第29話 王都魔法学園
皆んなにたっぷり絞られら後、昼食会に参加すべく、僕たちは王都魔法学園に来ていた。
巻きで謁見が終わり、早めの到着となったので、王都学園の授業を見学している。
ユイリ達は王都でも顔が売れているので、早速学生達につかまった。
一方僕は英雄の名ばかりが先行していて、顔バレしていないので、単独行動をしている。
というかはぐれてしまった。ぶっちゃけ迷子だ。
でも、最悪誰かの近くにテレポートすれば良いので、そんなに焦ってはいない。
実習を見学していた僕は1人の女生徒に目を奪われた。
(エレメントが綺麗だ……)
その女生徒のエレメントは、バランスが良く、とても美しく調和の取れたものだった。
属性は火、水、風の3属性。
魔力量も中々の物だ。
魔法に才能が関係あるとすれば、ダントツの才能だと僕は感じた。
僕が彼女の魔法に見惚れていると、向こうから近付いてきた。
「あんた、さっきから何をジロジロ見てるの? もしかして変質者?」
美しいのはエレメントだけじゃなかった。
透き通るような白い肌にブロンドの長い髪、まだあどけなさを残しているが、少しきつく見える琥珀色の瞳が全てを見透かされているようで、何か気恥ずかしさすら感じてしまう。
「ごめなさい、そう言うつもりで見てたんじゃなくて」
「じゃあどう言うつもりで見てたの?」
「その……」
(エレメントの事を話しても分からないだろうな……)
「なに?」
「その、エレメントがとても綺麗だなぁと思って!」
「ん?」
「あんた、エレメントが見えるの!?」
「あ、はい」
意外な反応だった。
「ふーん、ちょっと試してみてもいい?」
「ど、どうぞ」
彼女は火の玉を作った。
「本当にエレメントが見えてるなら、どのエレメントが多いのか当ててみなさい」
「燃焼です」
「ふーん、じゃあこれは」
彼女は火の玉のエレメント比率をかえてきた。
「ほんの少し空気が多いです」
「正解よ」
「あんたもエレメントをコントロールできるの?」
「一応は……」
「見せてみなさい」
「は、はい」
僕も火の玉を作ってみた。
「空気が1番少ないです」
「一応理解出来てるみたいね」
「私はライリよあんたは?」
「え、あっ……アルです」
「そう、あんた見かけない顔ね」
「僕はテレキャス校の生徒なんです」
「ああ、例の昼食会ね」
「はい」
「で、そのテレキャス校の生徒が何故ここにいるの?」
「その……皆んなとはぐれてしまって」
「いい歳して迷子ってわけね」
「ま……まあその通りです」
「いいわ、私が連れて行ってあげる」
「ありがとうございます」
「その代わり、時間まで少し付き合ってくれるかしら」
「分かりました、何をすればいいんですか?」
「全ての出力を上げるからバランスを見てて欲しいの」
彼女のエレメントバランスは素晴らしいものだったが、彼女的には出力が気に入らないらしい。
無理に上げようとするとバランスが崩れバランスを整えると、出力がイマイチ。
負のスパイラルに陥っていた。
「あの……」
「なによ」
「その……」
「ハッキリ言いなさい、イライラするから」
「それ以上は、バランスだけでは無理です」
「どういうこと?」
「最終的にバランスは整えますが、過程に工夫が必要です」
「過程?」
「例えば……見ててくださいね」
僕は出力を上げた炎を作った。
ただしバランスよく上げたのではなく空気を遅らせた。
「あ……青い炎…」
「はい、これが過程を操作して炎の出力を上げた状態です」
「なるほど……あなたの言いたいことはわかったわ」
「アル」
「はい」
「あんたコッチに編入しなさい」
「ええええ」
「嫌なの?」
「嫌なのとかじゃなくて色々すっ飛ばしてませんか?」
「私は面倒な手順は嫌いなの」
「でも僕はすっ飛ばせませんよ……」
「まあいいわ、帰るまでに考えておいて」
「ええええ」
「いちいち反応しないの! 行くわよ」
「どこに?」
「昼食会でしょ」
「ああ、すみません……」
「あんた勇者様と英雄様のこと知ってるわよね?」
「えっ、まあ一応」
「どんな人なの?」
「えーとですね、ユイリは、ライリに負けず劣らず可愛らしい
「ちょっと待って、何故ユイリ様を呼び捨てにしてるの? 本人が居ないからってそう言うのはダメよ、ちゃんとユイリ様って呼びなさい」
「え、あっ……はい」
僕は押しに弱い。
「ユイリ《様》も来ているので、今日会えますよ」
「え!」
「何故もっと早くそれを言わないの!」
(ユイリはサプライズだったのか……)
「だって、聞かれなかったものですから……」
「気が利かないわね」
「……すみません……」
「も……もしかして英雄様も?」
「来てますよ」
むしろ、ここに居ます。
「何処からともなく現れた英雄様……。
魔王パズズを倒し、2人の女神様からの加護を受け、魔神率いる10万の魔族軍をたった1人で壊滅させた。
強さだけならユイリ様以上と言われる謎多きお方……」
(そんな伝わり方してたのか……)
「素敵な方なのかしら?」
「僕の口からは何とも……」
「そう、でも楽しみね」
僕はそのままライリさんに連れられ、昼食会が催される会場に向かった。
会場の外でユイリが待っていてくれた。
「アル遅いですよ、何処ほっつき歩いていたのですか?」
「いや、迷子になっちゃって……彼女に送ってもらったんです」
「ユイリ、こちら王都校のライリさんです」
「はじめましてユイリです。アルがお世話になりました」
「あれ? ライリさん?」
ライリは固まっていた。
「ライリさん?」
「わ、わわわわたくしは、ライリ・バリオともう申します!」
ライリも例に漏れずユイリに憧れていたようだ。
「よろしくねライリさん」
「よろ、よろ、よろしくお願いします!」
2人はガッチリ握手を交わした。
「ライリさんありがとうございます、アルを連れて来てくれて」
「い、いえ」
「アル、あなたは色々自覚を持つべきです。
英雄が迷子で遅刻とか笑えませんよ?」
「面目ないです……」
「へ……
あ、あ、アル? あなたが英雄様?」
「一応世間ではそうなってます……」
「ライリさん?」
「ライリさん?」
その後しばらく彼女はフリーズしたままだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます