SS 年越しをする幼馴染百合
もう少しで年が明けるそんな時間、小さな頃から毎年決まって私の家に泊まりに来ている幼馴染の
「もうすぐ年明けるね」
「そうだね〜」
「
「突然すぎる質問だね──うーんなんだろうなぁ、今年一番衝撃的だったことかぁ、そうだね、多分だけれど、あのドラゴン娘に会えたことかな」
今年の春頃だっただろうか、私が普段通りに通学路を歩いていたある日、背中に羽を生やし、尻尾も体から生えているようにしか見えないとても美人なドラゴン娘に出会った。
あの時も侑芽は私の隣にいた。
「あーなるほどね、確かにあの時のことは私も印象に色濃く残ってる」
「めっちゃ可愛かったしねあのドラゴン娘、羽とか尻尾触るとさ、嫌そうに一瞬するのに心の中でめっちゃ嬉しいというか気持ちいいって知った時は、もう触るの止まらんかったもんね。あの顔であの声は反則だよ」
あの声とか言っているけれど、別にいやらしいことをしたとかそういう事実は一切なくて、ただ触っていると楽しかったので、羽と尻尾を触っていたというだけの話だ。
その後ドラゴン娘は、自分の住む国へと帰っていったのだけれど、まぁそんな話はどうでもよくて、ついついオタク特有の早口をしてしまったので私のそういう一面を幼馴染と言えどあまり見せたことは、なかったので、侑芽が引いてしまったかもと目をやると、侑芽がぷくーっと頬を膨らませていた。
「⋯⋯」
「なんでそんなぷくーってしてるの?」
「いやなんでもないけど?」
「いやいや絶対なんかあるでしょ」
「なんもないよーだ」
「もしかして、私があのドラゴン娘の話ばっかりするから拗ねた?」
「拗ねてなんかない」
「じゃあなんで私と目、合わせてくれないの?」
「別に合わせる理由がないだけだし」
「やっぱり拗ねてるじゃん、もう⋯⋯なにすれば許してくれる?」
私が訊くと侑芽は、若干頬を赤らめてはいるもののそれを私から隠すようにしながら言った。
「可愛いって言って」
「え?」
「私のことも可愛いって言って」
毎日のように言っている気もするけれど、なんかこういう状況だと恥ずかしくなるのはどうしてなのだろう。
私の方も思わず頬が赤くなるのを感じながら、小さく呟いた。
「⋯⋯⋯⋯可愛いよ」
「どれぐらい?」
面倒くさい彼女か!
でも訊いてきた侑芽の上目遣いを見ていると、そんなことはどうでも良くなってきてしまう。
「私の中の世界で一番」
私は思った気持ちをそのまま侑芽に伝えた。
「⋯⋯ありがとう」
侑芽が言って数秒後、テレビの中から鐘を叩く音が年明けを告げてくる。
隣で照れている表情をしている侑芽の手を私は、年明け早々握る。
「年明けたね」
「うん」
「それじゃあ改めまして──今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
こうやって毎年侑芽と一緒に年越しができたらいいな、なんてことを小さな独り言を呟きながら、それに反応して少し首を傾げている侑芽の頬にキスをしたのだった。
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