第2話
私の発言を
そこでやっと、二人は顔を見合わせた。しばしの沈黙。
そりゃ、びっくりするだろう。二週間の外国旅行に飛び込み参加って、お金は? パスポートはあるの? ホテルとかいろいろ二人ってことで予約してるのに?
そして、何よりの問題は、男二人に女子一人なんだよ!?
二人は口ごもるように、問題点を次々と並べ立てる。
「パスポート? ないない。どうしたらいいの? 教えて!」
「お金? みんなはどうしたの? 旅行ローン? じゃあ、私もそれにする!」
万事がそんな感じだったが、先輩の坂本が「しょうがないなぁ」と承諾してくれた時点で、このチグハグな三人旅行が正式に成立することになった。
教えられるままにローンを組み、旅券を申請する。なんと、出発の前日にギリギリでパスポートが手に入るくらいの、タイトなスケジュールだった。
親にも事後報告。友だちたちは一様に目を丸くする。
「男二人に一人だけ、くっついて行くの?? そんな外国くんだりまで!?」
中には、真面目に身の安全を心配してくれた子も。
「こんな私に、あんな二人だから、そっちの方は大丈夫だと思うよ」
私は本当にそう思っていた。
確かに、「バカみたいに慎重かと思えば、時にぶったまげるほど大胆」という私への評価の発端は、ここにあったかもしれない。
***
卒論の口頭試問前の卒業旅行ということで、時は真冬だった。三月には、私も坂本もそれぞれの就職先でのインターンが控えていた。
これが最後に羽を伸ばせる機会。そして、初の海外旅行。ましてや私など、旅行自体が珍しいことで、ウキウキとドキドキは頂点に達していた。
まずは、真冬の悪天候を警戒して、成田の近くに住む坂本の友人の部屋に前泊させてもらうことになっていた。十畳くらいのアパートに四人で雑魚寝だ。貸し布団を調達してくれていた。
その夜。友人の友人たちも呼んで、合計七人ほどで宴会を開き、カラオケを楽しみ、私と新田は翌朝早いので先に部屋に戻って休ませてもらうことにしたのだけど、坂本と彼の友人は積もる話をしながら二人きりで旧交を温めるとか言って、近くのスナックへ飲みに行ってしまった。
枕が変わると寝られない私。しかも、明日から十何時間か知らないけど飛行機に乗って外国へ行くのだ。まんじりともせずに布団の中で何度も寝返りを打っていた。
そんなんで一時間も経っただろうか。
「起きてる?」と、新田が声をかけてきた。一応、気を使ってなのだろう、私たちが寝ているスペースの間の敷居には、一枚だけふすまが通してあった。
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