ納得ができていた。

 ただ次の私がした質問でなんかもういいやってなってしまった。


「姫のお母さんがお父さんの血を吸って、姫のお父さんがお母さんの地を吸ったってことで、いいんだよね」

 この質問は希望的観測だった。だってもうこの話の流れ的にYESと返ってくるわけがなかった。

 返答は二人同時だった。


「違うよその逆、姫ちゃんのお母さんがお母さんの血を吸って、姫ちゃんのお父さんがお父さんの血を吸ってたの」

 これが二つ目の嫌な予感。

 その返答を聞いて私は、思考が停止した。逆に考えれば思考が加速したのかもしれないけれど。


 お母さんがレズでお父さんがホモでお母さんが百合でお父さんが薔薇でお母さんがGLでお父さんがBL。


 そんな考えをした私が行き着いた答えは──同性愛最高というだけだった。


 〜翌日〜


 私は親から聞いた昨日のことを、無理矢理忘れいつも通り家の前で待っていてくれた姫に抱きついた。


「あー好き」

 そう言いながら強くも弱くも抱きしめた。


「もう水いきなり抱きつかないでよーびっくりするじゃん」

「ごめごめんつい姫が可愛くって」

「まぁいいけどさ抱きしめても。けど一つだけいやごめん二つだった。二つだけは約束してほしいことがあるの」

 姫の表情は真剣だった。真剣と書いてマジと読むぐらいにはマジだった。

 私はそんな姫の顔を見ながら唾を飲み込んで、話を聞く。


「学校で私が吸血鬼のことを言いふらすのは、もちろんとして。私と水が好き合ってるっていうのも言っちゃダメだからね!」


 私は学校でもイチャイチャしたいー! イチャイチャしたいー! と駄々をこねるように一言。


「なんでー!」

 と言った。

 すると私の気持ちを感じとったのか姫は、私に近づき囁いた。


「ちゃんと言うこと守ったら⋯⋯血⋯⋯吸ってあげるからね」


「ハイ!」

 私は元気よくそう挨拶するしかできなかった。

 昨日までは私が上だった気がするのだけど、まぁそんなことはどうでもいい、今日もまた楽しい一日が始まる気がする。




 私は姫に常日頃思っている疑問を、さりげなく言ってみた。


「なんでアダムは女じゃないの?」

「え? 水何言ってるの? 怖いよ」

 姫は当たり前の反応を示した。

「アダムって最初の男の人でしょ? 確か」

「うん多分そのはずだけど」

「だからもしアダムが、女になったらこの世は女だけになるわけじゃない?」

 姫はそんな熱弁している私を、少し引き目で見ていた。(ああ良い)私は変態じゃないぞ!


「もしこの世が、女の人だけになったら私と姫が付き合ってるのも堂々と言えるわけじゃない? それにそれにもしアダムが女だった場合女同士でも子供が、産めるわけじゃんってことはだよ、意味のあるS──」

 私が今している熱弁の一番大事な部分を、言おうとしたタイミングで、私は姫に笑顔でぶん殴られた。(私は、言葉とか目線とかが好きなのであって殴られたりする痛みは好きじゃない)


「痛いなー! 何すんの姫!」

「うっさい! このドM! 私はこの作品を健全な──あー尊いって思ってもらえる作品にしたいの! だから水が言おうとした言葉は言わせないから!」

「良いでしょ別に、下ネタ言ったって! この作品書いてるやつ笑いのセンスないから、下ネタ言わないと笑い取れないの! 西◯◯新先生見たく会話だけで笑いとるの無理なの!」

「無意味に人の名前出さないで! この作品書いてるやつ、カクヨムとなろうがどこまで作品とか人の名前とか出して良いのかわかってないんだから、下手したらBANだよBAN。」

「でもこの作品の一話で、ガンガン物◯シリーズって名前だしてるけどそれは良いの?」

「だってあの時私部屋の中で待ってなきゃだったし。」

「はーいメタ発言! ここまで我慢して読んでくれていた人がブラウザバックしましたー! 全部姫のせいー!」

「うっさいうっさいうっさいー!! 水はドMのキャラ設定でしょ! むやみに私を責めないで! それにメタ発言なら水もいっぱいしてたし」

「うっさいうっさいうっさいー! 私はいっぱい悩んだよこの作者のせいで、MなのかSなのか何回も何回もでも作者の、普段強いやつがある理由で弱くなるのが良いっていう、変な趣味の性で私はMにさせられたんだ。」

 私は泣いたふりをした。

 しかしそんな泣いたふりも姫には、効かないようで、なんと姫は私の顔をもう一発殴った。しかもさっきよりも強く。

 私は怒った、髪を金髪に染めて立たせたいぐらいに怒り狂った。


「今のは痛かったぞー!」

「それ金髪の方じゃないし、しかも文字にしてるから全く迫力ないし」

 私は別に姫と喧嘩したいわけじゃないので、殴らずに話題を変えた。


「話題を変えよう」

「突然すぎじゃない? こっから星一つ破壊するほどのバトルが始まるんじゃないの?」

「は?」

 ぶったかれた。


「それで? 話題変えるってどういうこと?」

「姫も男がいなくなるっていう案は、賛成だよね」

「いや反対」

 予想外の反応だった。


「だって男がいなくなるってことは、阿良◯◯君とかキ◯トとかお兄様とかがいなくなるわけでしょ? そんなの無理生きていけない」

「姫の方がキャラ名出してるってことは、一旦置いとくとして姫ってもしかして、男の人が好きなの?」

 私は今回本当に目に涙を浮かべていた。

 泣いていた。もし姫が男が好きというなら私は、無理矢理、姫と好きあっていることになってしまう気がして、涙が止まらなかった。

 姫は私の涙で何かを察してくれたようで、強く強く抱きしめてくれていた。


「ごめん、私が勘違いさせるようなこと言っちゃって、私が好きな男は2次元だけで、リアルの男なんていらないよ。これは本心。だからホントに好きなのは水だけ」

「ホントに?」

 と上目遣いで姫に聞くと。

「ホントだよ」

 という返事が、笑顔の姫から返ってきた。


「じゃあキスして」

 そういうと姫は多少照れながらも、顔を近づけてくれた。

「姫大好き」

「私も水のこと大好き」




「今回全く吸血鬼要素なかったけど、大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫気にしない気にしない」





 〜ある日の登校中〜


「また登校中かよ」

「一言目がそれか!」

 さっそく姫に殴られたんですけどー! 姫が最近暴力的になってきているような気がする。

「突然なんですけど、なんで眼鏡っ娘=巨乳なの?」

「そうでもないと思うけどな」

 姫は、私の突然の質問に興味なさげに答えるしかし私は知っている。

 姫が胸が小さいことで、悩んでいるということを、だから私が教えてやる貧乳の素晴らしさを。

「いやそんなことないね! 代表的な所だと◯川◯とかね」

「もうしょっぱな◯出さないといけないの、どうにかしようよ」

 私はそんな姫の言葉に反論するように、喋りだした。

「◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯オ◯◯。どうこの読んでいる人によって全く捉え方が違ってくる、◯の数。姫のプライベートをバラしちゃった」

 一、二、三、四、五。誤発。違う五発も殴られてしまった。

 姫の怒りは今までとは、比べ物にならいくらいのものだった。

「水どれだけ◯で隠しても、私には聞こえてるのを忘れちゃダメだよ(フフッ)」

 姫の笑顔が怖すぎて私は、黙っていることしかできなかった。

 ほとぼりも冷めた所で私は、話を本題に戻す。


「だからね私が言いたいのは、姫の胸は最高ってことなんだよ」

 一瞬自分のまな──胸を見た姫は、手のひらを丸め勢いよく殴りかかってくる。(あそこでまな板と考えたら、殺されていた気がする)

 私はその手をギリギリのところで、止め喋り出す。


「ま、まって私は褒めてるの! そのまな──ちい──姫の最高の胸を」

「どういうこと?」

「だからね、さっき私の言った。眼鏡っ娘=巨乳っていうのは私的には絶対違うの! するとだよ? 姫は眼鏡かけてて、巨乳ではない。(むしろ小さい)ってなると私の望みぴったりなんだよ」

「その()の部分は見ないであげるけど、一つ聞くね。本音は?」

「優越感に浸れる」

 さっきよりも早い殴りが、私を襲うがまたもや私は、それをギリギリのところで止めた。(あと数ミリのところだった)


