アホのテレパシー使いの幼馴染百合
物心ついた時には、すでに隣にいた幼馴染で長髪の
「
腰に手を当てて自慢げな桜に私は、適当に興味がないことを示す。
「あっそ」
そりゃ超能力とかに興味はあるけど、今までずっと一緒に過ごしてきた幼馴染が、突然超能力者になったとしてもそんなの、信じられるわけがない。
「もうちょっと興味持とうよー」
歩きながら私の袖を引っ張ってくる桜の腕を引き剥がし、私は嫌々返事を返す。
「興味持ってほしかったら、実際にやってみるとかしてみてよ」
「もうその時点でだいぶ興味持ってるのでは? まぁいいや、みしてあげるよ私のテレパシー」
すると桜は、ぬぬーっと手を前に出して何かを感じとるように、手を動かしていた。
できるわけないよテレパシーなんて、それにもしも本当に心読まれたら、たまったもんじゃない。私が秘密にしている気持ちまでもがバレてしまうのかもしれないのだから。
そんなの恥ずかしくて死んでしまう。
「はっ! わかった。花あなたは今、テレパシーなんてできるわけないとおもっていたでしょ」
私は大きく「はぁー」とため息を吐いた。全く期待はしていなかったけれど、そんな誰でもわかるようなことを言い当てるんじゃなくて、せめてもう少し工夫をしてほしかった。
「なんだよそのため息は、まだテレパシーでわかったことは終わっていないよ」
チッチッチっと人差し指を左右に振る動作が、凄くウザいので私は、半分キレた。
「そうですか。じゃあさっさと続きをどうぞ」
するとまたもや桜は、自慢げに言うのだった。
「フッフー驚くなよ。花あなたは今私に、何か隠し事をしてるでしょ」
私は肩をビクっとさせてしまった。別にこのぐらいなら、テレパシーでもなんでもないのだけれど、秘密にしていることが大きすぎたので、思わず体が反応してしまった。
「べ、別に秘密にしてる事なんてないですけどー?」
自分でも驚くぐらいに動揺している。
こんな姿を見て秘密にしている事がないと思うことの方が、難しいんじゃないのか? と思うぐらいには動揺していた。
「そうでしょそうでしょ。やっぱりなんか隠してるよね。よーし次は何を隠してるのか当てちゃおっかなー」
桜は、先ほどと同じくぬぬーっと手を前に出し、何かを感じとるような無作為に手を動かしている。
信じてはいない。もちろんテレパシーなんて信じてはいないけれど、もしも、本当にもしもの話で、もしも桜がテレパシーを使えたらと考えると、恥ずかしくなってくる。
もし私の気持ちがバレたらと考えると、恥ずかしくて死にそう。
そんなことを考えている間に私の、体温はとても熱くなっていた。多分顔も相当赤くなっていると思う。
するとそんな私を見てか、桜は今まで力を込めていた手から力を抜いて、心配そうな目を向けてくる。
「どうしたの? 顔真っ赤だけど」
そう言って一歩近づいてくる桜に私は、必死で大丈夫だということを伝える。
「大丈夫大丈夫。なんでもないから」
「そう? でも一応確認させてね」
すると桜は、もう一歩足を進めて、桜のおでこを私のおでこにトンと当てた。
近い近い近い。今少しでも顔を動かせば、キスができてしまいそうなぐらいには顔が近い。そんな距離で、私は息が荒くなっていった。
余計に私の体温は上がっていく。
昔は、こんなことしても平気だった。むしろ楽しかった。けれど今はもう高校生、色々知っているから、嬉しい反面恥ずかしいという気持ちの方が、強くなってしまう。
しかし桜は、そんなことは気にしていないようだった。
「うーん。熱はなさそう、でも顔赤いよね。本当に大丈夫?」
私は桜のおでこがあった場所をさすりながら、今度こそこの話題を変えようと必死に大丈夫だと伝える。
「大丈夫大丈夫。本当に大丈夫だから気にしないで」
