魔法学園編

第12話 魔法適正

 僕は夢を見ていた。


(……くそっ、まだ届かなかったか……だが次こそは!)


(ハハハ!愚かな!貴様に次があると思ったのか!)


(貴様!?)


(己の愚かさを悔いるといい!)


(くっ……)


(まだだめ!)


(君はダメだ!、来ないでくれ!…)


(……あなたはダメあなたは必要なの!……)


(頼む……やめてくれ……やめてくれ!!!)


「やめてくれ!」


(ムニュ)

 伸ばした手の中にあったのは、とても柔らかい感触だった。


 まだ完全に目覚めたわけでは無いが、本能でわかる。

 これはあれだ『ラッキースケベ』ってやつだ。僕はその感触を堪能した。


「だ…大丈夫ですか?」


「こ…ここは?」


「その前に…私の胸から手を離していただきたいのですが…」


 その胸は、ウルドやユイリ、レイラのボリュームには及ばないだろうが、掌に収まる、丁度いいサイズだった。


「あ…」


 途中からは確信犯でした。


「すみません…」


 ご馳走さまでした。


「私は、メイ・フェイです。ここは魔法学園学生寮の私の部屋です」


 この世界の女子のクオリティはどうなっているんだ?出会う子みんなが可愛いか美人さんだ。


 ゆるふわの赤毛で前髪ぱっつん、くりっとした目がメイさんの可愛さを強調している。


「僕はアオイ アル、名前がアルです」


「ラッキースケベのアルさんですね」

 鋭い……つか、直球だな。


「いつもの修練場で、傷だらけのあなたが倒れているのを発見しまして…」


「それで君が、ここまで連れて来てくれたのですか?」


「はい、新しい回復魔法の実け…回復魔法を、かけさせていただいておりました。」


 今、この子、言ってはいけない事言いかけたよね…でも、一応お礼は言っておく。


「ありがとうございます」


 傷は彼女の回復魔法で、ほとんど回復していた。


 僕が身を起こそうとすると彼女が制止する。


「まだ完全に回復していないので、もう少し実験に……横になっていて下さい」


 本音が隠せない子だ。


 恩人だし僕的には問題ないので、最後まで付き合ってあげる事にした。


「メイさんは、回復魔法が得意なのですか?」


「いいえ、1番苦手で、いつも実習で失ぱ…あまり、得意ではありませんが、資質は高いので安心して下さい」


 それ絶対安心出来ないからね。つか、回復魔法の失敗ってどんなんだろう……。


 そもそも魔法ってどうやって使うんだ?


 MAG01は魔力を込めて使うけど魔法ではない。


 せっかくなのでメイさんに聞いてみることにした。


「メイさん」


「はい」


「魔法って、どうやって使うのですか?」


「はい?」


「アルさん、もしかして、無知……魔法の仕組みをご存知ないのですか?」


 今のトゲあったよね。


「魔法を使うには…」


 回復を待っている間、彼女に魔法の基礎知識を教えてもらった。


 まず、魔法には属性がある。

その事はジニーが話していた光属性のくだりで、何となくわかっていた。


 属性は、光、闇、火、水、風、土の6属性。


 適正のある属性の魔法しか使えない。


 一般的には1人1属性で、複数の属性を扱えるのは稀だ。


 ちなみに、メイさんは火、風の2属性が使える優秀な魔術師と本人が言っていた。僕に使っている回復魔法は風属性の『風の癒し』だ。


 光属性を扱える人は殆どいない。

それ故に、勇者一行が希少なのだろう。因みに魔族は光属性を使えない。


 闇属性は有史以来、扱える人間や神族は未確認と言うことで、実質魔族専用だ。


 魔法は要素、工程、結果を詠唱することで発動できるらしい。


 魔法の説明が一通り終わったと同じくして、メイさんの回復魔法も終わった。


「メイさん、色々ありがとうございました」


「いえいえ、こちらこそ実験……人助けは当然の事なので、お気になさらず」


 何か、不安になって来た。


「こちらの上着、アルさんのですよね?」


「あ、そうです。拾っておいてくてたのですね、助かります」


「あの、アルさん、すごく今更なのですが、何故キズだらけであんな所で寝ていたのですか?」


 通りすがりの女神と聖女に襲われました。なんて言えない。


「実は、いきなり2人組に襲われてしまったので、僕もよく覚えてないんです」


 遠からずだ、嘘は言ってない。


「この街は比較的治安が良い方なのに、災難でしたね…」


 本当に災難だ


「あっ、もしかしたら昨日のお祭り騒ぎで、ハメ外し過ぎたのかも……」


「かも知れないですね、メイさんに見つけてもらわなかったら、もっと大変な事になっていたかもです。メイさんも気をつけてくださいね」


「私は魔法でチョチョイのチョイで撃退しちゃいます!」


「頼もしいですね」


「ところで、アルさんは、何の属性魔法が使えるか知りたくないですか?」


「それは是非、知りたいです!」


「やり方は簡単です。このように掌に魔力にを集めて属性を意識すると、使える属性は何かしらの反応がでます」


 メイさんが実演してくれた。


「おーっそうなんですね!」


「火、水あたりがスタンダードなので、それらから試してみましょう」



「わかりました、やってみます!」


(魔力を掌に集めて、火を意識する…)


 火の玉を作ることが出来た。


「メイさん!出来ましたよ!」


「アルさんの適正は火属性ですね」


「ちょっと試しに他のもやってみます」


 次は水にチャレンジしてみた。


「…出来ましたね…アルさん、魔法の才能あります」


 風、土も問題なく適正反応がでた。


「……」

「…アルさんどうなっているのですか…4属性なんて勇者様以外で、聞いたことありません…」

 ということはユイリも4属性使えるのか。


 光も試してみた。


「!!!」


「…アルさん…人間ですか?」

「そのつもりです」


 そして光属性と決して共存出来ない、と言われる闇属性も試してみた。


「……アルさん…私…もう、何がなんだかわかりません…」


「神様でも、魔王でも、6属性は出来ないのですよ?」


「何故ですかね…」


 なんて言いつつも、僕には予感があった。


 僕の知る異世界転生では、魔法全属性適正は割と標準的だからだ。


「アルさん!とりあえず、エロババァ……学園長に相談しましょう!全属性適正で魔法が使えなんてバカ……勿体無いです!」


 この子、本当はクズ系かも知れない。


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