「ま、まってこの気持ちは本心じゃないの、誰かに操作されてるの! 作者とかそんな奴に」

「それは違うよ水」

 姫が突然真面目に喋りだした。


「だってあなたは生きているもの。あなたはここにいてここで生きている。」

 そんな聖母感が溢れる姫に、いつのまにか祈りを捧げていた。辺りも光に包まれているそんなような気がした。


「姫、私これからこの作品が尊くなるように頑張るよ」

「そう、それならさっきまでのことは全て許すわ」

 そう言って聖母とその光達は消えていった。



「でも尊いってなんだろうね。姫ー」

「うーん言葉では表せない。それが尊いってことだと私は思うなー」

「つまりや◯君ってことだよね」

 速攻でぶったかれた。もの凄く痛い。


「水、九行前に言ったことなんで破るの!」

「だって尊いで真っ先に浮かんだのが、や◯君だったから」

「まぁ確かにや◯君は尊かった」

 私はなんとなく言ってみると。


「ううん、違う。だって! だって...君のこと、好きになりそう!」

「燈◯じゃないと全然尊くない! 燈◯連れてきて!」

 とてもじゃないけど、無理なお願いをされたので私は無理矢理落ちに持っていく。

 まず手始めに近くの壁に姫の背中をつかせ、私の手のひらを壁に、ドンっ! とついた。

 そこで私は、姫の耳元に囁いた。


「今度血⋯⋯吸う時いつもより長く吸ってほしいな」

 私は吐息混じりのそんな声が囁いた。

 姫は赤面していた。照れていた。もうこのまま家に二人で帰りたいぐらいの可愛さだった。

 私は最後に微笑んだ。



「今回もほとんど吸血鬼要素なかったけど、大丈夫かな?」

「大丈夫⋯⋯次はきっとあるはず」




 〜ある日の学校〜


 やっと舞台が移ったか、という感じではあるけれど、今やっていることは登校中と変わらなかった。

 そう姫と雑談しているだけ。ただそれだけ。

「姫、この後の授業なんだっけ」

「この後? あれなんだっけ?」


 こんなバカな雑談だ。

 ちなみにこの学校は、女子校ではないので、もちろん男子はいるけれど、私は一切男子を描写するつもりはない。

 この前も言った通り私は、この世に男はいらないと思っている。

 なぜならもし女同士で、子供を作れるのならそれだけで、男共はただの労働者。違う、者ですらない。

 ただの労働物。すなわち機械だ。つまり男はいらない、そういうことになるのではなかろうか?(これは差別用語になってしまうのかな?)

 そんなことを考えている矢先(私の願いが叶ったりはしないけれど)クラスの扉が開いた。


「おっはよー」

 そう元気よく挨拶したのは、私と姫が好きあっているのを知っている二人のうちの一人だった。

 名前は、雪風ゆきかぜ ゆき 元気がよく私達のグループの、ムードメーカー的存在だ。

 ちなみに髪は短めで、胸は大きいので姫は、雪のことを目の敵にしている節がある。(仲はいいけどね)

 そして雪の後をつけるように教室に入ってきたのが、私達の関係を知っている(吸血鬼のことは知らない)もう一人。

 名前は、雪風 風 おとなしい方で、私達といてもほとんど喋らず、ずっと黙々と本を読んでいる。そんな女の子。(読んでいる本は、百合の観音小説らしい。ハードめなやつ)

 見た目は大和撫子っぽく凛々しい、髪も長め、胸も小さめ。そんな感じ。(大和撫子が胸大きいのは違うと思う)