「そう? まぁそんなに言うなら信じるけど、もしなんかあったらすぐ言ってね」
私はホッとした。もしももう一回ぐらい詰められたら、ポロっと何か言ってしまったかもしれない。
それからしばらく歩いたあたりで、桜が何かを思いついたように言い出した。
「あっわかった。さっき花が赤くなってた理由」
え? もしかしてバレた? 私の気持ち。
「理由? そんなものないですけどねー」
「いいや。私わかっちゃった。さっき赤くなってたのは、私の超能力のせいでしょ!」
私は肩をがくりと落とした。
「なわけ、ないでしょ。人の顔が赤くなる超能力なんて聞いたことないよ」
「確かに、そんなのものはなかったかもしれない。じゃあなんだったの?」
「だから理由なんて──」
その時私は、閃いた。この調子に乗ってる桜を散らしてやろうと、絶対に答えられるわけないのだから。
「まぁ理由はある。確かにあるけど、それを当てるのが桜の超能力じゃないの?」
すると桜は私の煽りにまんまと引っかかり、やってやろうの精神を見せつけてきた。
「そうだよ。私の超能力なめちゃいけないよ」
そしてまた先ほどと同じくぬぬーっと手を前に出し、無作為に動かしていく。
「ぬぬぬー」
わかるわけがない。私の気持ちなんて桜は、気づきもしないはず。だって私たちはただの幼馴染だから。
すると桜は、スッと手を下ろした。
「無理だ、わからん」
「え?」
諦めが良すぎて、私も思わず声を出してしまった。
「無理、わからん。教えてよ花ー」
すりすりと擦り寄ってくる。そして挙げ句の果てには、私の腕を掴んで、上目遣いになった。
「教えてよ、花」
可愛いすぎる。この目、この長髪、このあきらかに悪巧みを考えている顔、全てが愛おしい。こんな桜のお願いを聞かないというのは、私の中での選択肢にはなかった。
「好きなの」
私も相当諦めがいいのかもしれない。今まで散々バレないようにしてきたのに、少し(もの凄く)可愛い桜に頼まれただけで、言ってしまうなんて、私もしかしてチョロいのでは?
「ん? 何が?」
「だから私、桜が好きなの! 幼稚園の頃からずっと桜が大好きなの!」
私は、この際全部言おうと気持ちをぶちまけた。この後桜とキマづくなろうとも、気持ちを伝えられたならそれだけで、私は幸せだ。
すると桜は、アホな顔をして言うのだった。
「私も花のこと大好きだよ」
何を今更というような表情の桜に私は、慌てて注釈を入れる。
「私の好きっていうのは、友達とかの好きじゃなくて、その、恋人にしたいとかの好き、なんだけど」
このことを聞いても桜は、照れる様子一つ見せることなく当たり前のように言う。
「うん? 知ってるよそんなこと、だって昔幼稚園で約束したじゃん、一生一緒にいようねってそれって付き合うとかそういう意味でしょ、それにその時も確か大好きとか言い合った気がする」
確かに約束をした記憶は、私の中にもある。それに私が桜を意識し始めたのも、その頃からだった気がする
だけれど、幼稚園の頃の約束を本気にするやついる? しかもその頃から付き合ってるとか思ってるって、こいつアホでしょ。
「ふふ」
なんだか笑ってしまう。
「そっかそうだよね、私たちそういう関係だもんね。そうだよね」
こいつは確かにアホだ。
だけれど、だからこそ私たち昔から今までずっと、一緒にいられたのだと思う。それにこれからも、その先もずっと一緒にいられる気がする。
だから私は、言おうと思う。この自称テレパシー使いのアホ女に。
「これからもよろしくね。桜」
「こちらこそなんだかよくわかんないけど、よろしく、花」
私は心底、桜が好きだった。
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