こたつに入ってダラーっと喋っている幼馴染百合
「ねぇ、
こたつに体を半分ほど埋め気怠そうに話しかけてきたのは、私の幼馴染の
九吉は私の短い髪とは対照的に、髪は長い。長い割にはちゃんと手入れもしているようで、ツヤツヤだ。
そんな九吉に私も気怠そうに、返事を返す。
「恋⋯⋯ないねー。そんなリア充みたいなことは私したことがありません」
「まぁそうだよねー。私もない。あー恋、してみたいなー」
すると九吉は、何かを思い出したかのように勢いよく体を起こした。
「まって丹羽、あんた昔なんか言ってなかったっけ、好きになったとかなんとか」
「言ったっけそんなこと」
「言った、絶対言った。ちょっとまって思い出すから」
そう言って九吉は、考えるように眉間に皺を寄せはじめた。
なんとなく私も考えてみる。
昔、私と九吉が出会ったのが小三の時だから、それ以降に私が誰かを好きって言った記憶。
うーん。
あるかー? そんな記憶、私ー、もしあるなら思い出せー。
「あっ!」
突然九吉が大声を出す物だから、私は肩をビクッと震わせてしまった。
「もう、突然大声出さないでよ」
「あーごめんごめん。でもさ私思い出しちゃったよ、丹羽が好きって言ってた奴のこと」
九吉は机をバンと大きな音が鳴るぐらい叩き、立ち上がった。
「知りたい?」
悪魔のような笑みを浮かべながら私に聞いてくる九吉に私は、適当に返す。
「あーはいはい。そんなにためなくてもいいから、早く言って」
「あ、そう? じゃあ、オッホン。丹羽が好きって言ってた奴はーーーーー──私」
九吉は、自信満々に親指を立て自分のことを指している。
そんな九吉に私は、心から気持ちを込める。
「は?」
何を言ってるんだこいつは、私が九吉のことが好き? そんなわけ⋯⋯ないはず。
「あー照れてる! 丹羽照れてる。何? 丹羽私とのこと考えちゃったりした?」
九吉は、うざったらしく私に近づいてくる。
私はそんな九吉を跳ね除けて、否定する。
「んなわけないでしょ! 私とあんたがそういう関係になることなんてありえないの!」
ありえない。ありえない。ありえない。
だって私、女だし九吉も、女だし私たち同性同士だし、そんなのありえない!
私と九吉はただの幼馴染で、今もこうしてこたつに入ってダラーっと喋っているだけの、関係で。
だから私が九吉を好きとかそういうのでは決してないわけで。
すると九吉は、はははーなんて笑いながら言うのだった。
「まぁ丹羽が私のこと好きって言ったの小四の時のことだけどね」
「はー? そんな子供の頃のことだったの? なんだ私てっきり、最近間違えて言っちゃったのかと思った」
私がホッと息を吐くのと同時に、九吉は訝しげな表情を見せた。
「間違えて言っちゃった? なにそれ、もしかして丹羽今でも私のこと好きなの?」
九吉の言葉が耳に入った瞬間、私の頬、耳、手、足、身体中全てが赤く染め上げられた。
今にでもそんなわけない、私は別にそういう気持ちで九吉を見ていたわけではない、そう言いたかった。
けれど、私はただただ頷くことしかできなかった。
何故なのだろう。
ただ、違う、その一言だけでこの関係を変えずに一生このまま幼馴染でいられたのに、何故私は頷いてしまったのだろう。
首を縦にではなく、横に振るだけでよかったのに──。
「そっか、丹羽は私のことが好きなのか」
九吉はどこか安心をしている表情を見せながら、ゆっくりと私との距離を詰めてくる。
だんだんと、一歩ずつ距離を詰め、息がかかるぐらいの近さになると九吉は、また口を開いた。
「丹羽、ちゃんと声に出して言って?」
今にも押し倒してきそうな体勢でのその言葉に、私は唾を飲み込む。
九吉は、ん? というどこか優しげでもあり私のことを煽ってきているような表情で、私を見つめてきている。
そんな九吉に一旦息を整えた私は、顔を硬らせながら言う。
「九吉、好き」
そして九吉は、一度微笑んでから、今まで止めていた最後の一歩を踏み出した。
私の唇に九吉の唇が重なっている。
お互い、微笑みながらのキスだった。
これが私の初恋なのかもしれない。
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