 今この話を読んでいるほとんどの人が、雪風二人を双子かなにかと思っていることだと思う。

 私も初めて二人を見た時は、双子だと思い込んでいた。

 見た目は似てはいないのだけれど、やっぱり苗字そして名前まで、意味ありげだとやっぱり双子に見えてしまう。

 しかし二人は、双子でもなければ姉妹でもない、ただの他人なのだ。

 二人はたまたま同じ高校に入学して、たまたま同じクラスになり、たまたま友達になった。ただそれだけ。

 そんな挨拶してきた二人に(実際は一人だけど)私は挨拶を返す。


「おはよー!」

 私はそう言いながら、雪に近づいていく。


「雪──私、雪に話したいことがあるんだ」

 真剣な私に、ノリがいい雪は合わせてくれている。


「どうしたの?」

 私達二人の周りには、誰かが死んだレベルの真剣な空気が流れていた。


「わ、私今朝ね⋯⋯なんで男はいなくならないんだろってずっと考えてた」

 私自身もなんで、今このことを雪に報告したのかよく分からなかったが、雪は本当にノリが良かった。

 雪は右手を前に出し一言。


「私も同じこと考えてた」

 と言った。

 私は雪の右手を握った。

 すると私と雪の間に、謎の仲間感みたいなものが、生まれた気がした。


「二人とも早く席つかないと、先生来ちゃうよ」

 私達のこの空間をその一言で、壊した姫を私達は睨みつけた。

 当たり前だけど姫は怯えていた。



 〜放課後〜

 私達四人は、ある同好会に属している。

 その名前は百合の花研究会というなんとも、やっていることはわかりやすいけど、よく学校が許可したなという感じの同好会だ。

 しかしそれはあくまで、表の顔この同好会の本当の名前は。

 百合研究会。

 活動内容は、百合を研究するそれ一点のみ。


 私達は授業も終わり、いつも通り研究室こと部室に足を運んだ。

 すると雪が鞄の中から何かを取り出して、喋りだした。


「私、百合漫画描いて来たんだ」

「おおー、どんなのどんなの? 見してー」

 私と姫はそんな感じで、興味津々に雪の周りに集まっていく。この時も風は、無表情で本を読み続けていた。(まぁそんな光景もいつも通りの光景だった)


「よかろう。見してやる」

 そう言いながら出された百合漫画のタイトルは。


[幼馴染の純愛◯◯◯]

 というタイトルだった。もう完璧にR-18だった。


「この前の話で、あー尊いってなるような作品にしようって水と約束したの! 突然エ◯マ◯ガ出されて。あー尊いってなるやついるわけねーだろ!」

「私その話出てないから関係ないし」

 もうメタ発言だらけになってしまった。


「まぁまぁ内容は、18禁じゃないかもしれないし一旦その手に持った辞書を置いて」

 怒り狂った姫が、刑務所に行ってしまいそうだったので、私はなんとか姫の怒りを収めた。

 ふと表紙を見ると、今まで止める側だった私が怒り狂ってしまった。


「なんでこの表紙。私と姫なの? それになんで私が受けなんだよ!」

「「「そこ!?」」」

 三人同時にツッコミをされてしまった。今まで黙っていた風までもがツッコミを入れた。


「いやだって。水Mだし」

 私はさっきまで姫が持っていた辞書を持ち、雪に殴りかかった。

 しかしギリギリのところで、今度は姫が私を止めてくれた。


「だめだよここで、雪を殺してもどうにもならないよ」

 私は姫のその言葉に涙した。

 涙して崩れ落ちた。


「水がMだって証明してあげるよ」

 自身ありげに雪はそう言った。


「どうやって?」

「それはね。姫ちょっと水に向かって蔑みと罵倒をやってみて」

「え!? なんで私が?」

 当然驚いていた。

 いつもやっていることとはいえ(もちろん遊びで)今この場でやれと言われたら、きついものがあるのはしょうがない。


「いやいつもやってるし」

 雪は人の心がわからないのだろうか?


「いつもはやってはいないと思うけど」

「姫だって見たいでしょ? 水のそういう顔」

「べ、別に見たくないと思う」

「はいそれじゃあいくよ。三、二、」

 雪の勝手に初めったカウントダウン。

 無視すればいいのに、カウントダウンが進むにつれて姫の顔が変化していく。

 カウントダウンが終わると、姫の顔は私をいじめる時の顔になっていた。


「キモい」

 その一言で私の顔は──ニヤケていた。(変態じゃないぞ!)


「はいーニヤけたー! 水M確定!」

 私はそんな雪の煽りを無視して、姫に一言投げかけた。


「もう一回お願い」(変態じゃないぞきっと!)

 すると姫はその場から逃げ出した。

 私は姫をまるで餌を取られたペットのように、追いかけ回した。


「そこの百合ップル、そんなところでイチャイチャしてないで、本の中身見て欲しいんですけど」

 追いかけっこをしていた私と姫に、雪はそんなことを言い出した。

 別にイチャイチャしてるつもりはないんですけども。


「イチャイチャしてないし、それに見たくても見れないよそんなの! 私と水がしてるところが書いてあるんでしょ? それ」

「うんまぁそうだけど、いいじゃん別にもうあんた達二人何回もしてるんでしょ? S──」

 その禁句の言葉を、言おうとした雪はすぐさま姫に殴られた。


「その言葉だけはなんとしても言わせないからね!」

「いったいなーもー」

「それに私まだ処女だし」

 その言葉を聞いて、雪そして本を読んでいた風までもが驚きを見せていた。


「「えええええええええー!」」

 すると驚いた二人の目線は、私の方に向いた。


「まぁうん一応私もうん」

「あの人目憚らず、ちゅ、ちゅしているあの二人が、学校中の男子から顔はめちゃくちゃいいのに、百合だからという理由で絶対に手を出せない、校内一位と二位のあの姫と水が処女?」

 めちゃくちゃ早口だった。

 というか、手を出せないランキングとかあるの? 私達が一位と二位ってことは、三と四は雪と風なのではないだろうか?

 そんなことを考えていると、雪が急かすように話しかけてきた。


「それで? そこの百合ップルこの本の中見るの? 見ないの? どっち」

 私達二人は、少し照れながらも同時に答えた。


「「見る!」」

「それじゃあ早く見よ」

 そう言うと雪はページを開き始めた。


「なんで一ページ目から私の部屋が描いてあるの?」

「まぁなんかあんたら二人が、する時はどっちかというと姫の家かなって」

「何その変なイメージ」

「あ、姫家に帰ってきた。可愛い」

「もう水そんなことを言われたら照れちゃうよー」

 雪と風の私達を見る目が引いていた。


「あ、水もきたよ! 夏の制服の水だ可愛いー!」

「もうこの前まで毎日見てたじゃん」

 雪と風の私達を見る目がもっと引いていた。


「あー水が私を押し倒した!」

「あー!私が押し倒したのにキス先にしたのは、姫だった」

「水はそういう運命なんだよ」

「ホントに私が押し倒した時は絶対、私からするから」

「頑張ってね」

「あー! いつのまにか私が下になってるーなんでー!」

「だからそういう運命なんだってば」

「もー!」

 するとそこで、雪が突然喋り出した。


「なんであんたら二人がキスしてるシーンで、そんなイチャイチャできるの?」

 雪は根も葉もないことを、突然言い出したので、私は否定する。


「雪はどこを見て、私達がイチャイチャしてるように見えたの? ねぇ姫?」

「うん、全然イチャイチャしてないよ」

「あーもうお前らさっさと結婚しろ!」

「結婚なんてまだだよ、もっとちゃんと気持ち確かめないと」

「そうそう」

「だからその気持ちの確かめがいらないぐらいに。気持ち悪いぐらいイチャイチャしてんだから、さっさと結婚しろって言ってんの!」

「えーまだ無理無理、そんなことより早く続き見よ」

 私がそういうと雪は、呆れたように言い出した。


「わかったよ。もう私ツッコまないからね」

 するとページをめくり出した。


「あー姫が私の服、脱がし始めたー!」

「何この脱がされてる時の水の顔は、もうやばいよ可愛い!」

「◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、絶対◯だらけだけどもう見るの止まらないよ」

「◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

 ◯、可愛いよー水」

「足で姫が◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯、早く早く、ページめくって」

 〜これ以上やるとマジでBANされそうなので、飛ばします〜


「この本いくらで売ってくれる?」

 本を見終わった私の第一声これだった。


「待って私は、その値段の倍の額出すから私に売って!」

 姫は私が買おうとしたのに、なぜか止めに入った。


「なんで止めるの? 私が買いたいの!」

「私もこの本欲しいの!」

 私達の言い争いを止めるように、雪が間に入ってきた。


「私一言も売るなんて言ってないよ!」

「え!?」

「なんで?」

「売ってよー! お願い!」

「私の今年のお小遣い全部出すから売ってよ! お願い!」

 私達は子供がスーパーでお菓子をねだるように、18禁の本をねだった。

 やっている行動は可愛いけれど、ねだっているものは、全く可愛くはなかった。


「絶対に嫌!」

 私達は二人同時に雪に文句を言う。


「「なんで!」」

 雪は少し悩む様子を見せたが、それを隠すように喋り出した。


「だってさっきの二人の会話聞いてたら、なんかもう本をあげるの、嫌になっちゃったから。それにこの本が、あんたらどっちかのオカズにされるって考えたら気持ち悪くて」

 雪の言葉は、全然理由づけになっていないような気がするけれど、納得せざる終えなかった。

 だってもうこれ以上どれだけ、ねだっても絶対売ってくれないもん。


「もうこういう時の雪は、頑固なんだから」

 私はそう言いながら、一つ気になっていることを質問した。


「一つ気になってたんだけどさ、雪はあんなプレイどこで覚えてきたの? 」

 私の残り少しのS心が、訴えている今雪を責めたら確実に落ちると。


「な、なんで? そんなこと聞くの?」

「いやちょっと気になって」

 私の質問に、雪は明らかに怯えていた。

 すると今まで、ずっと黙っていた風が突然喋りだした。


「その漫画、この前私が雪にしてあげたプレイそのまんまだよ」

 今まで黙っていたのが、この時のためと言わんばかりの情報だった。

 私と姫はその情報を手に入れて、ニヤけた。新しいおもちゃを親に買ってもらった時のように、喜んだ。


「ふーんそうなんだそうなんだ、雪も私と同じ側だったんだね。私は嬉しいよ」

「ってことは風が、私と同じSってことだよね?」

「ちょっとー! 風なんでそんなことを今言うの?」

「いや私のS心が、騒いじゃってね。雪のその顔を見れると思わなかったからさ」

 そう言っている風の顔は、私をいじめている時に見せる姫の顔に、とてもよく似ていた。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い。あの顔してる時のSの人はホントにやばい。


「雪ーねぇもっと顔よく見せてよ。その可愛い顔をもっとね」

「あのー風さん? 怖いんで私もう帰ってもいいですかね?」

「じゃあこれから私の家来る?」

「いやー今日はちょっと」

 雪がそう言い訳すると風は、雪の耳元で囁いた。


「来るよね?」

 こっわ。


「うん行きます。行きますからもう私の秘密暴露しないで」

「よろしい。じゃあ私達はもう帰るけど、二人はどうする?」

 私は、姫と目線を合わせて返事をする。


「私達はもうちょっといるよ」

「そう? じゃあ帰るね。バイバイー」

 そう言って二人は、部室を出ていった。



「風があんなに生き生きとしてるの、私初めて見たよ」

「私もあんな風初めて見た」

 私達は顔を合わして、笑いあった。


「ねぇ水、血⋯⋯吸ってもいい?」

「うん」

 私は一瞬の間も開けずに、一言そう返事をした。

 なぜなら私も吸って欲しかった。それだけなのだけど。


「いただきます」

 姫の今までの歯が、とんがった牙へと変わっていく。

 とても痛そうなその牙が、私の首元へと刺さっていく。


「うっー。アーっ。痛。」

 でもその痛さが、快感になっているそんな感じ。

 私は常に喘ぎ続けた。

 姫は私に噛みつきながら、部室の床に私を押し倒していく。

 私の足と足の間に、姫自身の片足を置いた。

 その光景は、もうアレをやっているのと遜色ない光景だった。

 このタイミングで、部室のドアを開けられれば確実に二人とも退学だろう。そう感じるくらいに姫は、エロかった。

 私はそれから、姫が血を吸い終わるまでの間、喘ぎながら血を与え続けた。


「美味しかった。ごちそうさま」

 そう言った姫の顔は、とてもいい笑顔だった。今までで最高の笑顔だった。

 私はこの笑顔を見るために、血を上げたそうに違いない。


「これからもよろしくね。姫」



 この世の人間は生きている間に、一度は必ず不思議な出来事にあっていることだろう。

 私はその不思議な出来事が、幼馴染だったと言うだけただそれだけ。

 ただそれだけの話なのだ


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