第15話 眠れぬ夜
僕のルームメイトはアンナ先生だった。
アンナ先生は女性なのでコンプライアンス的な疑問は拭えないが、学園長が僕のことを色々考えて、計らってくれたことなので、受けいれることにした。
拒否権もなかったように感じるが、それはいい。
ちなみに今は、アンナ先生による寮内の案内が済み、食堂で夕食中だ。
僕は周りの視線が気になって仕方がない……
「ほら、あいつだぜ、模擬戦でガンツぶっ飛ばしたやつ」
「この時期に編入とか珍しいよな」
「なんであいつが、アンナ先生と一緒なんだ」
「アンナ先生……羨ましい」
半分は自業自得なのだけれど、注目されるのはどうも苦手だ。
「ここの、料理なかなかイケルでしょ?」
「なんか緊張しちゃって、味がイマイチわかんないです」
緊張すると味がわからなくなるってよく聞くが、本当だった。
「美人との食事は、緊張する?」
事実だから別にいいけど、この人自分で言っちゃったよ。
アンナ先生はショートってまでは短くない茶髪のクシュクシュヘアーで、整った目鼻立ち、可愛いか綺麗かで言うと綺麗タイプ。
そう綺麗なお姉さんなのだ。スタイルも抜群、連れ立って一緒に歩くだけで注目されてしまいそうなぐらい魅力的な女性だ。
「アンナ先生ぐらい美人だと、そりゃしますよ!それとは別に……やっぱ視線が気になります」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない、でも視線は私のせいじゃないですよ。あんなに派手な模擬戦をしたのだから、仕方ないですね」
「はぁ……」
「でも、アルくんは、こう言うの慣れた方が良いですよ?まだ公表されてませんが、属性の件もあります。注目を集めるのは、まず間違いありませんからね」
確かにそれは一理ある。
こういう状況にも慣れないと、いざという時力を発揮できない。
まぁ僕の場合、100分の1でも実力を発揮できれば100人力なのだが、驕りはよくない。
「そうですね、実力だけが、実力の全てじゃないですからね…」
「君は、理解が早いですね。賢い子は先生嫌いじゃないですよ」
「そんなこと言われると、勘違いして口説いちゃいますよ?」
アンナ先生の余裕を崩したくて少しだけ反撃してみた。
「頑張ってね、期待してます」
大人の余裕という名のカウンターを食らった。
「「ご馳走さまでした」」
お腹も、胸も、いっぱいだ。
僕はアンナ先生に連れられて部屋に戻った。
部屋は寮とは思えないぐらいの広さで、日本でいうところの3LDKの間取りだ。これなら間違いも起こらなさそうだ。
「私ね、色んな生徒の入寮見てきたけど、手ぶらでの入寮は、アルくんがはじめてですよ」
「あ、ストレージが使えるからです」
「ストレージ?」
魔法学園の教師が知らないぐらいだ、やはりストレージは僕の固有スキルかもしれない。
「簡単に言うと、空間収納ボックスのスキル版です」
「空間収納が使えるのですね!羨ましいです」
「殆ど何も入ってませんけどね」
「着替えも無いのですか?」
「無いです」
「その割には、綺麗ですし臭いもないですね?」
先生はいい匂いです。
「オート洗浄を付与してます」
「付与魔法ですか?」
「それのスキル版です」
「へー、世の中には先生の知らない知識が、いろいろありますね」
そろそろ、本題に入ろう。
僕はこの世界に来てから1度も風呂に入っていない。
まだ2日目だから、そんなに臭わないかもしれないが、この世界で出会う人が美女揃いすぎて、身だしなみが必要以上に気になってしまうのだ。
「アンナ先生、僕、昨日から体を洗ってなくて、体を洗いたいのですが……」
風呂で伝わるかわからないので、ダイレクトに聞いてみた。
「あ、先にシャワー使ってもらってもいいですよ」
よっしゃ!シャワーあった!
「本当に、お先で良いんですか?」
レディファーストという言葉があるが、ちょっとがっついてしまった。
「どうぞどうぞ」
「では、お言葉に甘えます」
この世界のシャワーはどのような仕掛けか分からないが、元の世界のと同じだった。蛇口をひねればお湯が出て、温度調節もできる。
ちなみにシャンプーと石鹸もある。大きな心配事がひとつ解決できた。
「お先でした」
「キレイに洗った?」
「バッチリです!」
「夜這いはダメよ?」
「今夜の予定が狂ってしまいますね」
ノリがいい先生で会話が弾む。
「冗談はさておき、アルくんはこちらの部屋を使ってください」
「了解です。先生、今日は先に横にならせてもらっても、いいですか?」
「どうぞ、ごゆっくり」
「ありがとうございます」
ベッドに飛び込む。
いつ振りのベッドたろう?
って今朝か…
メイさんのベッドで目覚めたのを思い出した。
もう睡魔がきてる。
今日も色々疲れた。
先生がシャワーを浴びている音が聞こえる。なんだかとても懐かしく感じ、僕はそのまま眠りについた。
「ガチャ」
「アルくん起きてますか?」
「なんだ、もう寝ちゃったの」
まどろむ意識のなかで、そんな台詞が聞こえた気がした。
僕はまた夢をみた……
(眠れないの?)
(ああ、明日の事を考えるとな)
(大丈夫よ…)
(しかし……)
(大丈夫だから…)
(私は奴に届くのか…)
(ムギュっ)
(なっ……なにを?!)
(ぎゅっ)
(今は休んで……)
(頭も、心も、体も…)
(う…うん……)
(アナタには休息が必要よ)
(…………)
(そうだな…)
なんだろう、少し息苦しい…こ…こ、この、柔らかい感触は…………
僕は少し息苦しくて目が覚めた。
そして、自分の置かれている、状況を把握するのに、時間はかからなかった。
(なんで先生が、僕のベッドに……)
僕は先生の胸に顔を埋める形で寝ていた、おそらく先生が僕を抱きしめたのだろう。
しかし、問題は……先生が服を着ていないことだ……
殆どはだけているが、バスタオルが巻かれていたので、どうしてこうなったか理解した。
僕は先生の胸に顔を埋めたまま、先生の顔を覗き込む。寝顔も美しい。
色々考えたが、僕はこの状況を神様の贈り物と思うことにした。
主神様は、死んでいるが……
本日2度目のラッキースケベだ。
(もしかして!?)
僕はレイラにLuck値が異様に高いと言われたことを思い出した。
ステイタスのLuck値は、主にドロップに関連しているものだと思っていた。
だから僕にはあまりドロップしないはずの魔石ランクSですら、ガンガン、ドロップするのだと思っていた。
僕の美女出会い率はおそらく尋常ではない。
この2日で10人の女性と出会い、美女率100%!凄いことだ。
この2日で一生分の運を使い果たしたと言われても、納得できる。
それがLuck値に依るものだったら、もっとLuckが上がった時、僕はどうなるのだろうか……。
胸の高まりが治らない。
因果関係はわからないが、とにかくこの与えられたラッキータイムを満喫する。
それが今、僕にできる最善だ。
しかし、もう一度先生の寝顔が見たい……そう思い見上げた時、事件は起こった。
「アルくんって、ズルいね…」
先生とバッチリ目が合ってしまった。
しかも、ズルいって……
「アルくんって、むっつりだね…」
僕としてはオープンなつもりだったのだが、客観的評価だとそうなるのか……
僕は開き直り、突き放されるまで先生のおっぱいに居座ってやるつもりだった。
僕の想いとは裏腹に、アンナ先生がさらにキツく抱きしめてきた。
(な!な!な!……これは、もしかして、据え膳なんちゃらか?)
そう考えていた矢先に、先生から寝息が聞こえてきた。
……
僕はもう少しだけ先生のおっぱいの柔らかさを堪能し、リビングに移動した。明日から授業だってのに悶々して眠れなかった。
この件に関しても、半分は、自業自得だ。
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